初、出勤日
※誤記修正しました<(_ _)>
私とレナンの長期の仕事はキャルロット公爵家への私の養子縁組が済んでから無事、開始されることとなった。
それまではレナンと簡単な採集クエストや討伐クエストをこなしたり、時には執事長に泣きつかれて自由奔放ですぐ脱線するキャルロット公爵、いやお父さまのお仕事を手伝いに行ったりして過ごした。
そして、約束の日・・・
キャルロット公爵邸で簡単なお仕事ワンピースを着つけてもらい、レナンと共に何故かキャルロット公爵家の馬車に乗せられ辿り着いた場所が・・・
「ここって・・・」
昔は元婚約者のパートナーとしてよくパーティーなどに参加した。近年は王子妃教育を受けに毎日馬車で送り迎えしてもらったものだ。そう言えば婚約者ではなくなったし、更にはメロンディナ公爵家を追い出されたのでもう王子妃教育もない。
あぁ、なんて晴れ晴れとした気分!
・・・と、思ったら何故、王城?
まさか、新手の詐欺・・・!?
いや、エリオットさんもお父さまもそんな方ではない。
ではなぜに?
・・・と思ったその時だった。
「貴殿が、キャルロット公爵から紹介があった“キャルロット”公爵令嬢のキアラ・フォン・キャルロットとその従者のレナン・パンプディンか」
不機嫌そうな声の主は、金色の髪にダークグリーンの瞳をした端正な顔立ちの美青年だった。
かなりの長身ですらっとしているけれど、腕を見ると服の上からも鍛えてるってわかる。
彼は騎士?
「はい。キアラ・フォン・キャルロットと申します」
「レナン・パンプディンです」
そう挨拶すると・・・
「私はジークフリード。早速だ。ついてこい」
そう唐突に告げられ、レナンと顔を見合わせながらもひとまずはジークフリードさんについていくこととなった。
案内されたのは私が立ち入ったことのある王城の中央からはかなりかけ離れている。・・・と言うかここは離宮だ。
こんな離宮でお仕事?
首を傾げながらも案内された部屋に入れば、そこには美しい青年が座っていた。
濃い紫色の髪はさらさらで切れ長で美しいエメラルドグリーンの瞳。肌は雪のように白く細身である。彼は黒のタートルネックにズボンと言うあまり見栄えはしないが暖かそうな服装に薄紫色のストールを羽織っている。
この方は一体・・・?
そう思っているとジークフリードさんが口を開いた。
「この方はフィーオ・ヴィオル・ラディーシア第3王子殿下だ」
だ、第3王子殿下!?
私、この間第2王子殿下に婚約破棄されたのだけど。何か関係があるのだろうか。
「その、私は一体何をすれば・・・」
そうおずおずとジークフリードさんを見やれば第3王子殿下が口を開いた。
「キアラ・・・と呼んでもいいだろうか」
「は、はい」
「キアラ、君には・・・私の・・・」
侍女とか?いやいや、そんな。冒険者への依頼なんだから護衛とか?長期のお仕事だし。
「私の・・・妃になってもらう」
・・・え・・・?
「あぁ、あの―――、期限付きの仮初め妃ということでしょうか?」
それなら私がキャルロット公爵家に入らなくては、平民落ちの私が仮初めとはいえ王子妃になんてなろうものなら、身分不相応となって第3王子殿下の顔に傷がつく。
「いや・・・期限は・・・永久」
え、永久?
「仮初めではなく、本当の、妃だ」
「は・・・はいいいいいぃぃぃぃぃぃっっ!!?」
え、何!?何この状況!どう言うこと!?ほ、本当の妃・・・?
なら期限はないにひとしい。てか長期と言うかずっとじゃないっ!!まさに永久と言っても過言ではない!!
「・・・王子妃教育はほぼ終わっているな」
「あぁ、はい。最近はほぼ執務ばかりでしたから」
「では・・・私の世話と仕事の補佐を、頼む」
「は、はぃ。えと、侍女じゃなくて、私がお世話をしていいのですか?」
「・・・侍女は、いない」
「ではどうやって生活を?」
「ジークフリードに手伝ってもらって・・・だが、ジークフリードも、護衛の仕事があるし・・・世話ならば、君にみてもらいたい」
「何故、私なのでしょうか」
「君がいい・・・それだけだ」
わ、わかんない・・・っ!!
「あと、そこの彼は・・・」
第3王子殿下はレナンを見やる。
「私の執事を」
「・・・かしこまりました」
レナンは訝しがりながらもキャルロット公爵公認の依頼なので素直に頭を下げる。
「・・・ジーク、運んでくれるか」
「あぁ」
第3王子殿下の言葉にジークフリードさんが応じると、ジークフリードさんが颯爽と第3王子殿下の体を抱きかかえてそのまますぐ傍のベッドに寝かせる。
「あの・・・」
つい、ついて行ってみれば第3王子殿下がふわりと微笑む。
な、何だろう?一瞬どきっとした。
「私は、ほとんどベッドからは出られない」
「どうして、ですか?」
「産まれながら、病弱で・・・あまり足も動かないから」
「そう、だったのですか」
未来の王子妃として、王城に脚を運んでも、第3王子殿下の存在は知っていた。けれどどんな方かは知らなかった。と、言うか情報がなかったのだ。
無理に調べようとも思わなかったし。
「・・・私の、妃は嫌だろうか」
ふと第3王子殿下がそう呟いた。
「い、いえっ!そんな滅相もない!」
あのバカ王子なら少しは抵抗しただろうが。まぁあのバカ王子との婚約が決まった時は小さい頃だったし、あんなバカだとは思わなかったから。今、妃になれと言われたら国を出て冒険者として生きることを選ぶ。
だが、目の前のお方はとてもキレイで、優し気で。何故だろう?何だか放っておけない。それに・・・
「(あのバカ王子に比べたら、天国!)」
「・・・キアラ・・・?」
あ、やばっ、つい、本音が!
「ふふ・・・よかった・・・もしキアラに断られたら・・・無理矢理ここに監視を付けて首輪を付けて逃げられないようにしなければいけないところだったから」
はい?あの、聞き間違いだろうか?ちょっくら呆然としているうちに第3王子殿下が再び話し出す。
「私は、少し休むから。後はジークに・・・」
「お加減が悪いのですか?」
「・・・魔力酔い。体に不相応な、魔力が流れているから・・・少し起きているだけでも・・・辛い」
そんなっ!
「横になっていれば、大丈夫」
「それならいいですが・・・」
「では小娘、小僧。ついてこい」
小娘と小僧って。き、嫌われて・・・ないよね?
メインキャラ登場までちょい頑張り過ぎたので、次回は明日の夕方以降に投稿予定です<(_ _)>