女子部屋
ショコラの部屋にお邪魔した私、リア、アリー。今夜はみんなでショコラのお部屋にお泊りすることになっている。
「それにしても何なのかしら、あの第2王子。冒険者ギルドにいてもめっちゃディスられてやんのっ!」
と、ショコラが口を尖らせる。
「まぁ、冒険者って王族だろうが貴族だろうが尊敬に値しないひとには容赦ないもんねー」
とアリー。
「ふん・・・私のキアを振った罪は、大罪」
「ま・・・まぁまぁリア。落ち着いて」
リアは心底憤慨しているが、頭をなでなですると少し落ち着いたようだ。
「でも、聞いてよ。あのひと婚約破棄の時に何て言ったと思う?」
「なになに?気になる!」
と、アリーが顔を近づけて興味津々に聞いてくる。
「自分のことまた“第1王子”って言ったのよ」
『あぁ~・・・』
と、3人は呆れ顔で溜息をついた。
「正妃さまがそう仰ってるだけでしょ?」
と、アリー。
うんうん、と私も頷く。
第2王子殿下は正妃さまの御子。対する本来の第1王子殿下と第3王子殿下は側妃の御子だ。
正妃さまになかなか御子が産まれず、やむをえず側妃を迎えた。しかし側妃さまの御子・第1王子殿下がお生まれになって数年後、第2王子殿下と第3王子殿下が同じ年にお生まれになったのだ。
だが、第1王子殿下が産まれた後でも正妃である自分の御子が第1王子だと頑なに王妃が主張し、溜まらず国王陛下が離縁を申し出ると泣く泣く王妃さまは認めたと言うが。第2王子殿下本人が日々“第1王子”だと豪語している以上、本人は納得しておらず今でも自分の子が第1王子だと教え込んでいるらしい。
「でさぁこの間のパーティーでもあのバカ王子、自分を“第1王子”って豪語して国王陛下がかんかんだったのよ。おかげで当分は社交場禁止だって」
と、公爵令嬢であるショコラが教えてくれる。
ショコラは公爵令嬢として婚約者と共に社交界にも顔を出している。無論その時あのバカ王子の隣にいたのも恐らくはマリーアンナだろう。隣に婚約者の私がいないのは適当にあのバカ王子が私の体調不良をでっち上げ、代理でその妹に相手を務めてもらっていると嘯いているそうだ。
私はパーティーのあった日の日中は王子妃教育と銘打ったあのバカ王子と王子の婚約者の仕事を片付けている。
当然そのことは王妃さまも知っているが、息子の代わりに仕事を片付ける存在が必要なのだと放任しているというわけだ。
「本当に婚約破棄は秒読みだと思っていたけど。破棄してくれてよかった」
と、私が言うと・・・
『ほんとね~』
と、他の3人も相槌をうってくれる。このままマリーアンナが愛人状態でバカ王子と結婚して仕事だけ押し付けられるなんてのはまっぴら。
「更にはあのバカ王子だけど公爵家を継ぐ気満々だったの。次期公爵閣下なんですって」
と、言うと・・・
「やだ・・・何それ・・・!あのバカ王子、公爵になりたいの?それとも王さまになりたいの?」
と、ショコラが苦笑する。
「どっちも嫌だわぁ~」
無論どちらになっても私が仕事を全部押し付けられるのだから。
「あのバカクソ王子が王になったら、国、亡びる」
と、リア。
全く以ってその通り。だから国王陛下は王太子に本来の第1王子殿下を指名している。尤も王妃さまはあのバカ王子こそが王太子なのだと私に口を酸っぱくして言ってきたが。
いくら側妃さまがこの世を去っているとはいえ王妃さまは言いたい放題。
よくもまぁ王さまも我慢してるわ。
「むしろ王さまがあのバカ王子の婚約破棄を認めたのって・・・」
と、アリー。
「あるかも」
と、ショコラも頷く。
「やっぱり王さまも、私の窮状をご存じであのバカをバカ妹とくっつけることをよしとしてくれたのかもね」
「バカにはバカを、だねっ」
とショコラが言えば、私たちはきゃっきゃと爆笑しながら楽しい夜を過ごしたのだった。