【Side:エスメラルダ】そして私は未来の聖王の母となる
※いぃや、エスメラルダって誰やねんっ!!と、思ったそこのアナタ!!本文冒頭で判明しますのでご安心ください。
※サブタイについてはエスメラルダの妄想のため事実とは異なる可能性があります。
―――王城の一郭
ラディーシア王国の“正妃”・エスメラルダは、神聖なる聖国からこのラディーシア王国に嫁いだ気高き妃。
しかしながら嫁いでから数年経ってもエスメラルダは子宝に恵まれなかった。
そのため王家のしきたりに則り国王は側妃を迎えた。
高貴なエスメラルダとは身分の違うただの公爵妹だった。しかしその側妃が召し抱えられてすぐに妊娠したのだ。しかも、王子を。
悔しくて悔しくてエスメラルダは毎晩泣き叫び、故国に恨みつらみを書き連ねて文を届けさせた。しかし王子が産まれればそれを王太子にしてもらえばいいという返事が返ってくるばかり。所詮は王子を産まなければ故国すら単に国と国との関係を保つために正妃でいればいい。そう言う考えだった。
だからこそ懐妊のために様々な手を打った。時には怪しげな薬に手を出し、時には閨事の指導を受けた。そのかいあってエスメラルダは念願の王子を出産した。
けれども同時に側妃も王子を出産したと聞き怒り狂った。そして夫である国王に自分の子を第1王子にし王太子にするよう迫った。だがそれなら離縁し、国に帰れと一蹴されてしまう。そうなれば故国はただではすまさないと脅したが、当時聖国は政変の真っ最中。文を出せども出せども返事は来ない。
仕方なく我が子を第1王子にすることを撤回したが、我が子には自分自身が正統な第1王子であり、王太子なのだと言い聞かせて育てた。
婚約者もあてがわれ、王子妃教育として執務もやらせた。更にはかわいげもなく我が子よりも目立とうとする婚約者に比べ、とても我が子を立て献身的に支えるとてもかわいらしい娘を連れてきた。
そして我が子がその娘を連れてきたわけを話せば夫も何も言わずに認めてくれた。
これからはあの素晴らしい娘が王太子妃になり、あのかわいげのない娘には代わりに執務をとらせる。
我が息子ながら何て頭がいいのだろう!エスメラルダは感心し悠々自適に今まで通り好きな服を買い、アクセサリーを買い付け、贅沢をしていた。そうしたらなんと正式にあのかわいげのない婚約者は婚約破棄され、そして新たにかわいらしい娘が婚約者になったという!その知らせに胸を躍らされていれば急にオーダーを断られるようになった。
何故?エスメラルダは首を傾げたが、どんなことをしてでも手に入れろと侍女や侍従に命じて待ち望んでいた。しかしいきなり夫である国王に呼び出され、ヴィクトリオの執務が滞っているとお叱りを受けた。
どうなっているのかヴィクトリオに問いただしたところ、何とあの便利な執務用の女を公爵家から追い出したのだと言う。すぐにあの娘を連れ戻し執務をとらせるように命じ、自身は再びオーダーが完成するのを待っていた。だがいきなり国王の命で自分を捕えると、騎士たちがエスメラルダを拘束したのだ。
必要最低限のものしか与えられず、小さな部屋に閉じ込められながら過ごす惨めな日々。エスメラルダはこっそりと潜入させていた聖国のスパイに、書状を出した。
あの頃は政変で荒れていた聖国も今は落ち着いている。そしてかねてより彼女をかわいがっていた次兄が聖王に就いていることを知っていた。自分を不当に幽閉し、このような暮らしをさせていることは聖国が王国を攻める絶好の理由になる。
王国が聖国のものになった暁には、自身の息子のヴィクトリオを聖王の長女と結婚させ、次期聖王に迎えてもらう。
そんな計画が進んでいることも知らず愚かな夫を嘲笑しながら、彼女はほくそ笑んだ。
そして・・・
―――スパイから無事王国に攻め入った。
―――もうすぐあなたを助け出せる。
そう、密書が届いて歓喜した。
そしてある日、扉が開いた。
王国に攻め入るため、王国の騎士団の格好をした“聖国軍”は王子の婚姻と栄転の発表のため、エスメラルダを目一杯飾り立ててくれた。
遂に、遂にこの日が来た!
エスメラルダは歓喜した。
遂に息子のヴィクトリオが聖王の姫と婚姻し、聖国の王子となる!
将来は聖国の聖王だ!
栄転、とは恐らく将来の聖王の母となる自身に新たな身分と特権を与えてくれると言うことだろう。
そして騎士たち周囲を囲まれるようににエスコートされながら、エスメラルダは王城のパーティーホールの扉をくぐった。
自信満々に胸を張って見上げたその先には。
「んなっ!?何であなたが生きているのよ!!」
エスメラルダはその人物を見て、絶叫した。
※補足※
ヴィクトリオが聖王の王女と結婚し王太子となった時、既にヴィクトリオと結婚したマリーアンナはどうなるのか。そこら辺を全く考えていないエスメラルダさん。そこら辺は見事にヴィクトリオに遺伝しました(苦笑・・・)




