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王太子殿下夫妻との晩餐会


―――離宮


「本日は、お越しいただきありがとうございます」

離宮の入口で私はジークさんと一緒にマティアス王太子殿下とクレア王太子妃殿下をお出迎えした。


クレア王太子妃殿下は帝国から嫁いでいらした姫君だ。水色がかった銀色のストレートロングヘア―は絹のようになめらかで光沢を放っている。その頭には翡翠色のカチューシャのような髪飾りを身に着けており、真ん中分けの長い前髪から見える神秘的な淡いすみれ色の瞳はとても優し気だ。肌は白く顔立ちも端正で、耳元では金色の耳飾りが歩くと同時に揺れる。

こんな美しい方がいるのかと思うくらいに息を呑んでしまうほどの方だった。


装いは水色の上品なドレス。それに並ぶマティアス王太子殿下の淡い菫色のスーツもステキで。あっ!お互いの瞳の色を取り入れた装いに思わずどきっとしてしまう。


かくいう私は翡翠色だとクレア王太子妃殿下と被るかもしれないと今回はフィーの髪の色である濃い紫色の髪飾りを付けた。そして妃殿下より目立たないように落ち着いたライトグレーのドレスを身に纏っている。


フィーも本日は私の瞳の色であるローズレッドのアスコットタイを取り入れたシックな黒のスーツだ。


本来ならばフィーも一緒に出迎えないといけないのだが、フィーの体調の方が心配だと、

マティアス王太子殿下が仰って下さりフィーは先に席で待っていてもらっている。


お席までおふたりをご案内するとフィーがレナンに支えられながら立ち上がり、一礼する。


マティアス王太子殿下はそのまま座っていていいとフィーに合図し、簡単に互いの挨拶を済ませる。そしてマティアス王太子とクレア王太子妃殿下に席についていただき私が席に着くと、レナンや侍女となったお姉さま方が料理を運んできてくれる。


普通こういった晩餐の場合はコース料理かもしれないが、今回はマティアス王太子殿下自ら、“冒険者スタイル”がいいな。と仰り・・・念のためフィーからも確認してもらったら本当にそれがいいみたいで。


むしろクレア王太子妃殿下もそれに興味を持っているようで、“是非”とのことだった。見た感じ深窓のお姫さまのようで興味ありげには見えないのだけど。


4人掛けのテーブルの上に、いくつもの大衆料理が並べられて行く。あまり目にすることのない大衆料理の数々に、マティアス王太子殿下もクレア王太子妃殿下も驚いているようだ。


「これはすごいね。全て、キアラが作ったのかい?」

と、マティアス王太子殿下。


「えぇ。侍女たちにも手伝ってもらいましたが。あと、食材はレナンや冒険者の知人が協力してくれました」


「まぁっ!」

クレア王太子妃殿下も感心しているようで物珍し気に様々な料理を見ている。


「クレア、気になるものでもあったかい?」

マティアス王太子殿下がクレア王太子妃殿下に問うと、クレア王太子妃殿下は控えめに一つの皿を示した。


「こちらはラムマトンと言う魔物の肉を使ったシシカバブです。串のまま食べるのが普通ですが、食べづらければお肉を串からはずしましょうか?」


「い、いえ!どうやって食べるのが作法なのかしら」


「では、失礼します」

私がシシカバブを持ってがぶりと食らいつけば、マティアス王太子殿下とクレア王太子妃殿下は驚いて見ていた。


フィーは何度かご馳走して慣れているので私に続いて口をつける。


「へぇ、フィーもうまいね」


「キアが作った料理はすべておいしいので、兄上もどうぞ」

も、もぅ。フィーったら!

すべておいしいだなんて、持ち上げすぎだし。


けれど、ふたりも恐る恐る串を持って上品にお肉を頬張る。はっ!!あれが、上品な串焼きの食べ方っ!私もマネしないと。


「とってもおいしい!」

「そうだね、クレア」

おふたりとも気に入ってくださったようだ。


「指先はこちらで拭いてください」

と、おしぼりを差し出せば、クレア王太子妃殿下がそれを受け取ってくれる。

そして、指先の拭き方まで上品っ!!


私がそれに魅入っていると。


「ふふ、キアラはクレアを気に入ってくれたかい?」

と、マティアス王太子殿下。


「はい!その、とてもおきれいで動作のおひとつおひとつが、国宝級かと思います!!」


「まぁっ!光栄ですわ」

「ははは、私よりもクレアを褒めるのがうまいね」


「いえ、そんな!」


「私もキアラさんとお呼びしていいかしら?」


「えぇ!もちろんです!」


「では、私たちのことは兄、姉と呼んでもらわないかい?キアラも籍を入れたのだし、私たちも、ねぇ?」


「はい!マティアスさま。そう呼んでいただけると嬉しいわ。あとフィーくんにも」

そう、クレア王太子妃殿下いえ、クレアさまが仰ってくれて。


「はい、クレアお姉さま、マティアスお兄さま」

「では、私もクレア姉上と」

そして、互いに微笑み合った。


「さて、次はどれにしようか?」


「お肉を食べたので、こちらのミックスベリーのサラダはいかがですか?」

私が示したお皿には森などで採れる木の実がたくさんあしらわれたフルーツサラダが盛られている。


「まぁ!色とりどりでステキね」


「味もさっぱりしていて甘さがくどくないのでおススメですよ」


「では、いただこうか。クレア」

「はい、マティアスさま」

わぁ!クレアお姉さまはこちらに来られてすぐに婚姻されたそうだけど、とても仲良しでステキな夫婦!


「わぁ、おいしいわ。王国には本当にいろいろな食べ物があるのね」


「あぁ、クレアも気に入ってくれると思っていたよ」


おふたりの仲の良さを見やりながら何だか憧れてしまう。


「キア」

フィーが私の名を呼ぶ。


「私たちだって、負けていない」


「フィーったら」

そんな私たちのやり取りを見てマティアスさまは・・・


「フィーは負けず嫌いだからな」

と、微笑みながら教えてくださった。


その後もいろいろな大衆料理を召し上がられて、いつもとは全く違うテイストの料理にマティアス兄さまにも、クレア姉さまにもたいそう満足していただけた。


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