第八夢 お迎え。
舞台 現実世界
色彩 バッチリリアル
スーパーで会計を終え、買った品々を袋に詰め店外へ出る。愛車に乗り込み、ゆっくり発進させる。
スーパーの駐車場の矢印に従い出口へ向かう途中、先輩を見付けた。先輩は中型のバイクに荷造りをしているようだ。車の窓を開け声をかける。
「せんぱーい! 風宮先輩、しばらくぶりですね?」
「……そうだな、舘野」
なんだか、以前と様子が違う……?
いつもニコニコしながら話をする先輩にしては、まったく笑わないし、なんだか表情も厳しい。
「ミヤ先輩、どうしたんで……」
「迎えに来たんだ。終わったんだよ」
言葉を遮られたが、先輩の真剣なまなざしに気圧されてしまう。
「おまえは死んだんだ。だから俺が迎えに来た」
「…………あっ」
先輩の突拍子の無い言葉が理解出来ず、しばらく固まっていたが重大な事実を思い出した。
風宮先輩は、十年以上前に亡くなっている。
「そ、そんな。困ります……。今年、オレの娘、受験ですし……」
そんな事を言う俺に対して先輩は首を小さく動かし、後ろを振り返る様に促した。そこには、暴走車に跳ねられ横たわる自分の身体が……。内臓が零れ出してしまっている。自分が死んだ事を自覚し、言葉が出なくなる。
「わかっただろう?」
「…………!」
先輩の声にハッとすると景色が変わっていた。
自分は車になど乗っておらず、先輩から十歩くらい離れて棒立ちしているだけだった。先輩のバイクは中型から大型のサイドカーになっていた。
「さあ、逝こうか」
先輩が小さく微笑む。
現世へ未練でぐちゃぐちゃな心とは関係なく、足は一歩一歩サイドシートへと向かっていく。
あと数歩……。
◆◆◆
ここで目が覚める……。
精神的疲労 大
目覚めの安堵感 超極大
風宮先輩がずっと前に亡くなっているのは事実です。
改めてご冥福をお祈りします。