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第2話 拷問と虚偽

今回は結構無理矢理感ある。もっと、シンプルなのがいいんだけど、能力が能力なだけに、最初は地味かつ面倒で、書いてる側のメンタルを削ってきます。アルマド婆さんも、色々あるんですよ。支離滅裂でも、許して上げて...すいません。

アルマドのババアは血走った目で、


「実際に死なんのか確かなきゃいかんのじゃ!」


と言った。昨日の夜、もし自分が逃げた場合のことを考えていたが、その中に自分を捕まえに来るという考えは出てこなかった。宴のときに酒を飲んでいたこともあり、少々楽観的になっていたのかもしれないし、なにより眠くなっていた。今思えば、一服盛られていたのかもしれない。過去のことをあれこれ考えても仕方がない。今は何としてでも彼女の意思を変えなければいけない。


「ちょっと待ってください!僕が不死って言っただけで、本当は勘違いかもしれない!」


これは本当だ。水晶に不死と映し出されたから不死身だ、だから殺してみようだなんて納得できるはずがない。しかしアルマドは、


「それを今から確めるのじゃて...とりあえず、もう一回眠ってもらうじゃ。」


と、話をする気がない様子だ。寝ている間なら痛みはないのか?それは分からない。彼女は右手で僕の頭を掴み、何か唱えようとした。恐らく、眠らせる魔法を使う気だ。使わせてしまえば、もう交渉もクソもなくなる。この先どうなろうと、僕は確実に一回は死んでいることとなる。それを避けるため、本来3割しか使われていないという脳ミソをフル稼働して(少なくともそれくらいの必死さで)、一筋の光を見出だした。


「手首切れ!僕の手首を!」


「何を言っとるんじゃお主は...」


いきなりトンチンカンなことを言われ、彼女の動きが止まる。


「俺の能力は不死じゃないかもしれない!それを証明するために、まず眠らせる前に!手首を少しだけ切ってくれ!」


「だから、どういうことじゃ?」


「いいから!」


彼女は困惑している。それもいい。この圧倒的不利な状況、手も足も出ない状態では、口で言いくるめる他に策はない。言いくるめる上で、相手の頭が混乱しているのは良い(はずだ)。そして彼女は、とってきたメスで俺の右手首を少し切った。その手首からは一筋の赤い線が流れるが、その傷は、


「塞がらないのじゃ!?」


やはり。昨晩、寝る寸前に爪を割ってしまったが、その爪は治らなかった。ここで、現れた可能性が二つ。漫画やアニメによくある不死の能力は、例え胴体がなくなろうと再生するが、僕の手首の傷は消えない。不死の能力とは、言い換えれば死なない能力であって、よくよく考えてみればなぜ治るのか。片手がなくなっても生きてはいける。もしや、死に至るほどの損傷で初めて発動するスキルなのかもしれない。これが一つ目。しかもこのスキルは、発動したとして完全に治るのかどうかも分からない。死なない程度までしか再生されない場合もある。あるいは、例えば真っ二つにされたとして、体半分がない状態でも生きていけるようにする、いわゆる適応するスキルなのかもしれない。これが二つ目。そしてここに、僕は三つ目の可能性を提示する。


「さっきも言ったが勘違いかもしれないだろ?手が治らないんだ!俺の能力は不死じゃない!」


当然、治らなくても不死である可能性ある。しかし、そこまで考えられていないと思わせることが、相手に出し抜く気がないというアピールになる(はずだ)。僕の持つ唯一のアドバンテージは、水晶に映し出された文字を僕しか知らないこと。それを利用する。


「あの水晶には漢字っていう僕のいた世界の文字が映し出されてた!漢字は難しくて、似た字も多いんだ!」


「似た字じゃと?」


その返答は、僕のペースに飲まれている証拠だ。


「火炎だったかもしれない。火だよ、火!炎!字が下手な人だと、火炎が不死に見えたりするのも珍しくない!」


国家魔術師と言っていたが、僕が今日あった人達は兵士にメイド、魔術師らしき人物は彼女の他に見ていない。これは完全な推測だが、若い魔術師達は皆戦地に出向いていて、アルマドは歳のおかげで免れたといったかんじではないだろうか。というか、この実験は彼女の独断ではないのだろうか。もしも俺の不死の能力が皆の想像するような理想のスキルではなかったら、散々金を使った挙げ句ろくな成果も上げられなかったのなら...その責任は自分が負わされ、最悪の場合は再び戦場に送られてしまう。その焦りから、彼女は僕に一服盛り、この部屋に監禁し、能力を確認しようとした。しかし殺す勇気が持てずに時間が過ぎていき、僕が起きてしまった。こういうシナリオではないだろうか。だいたい、不死の人間とはいえ、そのスキルを調べるために殺すなんてことを昨日の今日で決定できるわけがない。


「これ、王様達に内緒だろ?」


「!」


「もし王様達に内緒でスキルを調べようとして、しかも実は不死の能力ではなかったので死んでしまった、なんてことになったらヤバくないか?」


「...」


「頼む!このことも言わないからさ!拘束、解いてくれない?」


「...」


彼女は黙りこんでしまった。僕が騙そうとしている可能性、殺した後の責任、メリットにデメリット、しかしいくら考えても、答えを出すには僕を殺してみるしかなく、そうすれば後戻りが出来ない以上、その思考が完結することはない。一番いけないのは、投げやりになって適当に決めることだ。それをさせないためにも、あと一歩、背中を押してあげる言葉が必要だ。


「俺はここに来てまだ1日しか経ってない。世界のことも、魔法のことも、戦争のことも、何も分かってない。現状、そういうのを知る上で一番役に立つのがアンタだ。このことをチクって、情報源を失うのはむしろデメリットの方が大きい。これは取り引きだ。言わない代わりに色々教えてくれないか。火の出し方とかも、魔法を参考にしたりなんだりあるだろ?」


取り引きという形の方が信用されやすいと思って言ったが、根拠はないし、僕はメンタリストでもないので、これで人の心が掴めるのかは分からない。だが、


「...分かった。」


なんとか、彼女の心は掴めたようだ。



その日は、アルマドと王宮の裏庭で特訓をした。彼女の魔法を見せてもらい、炎を出す参考にしたり、自分でも色んなポーズをしてみたが、僕のスキルは紛れもなく不死なので、出るわけがない。彼女は終始、険しい顔で僕がポーズしている様を見ていた。はっきり言って、地獄だった。



そして夜になり、体が、というよりは心がくたくたになった僕は、吸い込まれるように床についた。夢を見るときは、決まって浅い睡眠だとテレビか何かで見た気もするが、とにかく、僕は不思議な夢を見た。

読者が疑問に思いそうなところ解説

Q.なぜアルマドはすぐに殺さず、わざわざ拘束して殺そうとしたのか?

A.戦争に行きたくない(あくまで山田の推測ですが事実です)ことから分かる通り、人を好き好んで殺したいわけじゃないので...。あくまでいざというときに殺すことが選択肢に入っているだけなので。研究のためと建前を作るだけでも、大分マシになりますからね。


Q.能力を確めるのはやはり必要だろ?

A.不死の能力を確める方法って、殺すことしかないんですよ。作中に書いてはおりませんが、そもそも昨日の今日で一度殺してみるかなんて解答は出せません。死刑だって、裁判とかめっちゃ手順踏むでしょう?それに、殺してみて仮に裏切られたら、最初に殺すことを提案したやつの責任になるので、誰も言い出せないってのもありますね。

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