2-004 宿屋のおじさん
5人は宿屋で休憩をしていたが、宿屋のおじさんが急いで拓也の宿部屋の方へやって来た。宿屋のおじさんはいつも誰かと電話をしているとても温厚な人物であった。
だが、そのような人が今日はとても焦っている。拓也はとても意外だなと感じた。
「大変だよ、西出口付近でラピスラズリが暴れているんだよぉ」
「わかった。すぐに俺が向かおう」
そう言ったのは曉月である。曉月は急いで西出口の方へと向かった。
------ランコントル・西出口付近------
とある女が暴れ回っている。女は紺色の瞳を持っていて、マントのようなものに大きく藍色で瑠璃と書いてあった。
「水の歯車・生成……大砲!」
水の大玉が次々に建物を崩壊させていく。避難している人々もなかなかに危ない。
「キャハハハハッ! このラピスラズリちゃんの手によってみんな死ねば良いのよ!!」
女は遊び感覚で様々なものを壊していく。そこに曉月がやってきた。
「おい、そこのものをたくさん壊している女! 待ちたまえ。私が来たからにはもうそのような行動はさせないぞ!」
すると、避難している人たちが止まり、とても大喜びをしている。
「曉月さんが助けに来たぞ!」
「やった! これで俺たちは救われる!」
「イェーーーーイ!」
すると曉月が周りの人に対して怒鳴った。
「お前達、喜んでいる場合ではない! 早く逃げるんだ! 自分の命を大切にしろ!!」
すぐさま周りの人は急いで避難する。そして、曉月と瑠璃色の少女以外は誰もいなくなった。周りにあるのは壊れた建物だけである。
すると、瑠璃色の瞳を持った女が大爆笑した。
「え!? なんなのこれ!? 笑いしか出てこないわ、曉月政宗! お前は炎使いではないか? 水使いの私に対して、自ら死にに来たの? 素晴らしい方だわ!」
「それはどうかな? 自分の力を過信していると、いつか痛い目に遭うぞ!」
「ええい、黙れ黙れ黙れ!! すぐに殺してやる!
水の歯車・生成……機関銃……蜂の巣になって、死んでしまえぇぇぇぇぇえ!!!」
「炎の歯車……憑依! 紅蓮の炎を我が剣に纏え!」
曉月の剣が徐々に炎を纏っていく。剣が燃えている。
「ええい、炎が出たからって何か問題なのかしら! 水で鎮火させてあげるわ!!」
機関銃から水の弾丸が無数に出てくる。
しかし、曉月の炎はその水の弾丸を全て蒸発させた。
「なんなのよ、水がなぜ全部溶けるの!! 一体何度で燃えているのよ。おかしいじゃない! 私の方が有利なはずなのに……!」
「言っただろ? 自分の力を過信しすぎるといつか痛い目に遭うと……! 炎の歯車・壱式……大炎柱!」
曉月は自分が所持していた剣を地面に突き刺す。剣を刺したところから炎の結界が張られた。西出口付近の地面から次々と炎の柱が吹き出てくる。
やがてそれは、ラピスラズリの足場のところからも吹き出てきた。
ラピスラズリは懸命に自分の水の歯車で対抗するも、圧倒的な炎の量には敵わず、炎の柱に飲み込まれてしまった。
「任務完了だ」
曉月は宿屋へと帰っていく。
しかし、曉月だけは知らない。この街にはもう1人、"宝石十二の王"がいることを。
そして5人とも全員、その人物に会っているということを。
---ランコントル・宿屋---
曉月が帰ってくると宿屋はとても大胆に壊れていた。出発する時とは大違いであった。宿屋の前で倒れていら人がいた。
一体誰なのか? と顔を見ると水城遥である。遥は少し怪我をしているだけで命に別状はないようだ。事情を全て遥から曉月は聞かことにした。
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これは、曉月が出発してからすぐのことであった。とある拓也の発言で、宿屋のおじさんが急に形相を変えた。
「宿屋のおじさん。なぜ、敵の名前がラピスラズリと知っているんですか? 普通の人は知らないはずですけど、もしかして仲間?」
「その真相を知ってしまったからには、お前達はこの街から生かして帰さないぞ! この"宝石十二の王"の1人である、ペリドットがお前たちを殺してあげよう。この第7地区で有名な曉月さえいなければ、もう相手などいない。とりあえずこの地形は戦いづらいから場所を変えようではないか。風の歯車・突風!」
すると宿屋は一瞬にして崩壊した。
そして、ペリドットは中央広場の方へと逃げて行った。追いかける凜音と雅。
拓也は遥を助けるために崩壊した宿屋の下敷きとなった。
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「……ということは、黄桜王子はこの瓦礫の下にいると言うのか……! 急いで助けなければ……」
曉月は応戦に行かず、瓦礫の下にいる拓也を助ける作業に出た。
---ランコントル・中央広場---
本来ならば街の人々が、たくさん賑わっているはずの中央広場であるが今日は、そのような状態ではなかった。
「ペリドットとか言う者よ。なぜ私たちを殺そうとする」
凜音の質問にペリドットが返答をする。
「お前達は、トパーズとトルマリンを殺した。仲間を殺されたのに復讐をしないと言う理由はないだろう? そう言うことなのさ」
続いて雅が、ペリドットに質問する。
「1対2だけど〜あなたは自分が勝つとでも思っているのですか〜?」
「当たり前だろう? お前らみたいな雑魚が何人集まっても雑魚に決まっているだろ?」
すると雅が凜音に耳元で囁いた。
「あいつバカですね〜凜音隊長。おそらくですが、自分が強いと思っている典型的なやつなので〜簡単に2人で倒しましょう〜」
「そうだな、とりあえず最初は私が氷で援護をするから君は戦ってくれ」
そう言うと、雅はペリドット目掛けて走っていく。
「光の歯車・光速移動!」
光の速さで襲い掛かろうとする雅。しかし、対策をされていた。
「風の歯車・風の壁!」
無数の風の圧力に押し戻されてしまう、雅。
「凜音隊長、どうしましょう〜。光の速さで斬りかかろうとしても私の体が〜、どうしても風に負けてしまいます〜」
どうするべきか、迷う凜音。その隙を突いてきたのがペリドットであった。
「戦場で迷うなど、自ら死ににくるような者と同類である! 風の歯車・下突風!」
凜音の足下から大きな風が吹き、凜音は上空へと吹き飛ばされてしまう。
「これで真っ二つになるんだな。風の歯車・生成...剣!」
そして生成した剣で横に振る。すると風の斬撃が凜音の方へと飛んできた。
(まずい……剣で弾くしか方法がない)
と持っている剣で風の斬撃を弾こうとする凜音。
なんとか軌道を変えることができたが、風の斬撃は後ろにあったビルを真っ二つにした。ビルの上階が雅の真上へと落ちてきた。
このままだと押し潰されてしまう雅だが、光速移動でなんとか逃れることができた。
「氷の歯車・氷の滑走場!!」
氷の滑り台のような物が凜音の下で作られる。なんとか落下の衝撃を和らげることができた。
(どうすれば、あいつに近づくことができるか……)
その時、1つの希望がやってきた。
「凜音〜大丈夫かぁ??」
やってきたのは、拓也と遥そして、曉月であった。そして、凜音は思ったのであった。
(これなら、行けるのでは……?)