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王国滅亡の報復へ…  作者: 佐伯千尋
第4章 絡繰屋敷・VS玄武編
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4-015 VS玄武④ とどめの一撃


「でも、良いところまでは行ったと思いますよ……まさか投与した薬を他者によって5つも解除されるなんて……思ってもいませんでしたからねぇ……」


 玄武がゆっくりと話していると、榊葉が再び戦線へと入った。


「夏目、今のうちに仙木を引き連れて朝霧の付近まで行け! 光の歯車(ライト・ロウェル)・弐式……小惑星帯(アステロイドベルト)


 隕石のような重い一撃を何発も玄武に対して撃ち込むが、筋力増強している玄武は初めの1発で榊葉の剣を折り腕を掴む。


「まったく榊葉姉妹は相変わらずのバケモノですね。ここで地獄へ落としてあげないとねっ!」


 玄武は榊葉の腕を一気にねじ曲げ、腕を再起不能にする。


「ヴッ……!!」


 あまりの痛みにその場で跪く榊葉。


「ま、後であなたはダイヤの分まで十分に痛めつけますんで……さて、そこの2人は始末しようかな」


 玄武は標的に定めたのは、瀕死状態の仙木とその仙木を必死に朝霧の方へと運ぼうとしている夏目の2人であった。


「あなたも腹に穴を開けてやる!」


 玄武が触手化された手で夏目の腹に穴を開けようとする。


(これは……避けることができない……)


 夏目は瞬時のことであったため目を瞑った。


(あれ……全然痛くないぞ……)


 恐る恐る目を開けると目の前の状況に驚きを隠せなかった。

 瀕死であるはずの仙木が夏目のことを庇ったのだ。


「そ……そんな……仙木……なんでだよ!」


「馬鹿なっ!! まだ人を守り切るほどの体力が残っていたとは……あなたの精神力には敵ながら天晴れですよ……だが二つ穴があいたことによってあなたの死へのカウントダウンはまた加速しましたよ……」


 仙木に二つの穴が開いたことで早く助けないとという意志が出てしまった朝霧は、何も考えずに助けることを考えてしまい、とっさに仙木の方へと向かってしまう。


(仙木……あなたがいないとまずいわ……)


「おやおや、獲物が自分から近づいてきたようだ……さて、狩りの時間だ……」


(まずい……ここで回復特化の朝霧さんがいなくなるのダメだ……僕が止めるしかない……)


光の歯車(ライト・ロウェル)・光速移動」


 拓也が光速移動でこちらに近づいてくることを玄武は見逃さなかった。


(黄桜王子……あなたは人を守る心はいつでも変わりませんね……)


「獲物を変えさせてもらうぜ……! ここで死んでもらいますよ……黄桜王子!」


(しまった、バレていた……どうしよう、止まることはできない……このまま僕も仙木さんや草津さんみたいな穴を開けられて死ぬしかないのか……)


 玄武の手が拓也の胴体の目の前まで来た。その時であった、再びあの現象が拓也を襲い始めたのだ。


(まただ……また僕だけが動いている……この現象はいったいなんなんだ……!)


 自分だけが動ける拓也はまず、玄武の攻撃から逃れるほど距離を取った。

 そしてその数秒後、止めを刺したと拡散していた玄武は拓也が後ろにいて無傷ということに疑問を持っていた。


「なぜだ……確実に息の根を止めたと思ったのに」


 少し考えた後、あることを思い出した。


「そうかそうか、黄桜家特有のあの技を手に入れたということか。それは非常にまずいなぁ……」


 玄武の独り言に拓也は理解ができていなかった。


(黄桜家特有?? 玄武はいったい何を言ってるんだ)


「まぁ、そのきょとんとした顔はまだ発動条件をわかっていなさそうだから、まだ勝てる範囲でしょう」


 すると夏目が拓也に対して大きな声で発動条件を言ったのだ。


「黄桜くん、君のその代々伝わる黄桜家に伝わる技"相対性理論"の発動条件は"死"を意識することだ! 君がその技が起きた二回、どちらも死を意識しただろう! 君が死ぬと意識した攻撃が当たる寸前で3秒だけ時間が止まるんだ!」


「この野郎……発動条件を言いやがって。死んでもらおうか!」


 玄武は仙木、夏目がある方へと走り出し息の根を止めようとする。それを見た拓也も抵抗をする。


「椎名、お前の思い通りには僕が絶対にさせないぞ!

光の歯車(ライト・ロウェル)・光速移動」


 玄武よりも先に夏目の元へとたどり着いた拓也。すでに戦闘態勢だ。


「君1人では、残念ながら私には勝てませんよ?」


「違うよ! 黄桜くんだけじゃないから!」


 拓也の後を追いかけていたのか、後ろから遥が加勢に入る。


「ふっ、あなたも戦力とは言えませんね。あなたにはとっておきの薬で死んでもらいましょう! おらっ」


 玄武は遥に対して3本の注射器を一体感覚の時差を設けて投げた。

 だが目の前の1本に集中していた遥は1本弾いてホッとしたのか残りの2本に気付いていなかった。


「遥、危ない!」


 慌てて振り向くも、杖で弾くには少ない距離であった。


「大丈夫だ、水城遥。お前は絶対に死なせない!」


 なんと西坂がいきなり遥の前に飛び出て遥を庇ったのだ。2本の注射器は西坂の心臓付近へと命中した。


「まさかここで邪魔が入るとは……まぁ良い、あの男に刺さった薬は、心臓麻痺……それが2本、刺さっているということはあの男は間も無く死ぬ。せいぜい、最後の会話でも楽しんでください」


 遥の目には涙ができていた。西坂は僅かな力で遥の目から涙を拭き取ろうとする。


「そんな……なんで私を守ったんですか……」


虹の家族(レインボー・ファミリーズ)の血筋を絶やすわけには行かないんだよ……はぁはぁ……水城遥

、後は頑張れよ……」


 西坂の目にはもう光が入ってなく死んでいた。

 遥は泣くのをやめ再び立ち上がった。


「玄武、あなただけは絶対に生かしはしない!」


「あなた1人が怒ったところで状況は変わりはしませんよ。まぁ、できるものならやっと欲しいものですが」


「随分と1つに気を取られすぎて、周りが見えない癖はいつも変わらないな、椎名!」


 玄武の目の前には、すでに剣を振りかざし終えていた拓也がいた。


(まさか……まさか……この私が体を斬られたのか?)


「玄武……お前の弱点は、予想外なことが起きると次の動作が遅れることだな……」


 後ろから片腕を折られた榊葉が折れていない方の手で心臓に剣を刺した。


「あなたの剣は……先程、折ったはずでは……!」


「馬鹿ね……これはダイヤの剣よ。姉と共に地獄に落ちなさい……!」


 榊葉はダイヤの剣をさらに深くまで押し込む。


(本当にここまで追い込まれるとは……思っていなかったですよ……ですが、私は死にませんけどねぇ)

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