4-012 VS玄武① 結界の強さ
「ヴググ……」
草津の腹からは血が溢れ出ている。急いで遥と夏目が草津のところへと救護へ向かうが、草津の傷は動くこともできない様子だった。
玄武は草津のことを戦闘不能状態と認識し、次の標的を決めていた。
「腹を貫通されたら、もう戦えないでしょう……さて、次は誰を狙いましょうか……? まぁ、少なくとも私の結界を壊さない限り誰も攻撃することはできませんけどねぇ……」
玄武の一言により仙木が急いで撤退命令を出す。
「まずい……みんな戻れ! 今は攻撃しても無駄だ!」
「そんなこと言っても遅いぞ仙木……」
西坂はすでに玄武との距離を縮めており、攻撃を当てれる寸前のところまでいた。
「これでもくらっていろ……氷の歯車・壱式……氷華孤月!!」
月の孤のような氷の斬撃が玄武を襲うが、玄武には一切攻撃が当たっていなかった。
攻撃が当たらない状況に唖然する西坂、だが相手が天之四霊の幹部と言うことを思い出し、とっさに逃げようとする。
「今更、気づいても無駄ですよ……ふんっ!」
玄武の手刀により西坂の右足が切断される。その場に倒れ込む西坂にゆっくりと近づいていく玄武。
「申し訳ない……西坂。私がもっと早くに撤退命令を出していれば……」
「気にするな仙木……天之四霊の幹部と言うことを忘れたいた私も愚かであった……」
「最後の遺言はそれで良いかな? まぁ、私たち幹部には虹の家族にしか壊すことができない結界が貼られているのでね……それを忘れた時点で貴方たちは負けている! 申し訳ないが、貴方たちが連れてきた黄桜くんと水城さんの実力は同じ街に2年間住んでいた私は把握済みですので、無駄ですよ……」
「そんなに話す余裕がお前にはないはずだ、椎名!」
話している隙に徐々に近づいていた拓也。頃合いを見て飛び出したようだ。
「そのような遅い攻撃が当たるはずないでしょう! 少なくとも筋力増強・俊敏強化・跳躍上昇の薬を投薬した私には遅すぎます……増してや、そのような薬を使わなくても簡単にかわす事は可能ですが……」
拓也の攻撃は玄武にとっては話す余裕がある程、簡単にかわすことが出来るようだ。
玄武はとあることを嘲りながら話す。
「筑紫秋総帥に言っておきなさい……貴方たちの敗北した理由は、貴方や高緑至一郎などの戦いの場を踏み慣れている虹の家族を連れて来なかったことだとね! まぁ……貴方たちが生きて帰れる保証はありませんが……」
拓也が玄武に攻撃を仕掛けている間に仙木が西坂の方へと向かう。
「大丈夫か……?」
「俺は大丈夫だ……氷の歯車・生成……義足」
玄武に斬られた右足を氷の義足で補い、なんとか立つことができた西坂。
「俺たちが援護をして、黄桜拓也に結界を壊してもらおう……」
「そうだな……」
拓也だけではなく戦いに西坂、仙木も加勢する。
「3対1になったとしても……私には勝てませんよ?」
仙木と西坂が加勢しても状況は一切変化せず、玄武に結界が貼られたまま時間だけが過ぎていく。
仙木や西坂などが何度か結界を壊すチャンスを作るが、拓也が一向に壊すことができない。
溜まっていくものは、疲労だけであった。
「クソッ……」
「そう気を落とさないでくださいよ黄桜王子……貴方の実力は確実に上がっています。ただ相手が悪すぎるんですよ! それが中型逆賊程度であれば間違いなく致命傷を負わせることはできますよ! 後少しです」
明らかに玄武の言い方は拓也のことを馬鹿にしたような言い方であった。
(クソッ……何かいい対策はないのか……何かこの状況を一変できるような一撃は……)
拓也・仙木・西坂が戦っている時に戦線から少し離れていた遥と夏目は草津の救護をしていた。
「夏目さん……この傷は……」
「残念だが……分析の歯車を使ってもこのような深い傷は治せない……」
「そ……そんなぁ……」
だが草津はまだ戦うことを諦めていなかった。
「このままでは……終われないんだ……藤城のためにも……まだ終わることは……できないんだ……」
「無茶するな……お前はもう十分に戦ってきたんだ……」
「いや……まだ行けるさ……頼む夏目さん……俺からの最後のお願いだ……結界を壊す方法を……その分析の歯車で……考えてくれ」
この状況になろうとも戦う闘志を燃やしている草津を見て、夏目は諦めたのか自らの胸中を正直に話す。
「草津ほど馬鹿を見ることはもうないだろう……最後まで足掻きたいお前の気持ちに乗ろうじゃないか」
「へっ……さすがは大将だぜ……話がゴフッ……!」
草津の傷は当然、癒えることはなく悪化する一方である。腹だけの出血だけであったのが、吐血も始まり時間はあまりないようだ。
「……早くしてくれ」
「草津、一つだけ答えてくれ。後何回、大地の歯車を使うことが出来る?」
「命が尽きる限り……何回でも使ってやる……と言いたいところだが……自分の体は正直だと思うぜ……最大で3回使えたら良い方だ……」
「わかった……分析の歯車・勝利への道」
(何か……何か……ないのか……)
「遅くなってごめんね!」
聞き覚えのある声に夏目はある一手を閃いた。
「丁度良いところに来たぜ……結界を壊すために必要な最後の欠片が!」
次回話は1時間後ぐらいに投稿します。




