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王国滅亡の報復へ…  作者: 佐伯千尋
第4章 絡繰屋敷・VS玄武編
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4-006 さらば相棒

久々の更新です。長らくの間すいませんでした。

 実はクローバーには玄武からあることが言われていた。


(玄武さんは確か……困った時は指を鳴らせと言っていた。試してみるしかない)


 クローバーはそのあたりに響き渡るほどの大きな音を指で鳴らした。すると、炎の歯車(フレイム・ロウェル)でクローバーを攻撃しようとしていた藤城がいきなり心臓を押さえてその場に倒れ込んだのだ。


「うぉぉぉ、うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 すると藤城の体中かさがどんどんと緑に変色していく。指の部分は鋭い刃へと変わり果てていった。

 藤城の声を聞き慌てて駆け寄る草津と多加木。しかし、彼らが到着した頃には人間の藤城聡一朗はそこにはいなかったのだ。


「こ……これが、玄武様の技術!!」


 草津と多加木の目の前にいたのは、皮膚が緑色へと変色し、腕には鋭い鎌のようなものをつけた藤城聡一朗がそこにはいたのだ。


「ギギギ……ギェェ!!」


 もはや人間の言語でさえも喋ることができなくなった藤城。そして最後に背中から羽のようなものが生えてきたのであった。


「素晴らしい! これが玄武様の言っていた新薬……

"ベスティオル"」


「ベスティオルだと!?」


(確かその薬品は……藤城が福禄寿を討伐した後に、フォルジュロンで投薬されたあの薬品!! あれは人をこのような得体の知れない何かへと変化させる恐ろしい薬品だったのか!)


「危ない、草津!」


 脇目も振らずに鎌を振り回している藤城。それを必死に避ける2人の姿を傍観しているクローバー。


「実に滑稽だ……そして疲れが見えてきた瞬間、貴様らは終わりだ! ハッハハハ」


 勝利を確信したのか笑みが絶えないクローバー。絶望の表情を浮かべる2人。

 だが藤城はいきなり2人のことを襲うのをやめ、先程からその場を一歩も動かないクローバーを腕の代わりとなった鎌で、腹を切り裂いたのだ。

 これには味方の2人も驚いていた。そして、何が起こったのかわからぬままクローバーは地面へひれ伏す。


(何が起こったのだ……なぜ俺が斬られているんだ。まさかこれは……失敗作だったのか……?)


 こうして訳がわからぬままクローバーはその場で血を流しながら死んでいったのだ。

 思わぬ勝ち方をして素直に喜ぶことができない2人。勝利を収めた藤城の方へ駆け寄ろうとするも、どこか藤城の様子がおかしい。


「気を付けろ多加木……何かが起きそうだ」


 だが、多加木は藤城の大ファンであるため草津の指示も聞かず変わり果てた藤城の方へと走っていく。


「馬鹿! 迂闊に近づくんじゃねぇ!」


「うるせぇ! 何にも役に立たなかった奴が調子に乗るんじゃねぇ!」


 だがこれが多加木志の最期の言葉となったのであった。藤城はいきなり多加木の方に目掛けて、二枚の羽を広げ飛んでいったのだ。

 藤城の大ファンの多加木はこちらに飛んでくる意図を分からずにいた。

 だが2人がすれ違った瞬間、高木の首は大きく空を舞っていたのだ。

 あまりの速さに草津は目の前で何が起こっていたかを理解できなかった。そして藤城が次に自分を狙ってきていることを気づき、慌てて避ける。


(間違いない……もう俺たちが味方ということは忘れているんだ……あの時は初期症状で辛うじて俺たちのことも覚えていたんだろう……だからクローバーを敵を認識できていた。けど今、多加木を襲ったってことは間違いなくもう俺たちのことを忘れているだろう。つまりはもう……敵だ)


 草津は藤城を倒す覚悟を決めた。そして、死んだ多加木の、所まで行き剣を拾う。


(どうせ戦うことを避けられない……覚悟を決めろ! 草津藍!!)


 自分を剣を鞘から抜き出し両手に剣を持つ。


「……来い、藤城聡一朗!」


 当然、人間の言葉など怪物と化した藤城には理解できていない。


「ギギギギギギ……ギィィィィ!!」


 藤城の鎌が炎を帯び始めた。炎の歯車(フレイム・ロウェル)を自身に憑依したのであろう。

 羽を閉じ、その場で鎌を振り回す藤城。すると無数の炎の斬撃が草津へと襲いかかる。


大地の歯車(アース・ロウェル)・地盤上昇」


 草津が剣を突き刺したところ付近の地盤がどんどん上昇していく。だが藤城の斬撃は自動追従だったため地盤を上げても炎の斬撃は追いかけてくる。


(自動追従かよ……便利な攻撃だぜ)


 草津は地盤上昇させた大地から後ろに飛び降り、炎の斬撃を躱そうとする。

 だが藤城の炎の斬撃の威力は想像を上回るものであり、草津の突き上げた大地を粉々にした。


「っ……強すぎだろ……さすがは元中将」


 草津は自ずの刀で斬撃を受け流す。

 自分の刀では弾き返すことができた。だが、多加木の刀はあまり手入れがされていないボロボロの刀であったため刀が折れ、左脇腹に斬撃が体を貫く。


「んがぁ! はぁ……はぁ……ん!? グホッ」


 口から生々しい血が溢れ出てくる。足が千鳥足になっており息が止まるのも時間の問題だ。

 藤城が斬撃で穴を開けたところから草津側へと侵入してくる。


「まずい……来るな聡一朗! 俺が誰だかわかるだろ? 草津だよ、草津! ずっと一緒に行動してたじゃないか! 覚えていないのか?」


(頼む……覚えておいてくれ……)


 だが藤城は、草津の問いかけに一切反応もせず羽を広げこちらへと突撃してきたのだ。


(殺すしかないのか……藤城、お前はもう俺のことを忘れているが、俺は絶対にお前のことを忘れない……)


大地の歯車(アース・ロウェル)・憑依」


 そして刀をいきなり鞘へとしまい、目を瞑り集中する。


(あと少し……今だ!!)


大地の歯車(アース・ロウェル)・壱式……岩穿つ」


 刀を神速で抜き取り、藤城の体を居合切りする。

 どんどん体のバランスが保てなくなる藤城。ゆっくりと真っ二つになっていく。


「できれば一緒にまた行動したかった……」


 鞘に剣をしまうと藤城の体は緑の血飛沫をあげながは真っ二つへとなった。


「ギ……ギギッッ……ギ……」


 体に真っ二つにされてもまだ動こうとする藤城。


(まだ死なないのか……化け物かよ……)


 最後の足掻きで炎の斬撃をもう1発、草津の方へ攻撃するも、草津は臆せずすぐさま炎の斬撃を自らの刀で打ち消した。

 そして藤城は、化物の状態で力尽きたのであった。


(藤城……お前はずっと俺の心の中で生き続ける……そしてお前の仇は必ず俺が取ってやる!)


 藤城のそばには藤城が愛用していた刀が地面に落ちていた。草津は涙を流しながらその刀を手に取り、鞘を腰に装着する。


(とりあえず……先に進もう……)


 草津は戦った場所を後にし、前へと進んでいった。

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