4-005 全滅
祝50話突破! ありがとうございます!!
尾名古は再び穴を堀り次の攻撃に備えている。
(今このダイヤの扉の中にあるのは4人。朝霧は反射壁で隔離されているため足音は聞こえない。閑田は瀕死のため動けないから突然足音は聞こえない。つまり、足音が聞こえたらダイヤしかいない……そこを狙えば!)
「コツ……コツ……」
ダイヤの足音が地面越しに伝わってくる。
(……今だ!)
穴から出ようとする尾名古。だがしかし穴から出られない。
(なぜ出られないんだ……?)
見たことのある黄色の壁が尾名古を地上へと顔を出すのを阻んでいた。
壁越しにはダイヤの顔が見えた。その顔はダイヤ自身の勝利を確信したような慢心の笑みであった。
「だから言ったじゃない。穴に入ったら二度と出れないよって! 息持つかな? 無理そうだよなぁ? 忠告を無視した罰だよ」
(息が持たない……別の場所に移動して……)
急いで別の場所から地上へ戻ろうとする尾名古。だがダイヤが張った反射壁は全面的に張られていたので、地上に戻ることができない。
(もう……無理だ……ヴッ……)
「まずは1人……と言っても、もう1人ももう直ぐに尾名古くんと一緒の道に突き進むことになりそうだね」
血が一向に止まらない閑田。彼が横たわっている付近全てが真っ赤になっていた。
「まぁ……放っておいてもいいでしょう」
両手が斬られた閑田は最後の力を振り絞り、ダイヤの足元を噛んだ。
「っ……どうやら死にたいようだね」
持っている刀で閑田の背中を斬りとどめを刺した。ダイヤは足を噛まれたところの様子を見るとすぐさま表情が変わり怒り始めた。
「大事な服に傷をつけられた……許さない! 許さない!」
既に事切れている閑田の遺体を何度も何度も踏みつけるダイヤ。
それを止めに行こうとするも反射壁がそれを阻む。
少し気が済んだのか我に戻るダイヤは阻まれた壁越しにいる朝霧に狙いを定める。
「大丈夫、あなたは直接私が手を下さないわ」
そう言うと、フィンガースナップを鳴らす。すると壁がどんどん朝霧の方へと迫っていく。そして朝霧の最期を見届ける気もなく、最初に現れた方へと姿を徐々に眩ませていく。
「まずい……逃げないと!!」
急いで今きた道を戻っていく朝霧。1番最初に入ってきた扉まで戻ってくるも扉は固く閉ざされており開くことができない。
(開いて……開いて!!)
後ろを振り向くと、黄色の壁はすぐそこまで迫ってきている。
(もう……あの奥の手を使うしか……)
黄色の反射壁は朝霧を押し潰す形でダイヤの扉と接触し、そのまま光の粒となり消えていった。
壁には朝霧の血痕が飛び散っていたが、朝霧の姿はどこにも見当たらなかった。
---マッキナ屋敷・とある一室---
玄武が待機している部屋まで戻っていったダイヤ。玄武がダイヤへ感想を聞いた。
「どうだったんだい? 君の相手は」
「相手にもならなかった……つまらない。1人は行った時点で既に瀕死状態……罠にかかっていたわ」
「あれだけのたくさんの扉があったら、興味が湧いて開けてしまうものなんだよ。ダイヤだって自分がその立場なら1つや2つは開けていただろう?」
「1つや2つなら開けてたかもしれません……」
「彼はきっとたまたまハズレに当たってしまったんだよ……」
「残りの2人も、1人はただの脳筋野郎で、もう1人は回復専用の人だったから、戦えないし……はぁ、どうせならあの絶対女王のあの人でも連れてくれば良かったのに……」
(ダイヤが倒した閑田と朝霧は確か……第13傑と第16傑の2人。入ったばかりの雅さんに一瞬で抜かれたし、元々第2傑だったダイヤに勝てないのは当然だな……)
「今のダイヤを止めれるのは仙木と夏目以外の大将か筑紫秋総帥、それと君が直属軍に在軍していた5年間、一度も勝てなかった第一傑の北倉箕雪だけかな?」
するとダイヤは剣を鞘から少し抜き、玄武に対して威嚇した。
「いくら貴方が私より上の方でも、その名前を出さないでいただきたい」
「君は私に勝てるとでも思っているのかい? けど、前から名前は出すなと言われていたのに言ってしまった私の不注意だからね……申し訳ないよ」
ダイヤは剣を鞘に納刀した後、ソファーに横になり玄武にあることを要求した。
「とりあえず私の標的は始末したのでサバイバルゲームが終わるまでは仮眠を取らせていただきます。終わったら私を起こしてください」
「わかったよ。それではまたこのゲームが終わったら起こすよ」
ダイヤはそのまま目を閉じ眠り始めた。
(これで3人脱落か……私の予想は当たるのかな?)
生き残りサバイバル 残り35分
---マッキナ屋敷・クローバー扉---
「なぁ……藤城。ずっとまっすぐ歩いていたらゴールに着くと思うか?」
「なんとなくだが、着くと思うぞ。扉に入って時間を使うよりも今ある道を突き進む方が可能性はありそうだ」
2人の会話を後方から聞いている多加木。
(藤城さん、本当に貴方はかっこいい! 貴方と一緒の支部で仕事がしたかった……それに比べて俺たちの中将は穴掘って戦う変な人だからなぁ……)
多加木はあまり尾名古のことが好きではない様子である。
そんなことを考えながら歩いていると先頭の藤城は足を止める。前から誰かがやってきたようだ。
「骨のあるやつだと良いが……どうだろうか?」
男は緑の瞳に同色の髪のショートであり、下がり眉で悲しげな表情をしている。
藤城は当然のように戦闘態勢に入っており、草津と多加木も遅れながらも戦う準備はできているようだ。
下がり眉の男はなぜか涙を浮かべながら3人に質問した。
「なぜ君たちは戦うのだい? 教えてくれ……」
藤城がその質問に返答した。
「俺たちは悪を滅するために戦うのだ! だから逆賊討伐軍に入ったのだ」
すると下がり眉の男は藤城の言葉に疑問を持ったのか首を傾げてこう言ったのだ。
「なぜ僕たちが悪なのでしょうか? 僕たちにとっては邪魔をしてくる君たちは悪ですよ? 勝手にこちら側を悪にしないでいただきたい」
「うるさいっ!!」
藤城達は一斉に下がり眉の男に攻撃を行う。
「これは正義と正義の戦いです……私たちの行いを悪と決めつける逆賊討伐軍はこのクローバーが抹殺します」
「炎の歯車・憑依…… 俺の剣よ大いなる炎の力を受けとれ!!」
藤城は一撃で仕留める勢いでどんどんクローバーに迫ってゆく。
「炎の歯車・壱式……炎蛇舞踏」
「大地の歯車・地盤変化」
「時間の歯車・加速時間」
蛇のようにうねりながら炎を纏った剣で相手を仕留めようとする藤城。
草津と多加木も自分の歯車で補助を行う。
草津により逃げ道を封鎖され、さらに多加木によって藤城の舞う速さが格段に早くなっている。
(これなら……仕留めれるはずだ!)
だがこの攻撃が成功することはなかった。




