2-001 小さき街・ランコントル
本日も2話連続投稿です!
4人はランコントルへと向かっている。その途中で拓也は気になったことを凜音に聞いた。
「凜音、昨日から気になっていたのですが……逆賊討伐軍とは、いったい何なのだ?」
「逆賊討伐軍とは、文字の通りです。逆賊を倒すために命を懸ける集団です。パランポレン王国で言うところの王国護衛騎士団みたいなものです。違いは活動範囲のみで、私たちは王国限定でしたが、討伐軍は世界各地と言うだけでございます」
「そう言うことなのか。でも、昨日の人は"少尉"とか言っていたが、あれはどう言うことなのだ?」
「それは、階級のことですね。上に行くに連れて強い級をもらえるものです。1番上に総帥が1人存在しており、その次に各地区の司令官でもある大将が8人、そこから中将、少将、大佐、中佐、少佐、大尉、中尉、少尉となっていて、そこから下は曹長、軍曹、伍長、兵長、そして一等兵、二等兵までの全16階級です。階級のない者はおそらく一般兵として扱われるはずです」
と3人は凜音の知識の豊かさに驚いている。
普通に考えて、興味ないものをなぜそんなに知っているのかと水城は疑問に思い、質問した。
「なぜ、そこまで詳しい情報を知っているんですか?」
「そりゃ私も昔そこで戦っていたからだよ。7年前の15歳の時に1度入隊した後、3年前に除隊したんだ。そして除隊して仕事を探しているときに、今の国王である伸哉様に拾われたのだ」
(てことは、不二宮さんは、22歳なのか……もっと若く見える……)
話をしながら話をしていると、街の前まで着いたようだ。
小さな街とはいえこのランコントルはカジノなどの設備もあり、若者がよく集まる場所である。
するとたくさんの人が拓也たちの方へ走ってきた。その中の1人の若者が話しかけていた。
「すいません……パランポレン王国って、どちらにありますかね……?」
話してきた若者は赤髪で、背はとても普通である。走ってきた人が着ている服は、綺麗な青色の軍服であるが、派手という訳ではない。
ただ話しかけてきた若者だけ胸のところに"7"の番号がついた鷹のエンブレムがついていた。その胸のエンブレムを見た時、明らかに普段、冷徹な表情をしている凜音の顔が変わっていた。
「向こうの道をまっすぐ行ったらパランポレン王国ですよ。気をつけてくださいね?」
「ありがとう、少年! では、また会う日があったら会おうではないか!」
赤髪の男を先頭に全員が王国の方へと走っていった。拓也は凜音の表情を見て、どういうことなのかを説明してもらった。
「あ……あの鷹のエンブレム……間違いない……大将だ。この逆賊討伐軍第7地区の大将、曉月政宗……!」
「なぜ、怖気ついているんですか? 凜音隊長も強いのですから、自信を持ってくださいよ!」
「いや……無理だ……彼は私と同期であるが、1人だけ、ずば抜けて才能があった……私が辞める時、彼は中将であったのだ……」
「それがどうしたんですか! あなたもそれぐr……」
「何も知らないのに、よくそんなことが言える! 私はそれほど強くないと言っているだろう! あいつが中将の時、私は大佐だったのだ。大きな差があるんだ! 曉月とは……!」
かなり、怒っているように見える。誰が見てもわかるぐらいである。けど拓也は凜音の心情に同情した。
なぜならば、自分も同じ同期どころか、世界中の誰にでも負けたくないからだ。自尊心が強いからである。
とりあえず、ランコントルに着いた4人は街の中へと入っていった。
---パランポレン王国・城下町---
「……なんて、ひどい有様だ!!」
城下町は何一つ残っていなかった。生きている人など当然いない雰囲気だった。
「曉月大将、どうしますか?」
「とりあえず、城下町は君たちに任せる! 何かあったら僕のところまで報告よろしく頼む、僕はとりあえずパランポレン城へと行くとするよ」
曉月は1人で城の方へと向かっていったのだ。城の方は全壊とまではいかなかったが、宝庫などの3階にあった部屋は全て崩れていることが外からでも分かるほど、潰されていた。
(それほどまでの強い敵が現れたのか……? 結界があるはずなのにどうして襲われたのだ?)
曉月は中に入っていく。扉は運良く崩壊を免れており普通に開け閉めができた。一階には、たくさんの王国護衛騎士団と逆賊の死体があった。
死後から半日は経過しているので、ハエがたくさん止まっていた。仕事だから仕方ないとはいえ、人が死んでいるところなど誰も見たくない。
(1階は後で部下たちを呼んで処理を頼むとして……次は2階だな……)
恐る恐る2階へと上がっていく曉月。階段を上がるとそこは崩壊していた玉座であった。玉座の前には真っ二つに上半身と下半身が別れている伸哉の姿があった。
(これは……黄桜国王! 黄桜国王が殺されてしまうなんて、相手はいったいどれほどの強さを持った人間だったんだ)
曉月は伸哉の前に立ち、黙祷を行った。黙祷を行った後、つい後ろを振り返ると、額縁に写真が飾られてある。
写っているのは、伸哉と拓也、そして拓也の母と凜音が写っていたのだ。
(先程あった少年……良かった! 王子は何とか逃げ切れたのか。黄桜家には途絶えてもらうわけにはいかないから助かった……!)
少し安堵した曉月。その後、もう少しだけ写真を見ていると、あることに驚きそっと呟いた。
「水城……!」
---ランコントル・中央付近---
拓也たちはカジノに夢中だった。
「来たぜ!ロイヤルストレートフラッシュだ!!」
拓也はあり得ないほど稼いでいた。そして凜音が拓也たちをカジノから無理やり出させて拓也たちの楽しいひと時は終わりを告げたのであった。
「なんで……もうちょっと稼げたのに!」
「そう言って、すぐにカモられて借金をすることになるのですよ……それよりも遊んでいる場合ではないんです! 君たちは歯車の能力の底上げをしないといけないんですよ!」
と、4人は街から少し離れたところへと移動する。
「拓也王子、それと水城! 君たち2人は歯車の基礎の基もできてないんですよ? 今から平井に試しにやってもらうからきちんと見るように。さぁ平井、あなたの歯車を見せてあげなさい!」
「あの……すいませんが凜音隊長……。僕、歯車使えないんですけど……」
凜音は失言をしてしまったため少し咳込み、呆れた顔で平井のことを見ていた。
「とりあえずだ、全身全霊で歯車を出すことに集中するんです」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!……無理だ」
拓也たちが歯車を手に入れるのには、まだまだ時間がかかりそうである。