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王国滅亡の報復へ…  作者: 佐伯千尋
第4章 絡繰屋敷・VS玄武編
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4-003 椎名琉命

 真っ暗な廊下を歩いた先にあったのは入口の扉同様のいかにも重そうな扉であった。


「今、解析をしてみたけどこの扉には何も仕掛けはされていないよ」


「わかった」


 仙木は夏目の言葉を信じて扉を開けるとそこは大きな広間であった。

 上を見上げると蜘蛛の巣が付いた古びたシャンデリア。絨毯もきれいな一級品であるが埃かぶっている。


(何年も手入れされていないから……当然か……)


 するとどこから共なく声が聞こえてくる。


「皆様どうもこんにちわ。私この館の現主人(あるじ)と申します、椎名琉命(しいなりゅうめい)です。本日は私のゲームに参加いただきありがとうございます」


 椎名琉命、その言葉を聞いた瞬間。拓也、遥、藤城、草津の4人の顔色が変わった。


(俺が瀕死の時に注射を打ってくれたあの男……)

(藤城を助けた、あのトランプ男……)

(その名前は確か……ランコントルの宿屋で新聞を見た時に……)


(僕の王国の……唯一の生き残り隊員(・・・・・・・・・)……!)


「何人かは私の名前を聞いたら分かると思いますが、わからない人も多いと思います。"玄武(・・)"と言ったらお分かりでしょうか??」


 玄武という言葉で全員の顔色が変わった。現場が再び話し始める。


「皆様は私と戦いたいと思います。けど私弱い相手とは戦いたくありません。なのでゲームをしていただきます。ルールは1つだけ。1時間……この屋敷で生き残る(・・・・)ことに成功したら、私への挑戦権を手に入れることができます」


「それは約束してくれるのだろうな?」


 仙木は強く念を押す。やはり、敵の言葉はあまり信用できないようだ。


(でも椎名は……父上には反抗はしていたものの、嘘だけは絶対につかなかった。だからこれは信用しても大丈夫だ……)


「大丈夫ですよ。私、嘘はつきたくありませんので。では、挑戦権を賭けた1時間耐久サバイバル……始まりです」


 始まったものの14人は一切動こうとしなかった。


(このゲーム……動かなければ絶対に死ぬことはない。だから全員で、椎名に挑む!)


 だが拓也達が考えていることは玄武には見透かされていた。


「あのですね……そんなことをしたら全員生き残るじゃないですか? 強い人とだけ私は戦いたいんです。なのでその部屋、10秒後に爆発させますね」


「みんな近くの扉に逃げろ!」


 この広間には入ってきた扉以外に5つの扉があった。

 扉の上にはそれぞれ、スペード、ダイヤ、クラブ、ハート、ピエロの5つのマークが描かれてある。14人は5つの扉に分散し逃げていった。だがそう簡単には行かなかったのである。


「……くそっ! この扉、偽物(フェイク)じゃねーか!」


 駿河と松平が逃げた先のピエロのマークの扉は、捻るとドアノブが外れる仕組みになっている引っ掛けの扉であった。


「走れ! ここで終わるわけには行かない!」


「すぐ隣の扉にかけこめば……」


 諦めず違う扉に駆け込もうとする松平と駿河。だがしかし10秒であるため間に合うことができず。


時間切れ(ゲームオーバー)だよ」


 2人は広間の大爆発に巻き込まれた。


白虎(・・)から無線で通達されたメンバーを見ると、なかなか骨のある方達ばかりですね。何人残るか楽しみです……おっと死んだ方と生き残った方たちがどの扉へと逃げ込んだかをチェックしないと……」


 玄武は丁寧に紙に書き込んでいく。


 松平君近・駿河丈二 死亡 残り12名


スペード→夏目宏明、黄桜拓也、水城遥

ダイヤ→尾名古竹夏、閑田雄作、朝霧澪

クラブ→藤城聡一朗、多加木志、草津藍

ハート→仙木尋和、西坂幸太郎、榊葉栞


---マッキナ屋敷・スペード扉---


「みんな大丈夫かい?」


 夏目が2人に安否を問う。夏目よりも後にギリギリに入り込んだ2人はかなり汗だくだ。


「もう……走りたくない……」


「僕も限界だ……」


「まぁ、まだ時間はゆっくりあるんだし少し休憩しながら進んで行こう」


 夏目の提案に乗る2人。ゆっくりと立ち上がり前へと進んでいく。扉は一定間隔で設置されておりすべて同じ形をしている。


「気持ち悪いね……これは元々の貴族が部下たちの部屋として作ったんだけど……分析の歯車(アナライズ・ロウェル)生成年知(せいせいねんち)


 夏目の目が先程とは異なり今度は橙色の瞳へと進化した。夏目の視界にはその扉の作られた年が真上に表示されていたのであった。


「やはり、所々はおそらく玄武が作っているね……いったい何のためやら、考えがわからないよ……。あ、そういえば黄桜くんと水城さん。2人とも何故、椎名琉命を知っているんだい?」


 その質問に対して、水城は名前を知っているだけであったので言葉が出てこない。拓也ははっきりと夏目に伝えた。


「椎名琉命……、かつて僕のいたパランポレン王国で護衛騎士団を務めていました」


「なるほど……君の部下だったってことだね?」


「はい……椎名は僕たちの護衛騎士団で3番目に実力があった隊員でしたが、よく国王であった私の父と喧嘩をしていました……」


「そうなんだ……関係ないかもしれないけど、よければ喧嘩の内容も教えてくれないかな?」


「椎名の戦い方はかなり特殊なんです。薬剤に関しての知識に長けており、回復の薬や、増強剤、ありとあらゆる薬を作ることができる方でした。なので国王に直接、自分専用の薬を作る場所を提供して欲しい。と何度も願いを言っていました。」


「だが、黄桜くんのお父さんはそれを許してくれなかった……ということかな?」


「そういうことです」


「ふーん。なるほど部屋が欲しかった。だからこんなにも不必要に多くの扉を作ったのかなぁ……」


(いったい何を考えているんだ……)


「黄桜くん、君はもし仮に椎名琉命がこんなにも不必要に部屋を作っていたら君ならどうする?」


「そうですね……椎名のことならどこかに薬を作っている部屋があると思うので片っ端から探しますね。自分にとって利益のある薬があると思うので」


(……なるほど)


分析の歯車(アナライズ・ロウェル)・空間把握」


 夏目の瞳が今度は赤色へと変わっていった。そしてあることに気づきニヤリとする。


「黄桜くん、もし君が1人だったら間違いなく死んでいたよ……」


「え? 何でですか?」


「ここにいくつか椎名琉命が作った扉がある。ただしその先には部屋はない。おそらく触れたものを死へと(いざな)(トラップ)


(じゃあもし僕と遥だけだったら……間違いなく僕は死んでいた……)


 自分の死ぬところを思わず想像してしまう拓也。いきなり頭痛と吐き気に襲われる。


(この屋敷は常に死と隣り合わせ……怖すぎる)


「拓也くん、今は玄武を倒すことだけを考えよう」


 突然の水城の言葉により恐怖心が消えていった。


「ごめん……すごいマイナスなことを考えすぎてた」


「人生は一度きりだよ……ポジティブに行こう!」


「そうだよ、黄桜くん。水城さんの言う通りさ、常に良いことを考えよう」


(僕はとても良い仲間に何度も救われている……でも、でもいつかは僕が救える側にならないと……)


 そう心に決める拓也。3人はただひたすらに扉だけが続いている通路を歩いた行くのであった。

椎名琉命は2カ所で一応出てきております。


一度は序盤の序盤。第2章のランコントルでの

新聞の一面に生存者として名前が書かれています。

もう一つは、第3章でのフォルジュロンで血塗れの藤城を注射一本で直した男として登場してます。

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