4-002 不気味な屋敷
玄武対策の15名は本部を出発し、現場があるという噂されているマッキナ屋敷へと向かって行った。
拓也は久しぶりに出会う人たちとの会話で盛り上がっていた。まずはエーデルシュタイン島で一緒に戦った植松、駿河、松平の3人である。
「まさか君ともう一度ともに戦えるとは思っていなかったよ……頑張ろう!」
「はいっ! 今回も頑張りましょう!」
「実は黄桜くん、俺あの後少将に昇格したんだ! これは君のおかげでもあるんだ、ありがとう!」
「おめでとうございます!」
次に藤城と草津と話し、盛り上がっていた。
「ねぇねぇ黄桜くん? 君と一緒に行動しているあの水色髪の女の子かわいいじゃん? 俺に紹介してくれよ!」
相変わらず女癖が悪い草津。草津の頭に藤城はゲンコツを1発浴びせた。
「草津、いくらなんでもやりすぎだぞ。黄桜くんに迷惑がかかってしまうだろ?」
「ごめんごめんっ」
「ハハハ……ハハッ」
拓也は草津の女癖の悪さに苦笑いをしてその場を切り抜けた。
そして拓也は遥と会話しながら玄武がいると言われているマッキナ屋敷へと向かって行ったのだ。
「ねぇねぇ、拓也くん。実はね私、あの後とても西坂さんに特訓されて、あなたと対等に戦えるようになったの。だから今日はとても楽しみだったんだぁ」
「そ、そうなんだ。僕も楽しみだったよ」
(にしても……遥も強くなったんだな。つい何週間か前まで僕と一緒ぐらいの実力だったのになぁ……モップを持って逃げていたのは今でも忘れないなぁ)
拓也は遥と話しているときにあることを疑問に思った。それは遥が持っているものが杖だったのだ。
「あれ……遥って武器は杖で戦うんだ」
「そうなの……私は剣を一度持ってみたんだけどね……うまく扱えなくてね、西坂さんが杖にした方が良いって勧めてきたんだ」
「へぇ……そうなんだ……」
(遥って……こんなにもグイグイ来るような人だったっけ? それにしても改めて見ると本当に可愛いな……凜音の妹と言われても確かに違和感はない)
と拓也が遥に惚れているところに後ろから水を差すように西坂が話しかけてきた。
「2人ともあまり気を抜かないように……相手は世界一の逆賊集団だ。宝石十二の王や七福神とは比べ物にならないんだぞ?」
「はいっ! 少し気が緩んでいました。すいません、西坂さん」
遥は西坂には逆らえないようだ。拓也と話している時よりも姿勢が良くなっていた。
「はい……気をつけます」
「……なら良いんだ」
そうしているうちにどんどんと屋敷へと近づいて行ってた。
---マッキナ屋敷---
屋敷に向かっていくにつれてどんどん辺りの景色は暗くなっていき、カラスがどんどん増えていった。
「不気味だ……」
そう誰かが呟いた。その一言でマッキナ屋敷の説明ができる程である。
第5.6支部の境目にあるこのマッキナ屋敷は管轄は一応第5支部であるため、仙木が説明をしてくれた。
「このマッキナ屋敷は、数百年前にとある富豪が建てた大きな屋敷だ……ただその富豪は病弱ですぐに死んでしまった。子はいなかったためその屋敷は誰も住まないまま何年も経過した、今は誰も近寄っていない。取り壊そうとしたが……取り憑かれたかのように全員が消息をたったらしい」
(ちょっと、怖すぎませんか……?)
仙木の話が終わるとマッキナ屋敷の門へと到着した。ゆっくりと思い門を大将の2人が開ける。扉まではコンクリートでできた一本道へとなっており、障害物はないもなかった。
すると仙木、夏目を追い越して植松が先頭に出た。
「さっそく、中を確認してきます!」
「お、おい! あまり離れるな!」
仙木と夏目が慌てて忠告するも植松は聞かずに扉の前へと到着した。
植松以外の14人は駆け足で植松を追いかけて行く。全員が扉の前に着いたときには、植松はご機嫌斜めにドアノブを捻る寸前であった。
「よし、このドアノブを捻って……植松春市、参ります! ヴっ!!」
ドアノブを捻った瞬間、植松は急変した。何故かもがき苦しんでいる。
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
尋常ではない悲痛な叫びがマッキナ屋敷付近まで響き渡る。慌てて朝霧が処置に向かうも残念ながら植松はそのまま死んでしまった。
「いくらなんでも……早すぎる! 目の前にいながらも処置ができないなんてことは今までなかったのに」
「夏目……! 急いで頼む!」
「もちろんそのつもりさ、分析の歯車・解析」
夏目の黒い瞳が突如緑に光始めた。
(どうやら、分析の歯車は時間をかけて目で仕組みを理解するみたいな感じのようだ)
「……解析完了。これは確かに気づかないな」
すると夏目はドアの方に近づき、そのままドアノブを捻らず蹴破って入っていった。
夏目に続いてみんなが植松の死体を無視して入って行く。
(なんでみんな無視するんだよ……あまりにも酷すぎないか?)
「みんなひどいよ……どうして無視するの?」
遥が皆には聞こえない大きさでそっと呟く。隣にいた拓也だけが辛うじて聞き取れるほどであった。
そして拓也と遥が入ろうとするが、その前に植松の死体を持ち上げて壁にもたれかけさせた。
(あなたの分まで頑張ります……安らかに……)
拓也は全員に追いつくために急ぎ足で中へと入っていった。
---マッキナ屋敷内部1階---
全員が目の前が真っ暗な道をひたすら歩いて行く。歩いている途中、仙木が夏目に扉の仕掛けを聞いたのだ。
「夏目、一体あの扉はどういう仕組みだったのだ?」
「あれはね、ドアノブを捻ると毒針が出る仕組みになっていたよ。しかもその毒針、刺さって10秒もしない間に全身に巡り呼吸困難に陥るようになっていた」
「恐ろしいものを作りやがって……みんな、植松の分まで俺たちが仇を取るぞ!」
(都合よく植松さんの死を使いやがって……)
「ならなんでさっき彼が死んだときに無視していったのですか!」
遥が拓哉にも発したことのない大きさの声で三木に向かって話した。すると仙木が遥に向かって忠告をした。
「もし植松が死んだ原因のものが周りに感染するとしたら? 迂闊に死体に触った時点で感染してしまい君たちが死ぬ恐れがあるんだぞ? 仲間が目の前で死ぬことは誰だって嫌なことだ。だがな、死んだやつに同情する時間があるならその者のためにも、いち早く仇を取ってあげることが……死んだものにとっての1番の弔いになるんだ……」
「すいません……以後、発言には気を付けます……」
(確かにその通りだなぁ……僕も反省しないと……)
「分かったのなら、それで良いんだよ」
仙木は再び真っ暗な道を歩き始める。それに続いてみんなが歩いて行く。止まっている拓也と遥に近づいて来たのは夏目であった。
「仙木も昔は君たちみたいだったんだよ……けどね、彼も戦友が植松くんと同じような死に方で亡くなったんだ……」
(あの人も苦労していたんだなぁ……)
「私後で謝りに行きます!」
「良いと思うよ。けどね、今は玄武を倒すことだけを考えよう。そしてこの戦いが終わったら伝えると良いと思うよ」
「そうします!」
3人は急いで最後尾に追いつくために走っていった。




