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王国滅亡の報復へ…  作者: 佐伯千尋
第3章 雪山決戦・本部襲撃編
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3-014 茜沢 雅の復讐

---第3支部・西サイド---


 雅が部屋の扉を開けると、見たことのある巨体が暴れまわっていた。戦っていた一般兵が巨大な槌によって瞬殺されていく。


(あの男は……)


 その男は凜音を殺した男である大黒天であった。扉が開いたことはすぐに気づいた大黒天、後ろを振り向くと強張った表情から少しほぐれたような顔つきに変わった。

 大黒天の見た目はほとんど変わっていなかった。唯一変わっていた場所は、右目が傷によって開いていないということだけであった。


「貴様ハ久シキ者デアルナ……私ニ殺サレニワザワザヤッテ来タノカ……?」


「そんなわけないだろう〜。私は貴方を殺しに来たのだ! 凜音隊長の敵討ちとして……」


 いつもは穏やかでゆっくりとした口調で話す雅が珍しく怒声で大黒天に話しかけた。


(殺してやる! 殺してやる!! 殺してやる!!! 私の憧れの人を殺めたお前だけは絶対に私の手で!)


光の歯車(ライト・ロウェル)・憑依……我が愛する剣に敵を滅するために力を……!!」


「面白イ!! イキナリ全力デ戦イヲ挑ンデクル愚カ者ト戦ウノハ!! 良イダロウ、私モ全力デオ前ヲ地獄ニ落トシテヤロウ! 炎の歯車(フレイム・ロウェル)・憑依……業火ヨ私ニ栄光ナル力ヲ!」


 大黒天の巨大な槌は凜音と戦った同様、炎で燃え上がった。


光の歯車(ライト・ロウェル)・光速移動」


 雅は前よりも格段に速く移動していた。大黒天は近づかれないようにするために対策を練った。


炎の歯車(フレイム・ロウェル)・壱式……大車輪」


 持っている槌を振り回す。炎の輪が大黒天を軸に作られ、雅は思うように進めない。


(あの回転を止めないと、とどめをさせない……)


 攻撃が出来ないため距離を取ろうと後ろに下がる雅。だが大黒天は回転したまま雅の方へと突撃してきたのだ。


(仕方ない……あの大車輪というものを私の手で止めるしかない……)


光の歯車(ライト・ロウェル)・弐式……銀河の星屑(ギャラクシー・スターダスト)


 雅は光速移動を使って壁を走り、良い高さのところで壁を蹴った。かなり高い場所から剣をまっすぐ持ち自らが回転しながら降下して行った。

 大黒天はすぐさま大車輪を止め、別の技を繰り広げる。


「ナカナカ興味深イ技ヲ出スジャナイカ……ダガ、ソノ程度ノ攻撃デ満足スルナヨ……」


 大黒天は槌を振り上げ、雅が来るのを待ち構えている。

 そして雅が自らの目の前に来た瞬間に槌を振り下ろした。


炎の歯車(フレイム・ロウェル)・弐式……太陽の烙印(ソレイユ・タンブル)


 雅の剣と大黒天の槌が衝突し激しい火花を散らす。

 どちらの武器も動く様子がない。激しいつばぜり合いが起こっている。


(ま……まずい……このままでは力で負けてしまう)


 あえてつばぜり合いをやめて、逃げようとする雅。

 しかしその選択が仇となった。


「逃ゲルトイウ選択ヲシタ時点デオ前ノ負ケダ」


 大黒天は力を強め、雅の剣が退く前に雅ごと押しつぶそうとする。

 剣を持っている雅はなす術なく、地面へと引っ張られる。

 大黒天の槌は地面に大きく穴を開けた。

 雅は辛うじて身体は守れたものの、剣を持っていた右手と愛用の剣はぺしゃんことなってしまった。

 雅の苦しむ姿を見て、残念そうな顔をする大黒天。


「アァ……貴様モソノ程度ダッタノダナ……まだ凜音トイウ女ノ方ガ手応エガアッテ楽シカッタナァ……サテ、オ別レノ時間ダ」


 大黒天は槌を振り上げ雅に振り下ろそうとするが、いったんその行動を止めた。理由は明白であった。

 雅はまだ倒れていなかったのだ。右手が再起不能であって、戦う武器もない状態、頭からは大量の血を流していた。それでも彼は立ったのだ。

 大黒天はとても困惑していた。


「ナゼ……戦エル状態デハナイノニオ前ハ立チ上ルンダ……」


「何で……でしょうか……わかり……ません……けどですね……ここで貴方を……倒しておかないと……私は死んでも……死に切れません」


(ヤハリ、ココデ殺シテオカナイト……モウ一度、アノ技ヲ出シテ止メヲサス!)


炎の歯車(フレイム・ロウェル)・弐式……太陽の烙印(ソレイユ・タンブル)!!」


(私の体は……どこまで持つだろうか……)


「ラ……光の歯車(ライト・ロウェル)・光速移動」


 大黒天の槌は何もない地面に凹みをつけただけで不発に終わった。

雅はボロボロの体で懸命に大黒天が殺した一般兵の軍団のところへと行く。そしてその中の1番綺麗な刀を拾い、剣先を大黒天へと向ける。

 雅は再び光速移動を使い大黒天のところまで突き進む。


(剣を……持てなくなっても良い……両手が……使えなくなっても良い……この戦いで……死んでも良い。お前だけは……絶対に殺す! だからお願い……この一発だけは絶対に……当たれ!!)


光の歯車(ライト・ロウェル)・弐式……彗星斬」


 彗星の如く素早い剣技が大黒天を襲う。槌でいくつかの攻撃は弾くも全てを弾くことはできなかった。


「グヌヌヌヌ……」


(このまま行けば……勝つ!)


 だが雅の勢いもすぐに尽きてしまった。一般兵の剣は雅のよりも強度がなかったため雅の剣技に剣が持たず、剣は途中で折れてしまった。


(……後少しなのに!)


「貴様ノ猛攻ハ素晴ラシカッタ……ダガ、自身ノ剣デハナイコトガ運ノ尽キダッタヨウダナ……」


(まだだ! こんなところで……終わるわけには……)


 雅は力尽きてその場に倒れてしまった。大黒天は雅にとどめをささなかった。


「我ガ直接手ヲ下サナクテモ良カッタナ……」


 雅が意識を失ってから10分が過ぎた頃、扉がゆっくりと空いた。入ってきたのは拓也である。

 大きな槌を持っている見たことの男。そして、その近くで倒れている雅。

 その2つを見た瞬間、拓哉の表情は怯えた感じに変化した。


(あ……あの男は!! まさか……!!)


「オヤオヤ……今日ハ知ッテイル人ガヨク訪レテクルナ……!! 我ニトッテハトテモ嬉シイコトダ」


「黙れ! 雅さんに何をした!!」


「何モシテイナイ……ト言ッタラ嘘ニナルガ……真剣勝負ヲシタダケダ。ソシテ我ガ勝ッタダケダ」


(そ……そんな……凜音に続いて雅さんまで……!!)


「絶対に許さない!!」


「サテ……我ニ勝テルカナ? 少年ヨ!!」


 大黒天と拓也が戦おうとしている時、雅は生死を彷徨っていた。


(私は死ぬのですね……体が1ミリも動く気が……しない……)


 その時、どこからかともなく声が聞こえてきた。


(……まだお前はこちらにくるべきではない)


(そ……その声は……凜音隊長??)


(そうだ。雅……まだこっちに来てはいけない。お前はまだやらなければいけないことが残っている)


(何も……ないと思いますけど……)


(私の代わりに拓也王子とともに、パランポレン王国の復興を成し遂げてくれ)


(と言われましても……私は元々、名もなき殺し屋……そんなことが許されるのでしょうか……)


(殺し屋と言うことは変えられない事実だが……私にとって雅は共に戦ってきた仲間だ。未来は変えられる、だから進んでくれ、雅)


 雅は少しずつ意識を取り戻してきた。

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