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王国滅亡の報復へ…  作者: 佐伯千尋
第3章 雪山決戦・本部襲撃編
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3-009 姉妹の最後の約束

 水の歯車(アクア・ロウェル)を槍に憑依させた片咲。弁財天はとても焦っていた。


(よりによって、どうして水なの? 炎が消されてしまうじゃない……まぁ、構わないわ……水で消さないほどの大きな炎を出すのみ……)


「もう1度行くわ……炎の歯車(フレイム・ロウェル)雷の歯車(サンダー・ロウェル)炎雷の協奏曲(フレイムサンダー・コンチェルト)


 再び同じ攻撃をしてくる弁財天。しかし片咲にはもう通じなかった。


水の歯車(アクア・ロウェル)・大洪水! そして、私の槍の避雷針となれ……雷の歯車(サンダー・ロウェル)・避雷針」


 片咲は自身の槍を地面に突き刺した。突き刺した部分から水が大量に溢れ出てくる。そしてその槍は避雷針となり雷を全て吸収する。


「お姉ちゃん、武器がなくなったじゃない! これで終わ……ん? 水がどんどん溜まって……まさか!」


 弁財天は急いで琵琶を弾き終わろうとしたが、時すでに遅し。槍に雷は直撃し槍と接触していた水の影響で、感電する弁財天。


(炎を消すだけのためではなく、私に雷を当てるため……)


 こちらに向かってくる片咲。走りながら何かを生成している。


雷の歯車(サンダー・ロウェル)・生成……太刀」


 細長い剣筋の雷の太刀が片咲の手元にあらわれる。なんとか攻撃をくらうまいと感電した体で抵抗しようとする弁財天。当然思うように体は動かず、片咲に斬られる。

 口から血を吹き出し、その場に大の字で倒れ込む弁財天。そして倒れた弁財天の体に寄り添う片咲。


「私は負けたんだね……お姉ちゃん。けど、お姉ちゃんに負けて良かった。最後に戦えてよかった……」


「私のせいでこんな目に合わせてしまって……ごめんね……」


「最後にお願いを聞いて……この作戦(・・・・)を失敗に終わらせて……」


「この作戦って……?」


 片咲は不思議そうに弁財天を見つめる。拓也と赤星も少し気になっている。

 寿老人が拓也と赤星と戦っている時にそのようなことを口走っていたのを思い出したが、結局何か分からず仕舞いで終わってしまったからだ。


「毘沙門天、布袋、大黒天、恵比寿の4名の幹部、そしてその部下たちは第3支部を襲撃する……それを終わらせて欲しいの……」


(いや、かなりヤバすぎるでしょそれ……主戦力みんなこっち来てるじゃん? 片咲大将、藤城中将、この2人いないだけで結構まずいと思うよ。あんまし支部のことは分からなけど……)


 すると片咲は弁財天の手を強く握った。


「分かったわ。必ず阻止してみせる!」


「ありがとう……自慢のお姉ちゃ……ん……だ……よ……」


 弁財天は片咲に感謝を述べた後、目に涙を浮かべそっと目を閉じた。握られていた手は次第に力を失いやがて、片咲の手から離れて行った。

 片咲は涙を流しながら亡くなった弁財天の首飾りを取り、自身の首につける。

 そして涙を拭き、拓也と赤星に言う。


「急いで向かうわよ、第3支部に……!」


---フォルジュロン・ホテル---


 福禄寿の鶴のおかげで、ホテルの前まで着いた藤城と草津。藤城は未だ血が止まらない。

 ちょうどそこに宮辻棟梁が前を通りかかり、こちらに近づいてくる。


「どうしたんだ? ……って、すごい血の量じゃないか! 急いで俺の店まで来い、すぐに手当てをしてやる!」


 藤城を店まで連れて行こうとするも一向に動こうとしない藤城。草津が無理矢理でも連れて行こうと手を掴むも、振り払う。


「俺は……もう痛みを感じない……行くだけ無駄だ置いていけ……」


「無駄じゃない! 諦めるなよ!」


 草津はどんな手段を使おうとも、恩師である藤城を生かしたかった。

 だが藤城は頑なに動かない。諦めかけていたその時、蛇のマークのトランプを持った奇妙な青年が話しかけてきた。


「僕がなんとかしましょうか? こちらに良い薬があるんですけど……」


 と手品のように何も変哲のない場所から注射器を取り出してきた。妙な薬を藤城の腕に刺す謎の青年。

 すると藤城はとても元気になり先程までが嘘にようにはしゃぎ出した。その青年が何を投与したのかを説明する。


「この薬は、ベスティオルと言うものです。これは体内の血液を増加させる効果を持っています」


「なるほどこれで失血した分を補充して元通りになったわけか……とても素晴らしい」


 宮辻はとても感心していた。すると草津はその青年に名前を聞いた。


「僕の恩師を助けてくれてありがとう、あなたの名前が聞きたい、ぜひ教えてくれないか?」


「僕の名前ですか? 僕の名前は椎名(しいな)琉命(りゅうめい)。通りすがりの手品師(マジシャン)です」


「次会った時、お礼をさせてください」


「お礼なんてありませんよ。では、僕はこれで失礼しますね」


 椎名はトランプを混ぜながらフォルジュロンを去っていった。草津は椎名が小さく独り言を言ったのを聞き逃さなかった。


「良い収穫ができたよ……」


(良い収穫……いったい何のことを言っているのだろうか……)


 ふと疑問に思う草津。考えていると入り口から3人が向かってきていた。片咲は藤城と草津に命令を下す。


「2人とも、急いで第3支部に戻るわよ」


「何かあったんですか?」


 藤城と草津は、第3支部がこれから襲われることをまだ知らない。

 片咲は2人に説明する。藤城は冷静であったが草津は驚きのあまり腰を抜かしてしまった。


「お……おい、急いで向かわないと……崩壊してしまうぞ……そうだ、鶴! 鶴を呼ぶんだ」


 草津が叫ぶと福禄寿の鶴がこっちへと近づいてきた。どうやら草津に懐いたようだ。


「よし……片咲大将、第3支部まで3人はこれで先に行って欲しいです。僕と藤城は傷が大きすぎて行っても戦力になりそうにないので……頼みます、大将!」


「ありがとう、草津。藤城もゆっくりと休んでくれ……2人の分も私が頑張るから、応援していてくれ」


 鶴が行くところを見守る草津と藤城。姿が消えるまできちんと見守っていた。


「さて俺たちは歩いて帰るとするか……」


「まぁ、ゆっくり帰りましょう……」


 草津と藤城は荷物を取りに帰りに宮辻棟梁の店へと向かって行った。


---逆賊討伐軍・第3支部---


「おいおい、どうなっているんだ? これは? 誰も歓迎してくれないじゃないか! どうなっているんだよ、この支部は! なぁ、なぁ!」


「まぁまぁ高緑さ〜ん。そう言うもんですよ〜。だって誰にもこのことは伝えられていないんですから〜」


「げっ、そうなのかよ! そ、そういうことなら早めに教えて欲しかったぜ、恥をかいたじゃないか……」


 高緑は顔を赤くするすると、雅と哀禅はクスクスと笑っている。高緑が扉を開けるとそこは無残な光景であった。

 すでに第3支部は襲われていたのだ。何人もの一般兵が犠牲となっていた。入り口にもたれかかっていた1人の兵士が辛うじて生きていた。

 雅がその兵士に近づき事情を聞いた。


「増援か……そいつはありがてぇ……いきなり七福神が襲撃してきて……ゲホッ……戦う準備ができていなかった……一般兵はみんな殺されてしまった……部下は少尉たちの兵士が……戦っている……幹部を……頼む……倒して……く……れ……」


 その兵士は力尽きた。雅はあることを思い出した。


(七福神……? 凜音隊長を倒したあの男がいると言うことね〜絶対にあの男だけは倒してやる……!)


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