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王国滅亡の報復へ…  作者: 佐伯千尋
第3章 雪山決戦・本部襲撃編
33/62

3-008 決断

 戦いが激化し始めてふと思ったことがある。頂上に着いた時は雪など降っておらずネージュ山からは珍しい絶景を見ることできた。

 だが、再び雪は降り始めている。片咲は、ずっとそれが頭に引っかかっていた。


(なぜ、また雪が降っているの。真子がさっき弾いていた時は雪が降らなかったのに……待てよ……さっき弾いていた時…….まさか!)


 片咲が理解した時にはすでに遅かった。弁財天はあることを始めた。


炎の歯車(フレイム・ロウェル)・憑依……火炎の響きよ……雷と共に混ざりあえ!」


「真子! 君はやっぱり、あの後2つ目の歯車(ロウェル)を使えるように鍛錬していたのか!」


「そうよ! 全てはあなたに勝つため、凄くしんどかったわ! また初めから歯車(ロウェル)を習得するのにどれだけの歳月がかかったか! お姉ちゃんは、2つも使えないもんね? 使ったら、規則を破ることになって、退軍になってしまうもんねぇ……?」


(5年前とは全然違う……どうしてこんなにも力を手に入れた?)



---8年前---


 私と真子は逆賊討伐軍に入隊するために試験を受けに行った。その中には今の大将の政宗と嵩玖……それに私の尊敬する凜音もいた。

 試験が始まるまで会場で真子と話していると、凜音に話しかけられた。


「水城凜音と言います。今回の試験、共に最後まで残り一緒に討伐軍に入りましょうね」


 そう話しかけられた時、とても嬉しかった。真子もあの時はとても喜んでいた。

 試験はとても難しかった。でも約束のために私たちが頑張った。そして私たちは合格した、凜音も当然の如く合格していた。後から聞いた話によると、最初の志願者は500名程いたが最後まで残ったのは、私と真子、凜音、政宗、嵩玖。その5人も含め、合計30人だけであった。

 厳しい試験を潜り抜け残った30人。だが、ほとんどの物がすぐに逆賊に負けてしまい、1年未満で生きていたのは7人であった。

 1年も経たずして、政宗や嵩玖は中佐に昇格していて凜音も少佐になっていた。私と真子は中尉となり、残りの2人も着々と階級を上げていった。

 でも、私たち姉妹の関係はここから悪くなっていった。私たちは姉妹は顔がそっくりであるため、よく間違われる。それが原因であることが起きてしまった。

 私と真子が第3支部でともに大尉の時、1人の中型逆賊を真子が倒した。けど、それを見ていたその時のリーダーは私が倒したと勘違いして、後日私の昇格を報告した。これには、真子も流石に抗議しに行った。


「中型逆賊を倒したのは私です!! どうして、姉の真帆が昇格になるんですか!!」


「中型逆賊を倒したのは片咲真帆と聞いているぞ。早く出世したい気持ちはわかるが、嘘はよくない」


 だが結果は変わらず戦わずして私は昇格した。私はあの時は地位の欲しさにラッキーと思っていたため、真子が倒したことを言わなかった。その時から真子に私は恨まれていた。

 事件が起きたのは、5年前だった。この時に残りの2人のうちの1人は戦死した。政宗や嵩玖は中将になっており、凜音はこの時には退軍をしていた。私は中佐で真子が少佐の時である。

 真子が率いていた部隊が、ネージュ山でいきなり通信が途絶えたのであった。第3支部で急いでネージュ山に向かえたのは私だけだったので、私は急いで行くことになった。


(真子たちの部隊の通信が途絶えたのは頂上! 待っていて真子……! どうか、死なないで……)


 私の祈りが通じていたのか、真子は生きていた。ただし妙な部分があったのだ、傷を一切負っていない。

 真子以外の隊員は顔面粉砕や部位損傷。酷いものはバラバラにされていたのにも関わらず、なぜか1人だけ生きている。

 私は真子の元へと駆け寄ると、理由はすぐに分かってしまった。隊員を殺したのは、真子自身であったからだ。


「真子……! あなたは一体何をやっているの!」


「お姉ちゃん……見た通りだよ。私はね、姉妹の区別もつかない逆賊討伐軍なんていらないと思うんだ。だから、逆賊になることにしたの……だから、お姉ちゃんも殺してあげる!」


 真子はいきなり私に剣を刺してきた。私も愛用している自身の槍で抵抗する。この時2人の右頬に、それぞれの武器が刺さり、傷ができた。

 そして、私と真子が次の攻撃を仕掛け用としたその時だった。2人の間に炎の境界線ができた。


「戦いをやめよ! 片咲真子!」


 厳つい顔をした炎で燃えている三叉戟(さんさげき)を持った男が私と真子の戦いを中止させた。その男に跪く真子。


「貴様は、もう十分戦ったのだ。これ以上戦わなくて良い。本拠地に戻るとするぞ。福禄寿!」


「ははっ、毘沙門天様」


 福禄寿と呼ばれた老人が鶴を呼び、真子を含めた3人は鶴に乗って行った。

 真子は私に捨てゼリフを吐いて飛んで行った。


「命拾いしたね……お姉ちゃん!」


 それから5年間、一度も会うことはなかった。逆賊討伐軍の報告書には片咲真子のチームは壊滅させられて生き残った者はいなかった。

 そう書かれてこの事件は幕を閉じた。



(会っていない間の5年間、七福神に特訓してもらっただけであんなにも成長がするものなの……?)


「そろそろ終わりにするわよ、お姉ちゃん! 炎の歯車(フレイム・ロウェル)雷の歯車(サンダー・ロウェル)炎雷の協奏曲(フレイムサンダー・コンチェルト)


 再び琵琶を弾き始める弁財天。雷雲が上空に再び表れた。変化がないため異変に感じる片咲。

 すると炎の柱が地面が噴出をし始めた。一定間隔で5つの炎の柱が不規則な場所に現れる。片咲は上空の雷を避けながら、地面からの炎も避けていた。琵琶を弾きながらその光景を傍観する弁財天。彼女はご満悦な表情である。


(もう……良いのかしら……)


 片咲はふとあることをまた思い出す。



---3年前---


 逆賊討伐軍の大将になった時である。私は挨拶しに行こうと各支部を回って行っていた。


(政宗のところも終了! 後は第8支部の嵩玖のところだけだね……)


 急いで第8支部まで走って私は向かった。そして嵩玖がいる大将室をノックして私は入った。嵩玖はとても驚いていた。


「真帆じゃないか! 君も大将になったんだね。おめでとう!」


「ありがとう、嵩玖! 大将になったという挨拶に来たんだよ。今日は……」


 と言いつつ私は浮かない顔をしていた。それに気づいた嵩玖が私に聞いた。


「何か、私に言うことがあるのかい?」


「うん……実は……」


「………! それを本気で言っているのか!」


「本気じゃなかったら、こんなこと言わないわ! 私は本気よ、覚悟はもうできている」


「……わかった。それを引き受けよう」



(もう……覚悟を決めるしかないね……まぁ、元々、あの事件が起きた時からこのことは考えていたし……)


 深く溜め息をつく片咲。そして、にこりと笑いながら弁財天に言った。


「ほーーんとうに! 世話が焼ける妹だわ! でも……あなたが逆賊になったのは私のせい……たがらその償いとしてあなたを私は倒す!」



(実は嵩玖、水の歯車(アクア・ロウェル)を教えて欲しいんだ。良いかな?)



水の歯車(アクア・ロウェル)・憑依! 私の槍よ、水の力をてにいれよ!」


 片咲の槍に水の力が加わった。それを見ていた赤星と拓也。2人とも驚いていた。


(歯車(ロウェル)を2つ使えるだと? そんなことができるのか?)


 赤星は片咲の今の行動にとても驚いていた。しかし、拓也は異なる。


(片咲さん……歯車(ロウェル)の2つ使用って……退軍になるんじゃ!!)


 もちろん、琵琶を弾いていた弁財天もあまりの驚きで琵琶を弾くのを一旦やめてしまう。


「は……はは……お姉ちゃん。正気なの? 逆賊討伐軍の大将だよ? あなたの今の大将と言う地位はいらないの?」


「地位なんていらないわ。昔はこの地位が欲しくて頑張っていたけど、結局、欲しさのあまりに私は大切なものを失ってしまった……なら、こんなものはいらない。さぁ……弁財天。決着をつけようじゃない!」 


 




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