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王国滅亡の報復へ…  作者: 佐伯千尋
第3章 雪山決戦・本部襲撃編
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3-007 多重人格の青年

「拓也くん、僕たちはとりあえず二手に分かれて、左右から攻撃を始めよう。」


「わかった。行くよ……」


 赤星と拓也は同時に二手に分かれた。しかし、これには寿老人は焦っていなかった。


「我には鹿がいるのだぞ……? 二手に分かれようとも両方に攻撃ができるから意味はないぞ……?」


 鹿の口が拓也の方を向き、寿老人の杖は赤星の方を指していた。だが、次の瞬間……


「残念だが……あなたが乗っている鹿には消えてもらう……炎の歯車(フレイム・ロウェル)・火炎放射」


 赤星は剣を持っていない方の手で炎を手から出す。逃げる間も無く、寿老人の鹿は溶けていく。降ってくる雪も全て赤星によって溶かされ地面に積もった雪も全て溶けた。

 鹿がいなくなったことによって、10m上から落下する寿老人。その間に一気に間を詰める2人。


「この程度で、負けるわけには行かないのじゃよ! 

氷の歯車(アイス・ロウェル)氷の壁(アイス・ウォール)


 赤星と拓也が近づけないように妨害をする寿老人。だが、赤星には関係がなかった。


炎の歯車(フレイム・ロウェル)地獄の業火(インフェルノ・ヘルファイア)


 氷の壁は赤星の山火事になりそうなほどの威力の炎によって、生成されて間も無くすぐに粉々になり結晶となって消えていった。勢い衰えずどんどん向かってくる赤星。


(充も大胆だなぁ……さっき雪を溶かしてなかったら大惨事になるところだったぞ……あんまり、加減をさらなさそうだから気を付けないと……)


 「クソッ……クソォォォォォ……!!」


 焦って適当に杖を振る寿老人。だが、氷の歯車(アイス・ロウェル)はもちろん起動せず赤星に杖の持っている手と両足を斬られた。その場に倒れ込む寿老人。急いで顔を見つめる赤星。


(何をしているのだ……充は……)


(両方黒……こいつは僕の目当てではない……もう用無しだ……)


 赤星は溜め息を吐いた後、拓也に聞いた。


「拓也くん……僕がこの人にとどめをさして良いかい?」


「全然、構いませんけど……」


(何をするつもりだ……?)


 赤星の雰囲気がガラリと変わった。寿老人が命だけはと言う顔で目を瞑り祈っている。それを冷たい目で見下している。


「寿老人……お前には懺悔をしてもらう……今から僕が許可を得るまで喋るな。そして……


 赤星は自分の服のポケットに入っているフォルジュロン特製の手拭いを寿老人の目に巻きつける。

 そしてまず、杖を起動させないように炎の歯車(フレイム・ロウェル)で燃やし、寿老人を持ち上げて山の崖の方まで歩いていく。


「うわっっ……な……何をするつもりだ!」


「喋るな……と言ったはずですけど? まぁ、構いません。あなたには落ちてる(・・・・)間に後悔をしてください」


 と言った瞬間、赤星は崖から寿老人を投げた。落ちていく寿老人。拓也はあまりの驚きように声が出なかった。


(この人は……普段は良い人そうに振る舞っているけど……全然そんなことなかった。この人は鬼だ……)


 拓也には聞こえていなかったが、赤星は寿老人を落とす時にあることを呟いていた。


「お母さん……あなたを落とした逆賊はこいつではありませんでした……見つけ次第、そちらへと連れて行きますのでもう少し……待ってくださいね……」


 赤星は寿老人を始末した後、にこりと笑って拓也の方へと近づいてくる。


「これで任務は成功したね。君のおかげだよ! ありがとう」


「いやいや、充のおかげで勝てたと言っても過言ではないよ。こちらこそありがとう」


 少し怯えながら話をする拓也。いつもより早口になっている。目の前の一連の行動を見ると誰だってそうなる。


(なぜ、そこまで一瞬で性格が変わるんだ……教えてくれ充……君に一体何があったのだ……)


 赤星は拓也を頂上に連れて行こうとする。もちろん拓也は充の言う通りに頂上へと進んでいった。それにもし、反抗すると味方でさえ殺してしまう可能性は赤星なら十分にあったからである。


---ネージュ山・頂上---


雷の歯車(サンダー・ロウェル)・憑依……私の槍に聖なる雷よ、来い!」


「カッコいいよお姉ちゃん!!」


 弁財天の言い方はとても煽っていた。まるで自分の方が格上のように話している。


「じゃあ私も憑依させてもらおうかしら……! 雷の歯車(サンダー・ロウェル)・憑依……我が琵琶に至高の音楽を添える力となれ!!」


 弁財天の琵琶が光り輝いている。そして琵琶を鳴らすのに必要な撥を持ち始める。


雷の歯車(サンダー・ロウェル)・壱式……稲光の交響曲(ライトニング・シンフォニー)


 頂上の雲行きが突然悪くなり、激しい稲光がたくさん落ちてくる。片咲は頭上で持っている槍を勢いよく回し、落ちてくる雷を槍で全て吸収する。

 だが弁財天が鳴らしている間、雷が止むことはなかった。寧ろ当たらないことに苛つき始め、最初より強く弾き始めた。そのため雷の強さは格段と大きくなっていた。


(まずい……このままでは、槍が雷を溜めれる量を超えてしまって、私に負荷がかかってしまう……!)


 雷は勢いが衰えない。捨身の覚悟で一歩ずつ槍を回しながら弁財天の方へと進んで行く。

 弁財天も琵琶を弾きながら、片咲の方へと歩いてくる。2人の距離はどんどん近づいてくる。

 2人の距離がゼロ距離になりそうな時、片咲は槍を弁財天の心臓に目掛けて突こうとし、弁財天は弾きながら琵琶の先で心臓を突こうとした。

 だが片咲が槍を突こうとした時に、弁財天は演奏をやめていなかったので雷を直撃することとなった、片咲は自身の体に雷の歯車(サンダー・ロウェル)を憑依をしていなかったので、大きな雷が当たりその場に倒れ込む。そのため弁財天の琵琶は心臓に当たらず今度は左頬に傷をつけることとなった。


「ちっ……だけどお姉ちゃん……これで終わりよ! 死になさい!」


 もう一度、琵琶で心臓を突こうとする。だが、また邪魔が入った。


炎の歯車(フレイム・ロウェル)炎の壁(フレイム・ウォール)


「次から次へと……誰が邪魔するのをするの!」


 立っていたのは2人の影、先ほど9合目で寿老人と戦っていた赤星と拓也である。


「片咲さん……応戦に来ました。」


 しかし、片咲の顔は不機嫌である。そして2人に大声で行った。


「あなた達、今は戦わないで頂戴!! これは私と弁財天の1対1の勝負よ。決着が着くまであなた達は待っていて……良い? これは大将命令よ。」


 充はどこか不機嫌そうであったが渋々、了承した。拓也は無論、従う以外の選択肢はなかった。


「ありがたいわ、お姉ちゃん! わざわざ勝てるチャンスを放棄してまで私に負けに来てくれるなんて!」


 弁財天に対して片咲は言う。


「私はあなたの姉として、妹の悪いところを直してあげるだけよ。」


「やっぱりお姉ちゃん。そう言うところは変わらない……だからお姉ちゃんは嫌いなのよ!」


 2人の戦いは激化し始めた。

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