1-002 訓練場を目指して……
本日は2話連続投稿です
玉座から急いで出る、凜音と拓也。
しかし拓也は固まっている状態である。一階の入り口を出たところで呪を解除した。
「なぜ、こんなことをしたんだ。僕は父上を助けたかった!」
すると、凜音は拓也の頬を思い切りビンタした。かなり強烈な音が響き渡る。
「愚か者。王子と言えど自分の無力さをいい加減認めてください! あなたの無駄死だけは許されないことなのです。それに安心してください、国王はそんな簡単に死にません!」
凜音に言われて少し落ち着いた拓也。
しかし、拓也には疑問があった。
「この街は崩壊していっているが……どこで休息などを取るの?」
「近くの森に兵士の隠れ訓練場があります。そこの小屋で1日過ごしましょう。そしたら、近くにランコントルと言う街があります。そこへ向かいましょう。とりあえず、隠れ訓練場へ……」
と話している時に、まだ残っていた逆賊が拓也達を襲いかかる。
「下がっててください...! 氷の歯車・生成...機関銃!」
機関銃の照準を逆賊の心臓に合わせる。銃口から出た氷の弾丸が、逆賊の心臓を次々と貫いて行く。襲いかかってきた逆賊達は何とか全員一掃出来たようだ。
「急いで、燃えていて熱いかもしれませんが……城下町を抜けますよ……!」
「待ってくれ……あそこにいる子を助けたい……」
拓也の指の方向の先には、逆賊から逃げている少女がいた。年は16.17歳ぐらいと拓也と同じぐらいの年齢だ。手にモップ的な物を持って戦っている。
おそらく、拓也と同じで歯車を使えないのであろう。
「やめて……こっちに来ないでぇ……」
「へっへっ……嬢ちゃん! 安心してくれって……すぐ殺してあげるよぉぉ!!」
今にも殺されそうな雰囲気が漂う。すると凜音が向かった。
「へっへっ! この王国の生き残りがまだいたのかい。今楽に殺してあげるから……あ!?」
一瞬にして凜音に斬られた逆賊は即死したようだ。
「1人の雑魚相手に、歯車など使うわけなかろう。それにしても貴様、怪我はないのか……?」
「は、はいぃ……! 大丈夫です……凜音さん、ありがとうございます! 私……あの昔、あなたに助けてもらったんですけど……覚えてませんか?」
「さぁ……助けてきた者の名前をいちいち覚えている訳がないだろう?」
「そうですよね……では失礼しまs...!」
「待つんだ、1人では危ないだろう! 私たちについてくるんだ!」
「え……でも……足手まといになるだけだし……」
「何を言っているんだ? 貴方は市民だろ? 市民を守るのが私たちの仕事なのだから、足手まといなどではないぞ。さぁ、早くこっちに……!」
「はい!」
少女は拓也と凜音と共に隠れ訓練場を目指す。途中で追いかけてくる逆賊は一切いなかった。
おそらく、ほとんど全滅したのだろう。
---パランポレン王国付近の森・隠れ訓練場---
3人は訓練場の本部の扉を開けると中には2名ほど隠れていた。
1人は王国護衛騎士団の団服を着ており、もう1人はごく普通の青年だった。少し傷を負っている。
「凜音隊長、お疲れ様です! 私、王国護衛騎士団一般兵の平井です。負傷した住人の救出をしていました!」
「うむ、賢明な判断だ。ご苦労だ、平井一般兵。そちらの負傷人、名前は?」
「あわわっ、僕ですか? 僕の名前は枚方輝。逆賊討伐軍の兵士です……今日は休暇をもらって地元に帰ってきていたのですが……まさか、こんな目に会うとは……トホホっ。ついていないですねぇ……」
「ほう……逆賊討伐軍に所属しているのねぇ。そして休暇で偶然いたと! それは頼もしい。次に、さっきのモップ女子。名前は?」
女は急に当てられて少々困惑していた。
「はっ...はいっ! 私はあの城下町に住んでいた、水城遥です」
彼女の名前を聞いた瞬間、凜音の顔が少し変わった。何か引っかかる所でもあったのかと拓也は少し疑問に思った。
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「凜音、お前はどこかへ行け! 恥さらしめ……二度と帰ってくるな!」
「言われなくても、出て行ってやるよ! 二度と帰ってくるか、こんな所!」
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(まさかな……そんな偶然があるわけがない……)
「申し遅れた。私の名前は、不二宮凜音と申す。王国護衛騎士団の隊長だ。そして私の右にいる方が、パランポレン王国の次期国王である。黄桜拓也王子である。まぁ……みんなほとんどのものが周知済みだから、説明など要らなかったかな。とりあえず、今日は夜遅いから寝るとするぞ。」
5人は訓練場に併設されている仮眠室で寝ることにした。みんな寝たように思われたが1人だけ寝ていないものがいた。
その者は、訓練場を出ようとしていたが扉を開けようとした時、剣の先が首元にあった。剣を横に振ったら間違いなく首がはねるぐらいの近い距離である。
「枚方とか言ったなぁ……外に出て何をするつもりだったんだ?」
「いや……ボスに連絡しようとしてまして……」
「ならボスの名前を言うんだ。ここ区域の支部の大将ぐらい知っているよなぁ……?」
「くそぉぉっ!!」
枚方が抵抗しようとするも、首の横に剣があったためすぐに首を斬られた。
斬った勢いで血が凜音の顔に飛び散ったが凜音の表情は一切変わることはなかった。床には枚方の大量の血が飛び散っており、首は転がっていた。
「逆賊討伐軍に休暇なんてあるはずないだろ……母が死んだときでさえ、忌引も取らせてくれないあのクソみたいなまとまりは!」
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「どうしたんだい? 凜音大佐。いきなり辞めるなど言い始めて?」
「母と弟たちが逆賊に襲われました。忌引で休むと言っても、話を聞かない残念な人たちばかりですので……」
「ふっ……やめたきゃやめろ! お前みたいな雑魚などいらんわ、はっはっは!」
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「どいつもこいつも何も知らないで、勝手なことを言うんじゃねぇぇぇ!!」
怒りで我を忘れたのか、床に転がってた枚方の首を蹴り飛ばした。
気がつくと朝日が上がってきている。夜が明けたのだ。
凜音はこの現状を見ると善良な市民を殺した殺人犯と勘違いされると思い、急いで処理をした。
死体は森の近くに穴を掘り埋葬した。おそらく二度とバレることのない場所である。
少ししてから拓也たちが仮眠室から出てきた。
「凜音、おはよう。また朝も散歩していたのかい?」
「おはようございます、王子。準備をしてください、急いでランコントルへ向かいますよ」
「わかった、急いで準備をするぞ。後、起きてから気づいたんだけど……枚方さんは、どこに行ったのだ?」
「朝、地元に帰ると言ってたぞ。お礼を言って帰って行ったぞ。」
(本当のことは言えないよなぁ……まさか、逆賊とは思わずに助けた平井もかわいそうだからなぁ……)
そう待っていると、拓也たちは全員準備が終わって待っていた。
「では、ランコントルへと向かいますよ!」
拓也、水城、平井、凜音の4人は近くの小さな町のランコントルへと向かうのであった。