2-014 鏡花水月
遅くなりました。二話目です!
「あぢぢぢぃぃぃぃぃぁぃぁぃ」
今にも悶絶しそうな声で苦しんでいるエメラルド。約6000度近くのマグマがエメラルドの臓器を焼き尽くしていく。
「かっ……俺の場所……何でわかった……ぐわっっっ」
「君が煽ってた声を頼りに近づいて行ったのさ。それに君は真空世界を使っていなかったからね。いや……使えなかったんだ。真空状態では風は吹かないからね……だから、攻撃する時にわざわざ解除をしていたんだ。……と言っても死人には、この声も届かないか……」
エメラルドの臓器はマグマにより、全て焼き尽くされ彼は事切れてしまった。
そして曉月の"鬼丸"も玉鋼となって全て溶けてしまった。
「どんな理由であれ1つの地区の大将として、負けるわけにはいかないんだよ。それが例えどんな犠牲を払ってでもな……」
命無きエメラルドにそう言うと曉月は、みんながいるところへと戻っていったのだ。
---火山内部・大和サイド---
一方、曉月がエメラルドと戦っている時、大和はダイヤモンドと戦っていた。
「サファイア様を侮辱したお前はこのダイヤモンドが絶対に許さない!」
「はいはい、別に許さなくても全然構わないし、私が言ったことは紛れもない事実ですから。じゃあ、討伐するとするか……水の歯車・生成……剣」
大和の手には水で作られた剣が現れた。その剣を見た瞬間、ダイヤモンドの顔がとても落ち込んでいた。
「貴様のたった今、生成した武器で私の体が斬れると思うなよ……私は"宝石十二の王"で最も守りに徹している男だぞ」
「守りに徹しているだけで攻撃はできないんだろ? ふっ、ダサいやつだな」
「まぁ、どっからでもかかってこい……防御の歯車・憑依……我が体よ鋼鉄の鎧となれ……」
ダイヤモンドは歯車を憑依したようだが、一見様子が何も変わらなかった。
(こいつ、本当に歯車を憑依したのか……?)
大和は先ほどのダイヤモンドの憑依するまでの行動を疑った。本来であるならば憑依が完了したならば、雰囲気が変わるためすぐにわかるのである。
しかし、大和にはどこにでもいるような普通の人がただ立っているようにしか見えない。とりあえず攻めていく大和。生成した水の剣でダイヤモンドを斬ろうとするが、水の剣はダイヤモンドに触れた瞬間弾けてしまった。
(なんでだ……生成したとは剣とは言え、こんな潰れ方今までなかったぞ……)
再び水の剣を生成してもう一度攻撃を仕掛けるが、先程と全く同じように、水の剣は弾けてしまったのだ。
「はっはっはっはっ。大したことないな貴様。これが大将だなんて……逆賊討伐軍も大したことないんだろうなぁ!」
「お前が逆賊討伐軍の何を知っているからって言って調子になっているんだ?」
「うるさいっ。そもそも自らの攻撃が一度も当たっていないのに、よく強気でいられるな」
「うるせー。本気出していないだけだよ。私は出来る限り楽して勝ちたい性分なんでね」
(とは言いつつも今回ばかりは少し本気を出さなければ勝てない可能性が大きいなぁ……まさか自分の生成した剣で斬れないとは……)
大和はダイヤモンドに問う。
「貴様の憑依、いったいどう言う原理だ?」
「敵にわざわざ自分の情報を言うやつなどいるわけないだろう?」
「まぁ……確かにそうだな……。まぁ、名前的にダイヤモンドの硬さを憑依してるんじゃないかと予想して戦うことにしよう」
「べ……別に……名前関係ねーし!ダ……ダッ……ダイヤモンドなんて、ひょ……憑依してないんだからっ!?」
(こいつ、嘘とても下手くそな上に、気持ち悪いなぁ……まぁ……こいつの憑依はダイヤモンドと言うことが分かっただけでも十分だな)
「水の歯車・憑依……遊園なる水よ我が剣と共鳴せよ……」
「ほー……先ほどの剣とは全然違うことが、よーく分かるぞ。やっと私が本気を出さないと勝てないと言う相手と言うことが分かったかぃ?」
ダイヤモンドの言葉に対して大和は呆れて溜め息を吐いていた。
「はぁ……あのですねぇ……逆賊討伐軍のある規則さえなければ、一瞬にして貴様如き簡単に倒せるに決まっているだろう……?」
「ほぉ……う。その規則とは一体何ですかねぇ」
「貴様、さっき言っていただろう? 敵に教える情報など一切ないってね……」
「やっぱり、俺はお前のことが嫌いだよ。大和ぉ!」
「はいはいそうですか……なら、そろそろ決着をつけるとするか……水の歯車・壱式……鏡花水月……」
「どんな技でも、この防御の歯車の憑依型の前では無力ぅぅ!!」
(私は……とある幻を見ていた……私がサファイア様を倒し"宝石十二の王"の大将になると言う夢だ……その夢は、とても気持ち良い夢であり現実に起こって欲しいと思ってしまった。私だってずっと"宝石十二の王"のNO.3だなんて嫌に決まっている。けど勝てない……ルビーとサファイアには到底勝てなかった……俺は出世がしたかった。もっと有名になりたかった)
「あぁ……なんと儚いんだぁ。この世界はぁ……!」
気づけばダイヤモンドは胴体と脚の真っ二つに斬られていた。
「ふっ……見事な一撃だ。お前のことは大嫌いだが……お願いがある……。サファイアとルビーを倒してくれ……。"宝石十二の王"を壊滅させてくれ……それと、最後に気持ち良……い夢を……あり……が……t……」
涙を流しながらダイヤモンドは息を引き取った。大和は久々に真面目に戦ったためか、いきなり脱力感に襲われる。
「儚い夢は十分に見れたかい……ダイヤモンド……」
(久々にこの技使ったがすごく神経を使うからなぁ……しんどいなこれ……とりあえず糖分が欲しい……)
大和は近くにあった大きな岩まで行き、少し休憩を取ろうとした。が……しかし、
「熱っ!? なんだこれ!」
よく見ると、岩がどんどん赤くなっていく。少しずつ至るところからマグマが溢れてきている。
すると、雅が内部へと入ってきて、火山が噴火したことを伝えにきた。
(寝れないじゃないか。私は十分戦ったではないか。休みをくれ。この仕事ブラックだな。まぁ、報酬金高いし……辞めれないんだけどな……)
「さぁ……元の場所に戻るとするか……早く残りの2人を倒して、本部に戻るぞ〜っと」
(あまり私はこういう性格ではないが……ダイヤモンド……お前の願いを叶えてやる……。まぁ……それが仕事なんだけどな)
---火山内部・拓也サイド---
「大空さん……僕は逆賊討伐軍として、あなたを必ず倒します……!」
「へぇ……面白いこと言うね。あなたは私に勝てることができるかしら……」
「拓也王子! 私も援護しますがルビーとはあまり相性が良くないですので、あまり期待はしないでください」
こうして、ルビーと拓也の戦いが始まった。




