2-012 最後の4人
読んでくださりありがとうございます!!
火山の中へ入るとドームのような大きさであった。3人が座っていて1人が縄で体を縛られた状態で横になっている。
近くにあった岩陰に身を潜める4人。
座っている3人は全員男で左から青髪、緑髪、銀髪である。縛られているのは女でどこかで見たことがあるような後ろ姿であった。
青髪の男が縛られている女に質問を行う。
「1つ聞こうではないかルビー。なぜ追手から逃げた……? 貴方をわざわざ連れ戻してあげると言う私の考えを踏みにじったのですか?」
「そ……そう言うのではないわ! ただ……久々に街に出掛けてみたかったのよ……」
「そうかそうか……では、追手の証言はどう説明する? 聞いた話によると逆賊討伐軍に助けられた……だとか……?」
「それは……私は頼んでないわよ!」
拓也は今の青髪の男と縛られている女の発言で女の正体がわかった。
「大……空……さん……?」
「……バカ、声がでかいぞ! あ、俺の方が大きかった!」
(曉月さんの方がでかいじゃん……)
拓也の声は聞こえていなかったが、曉月の声が大きかったため、4人に聞こえていたようだ。
青髪の男は岩陰に潜んでいる4人に声を出した。
「そこにいるのは、一体何者だ……名を挙げよ……」
青髪の男の声に対して岩陰から出て来たのは、曉月と大和だけだった。
「黄桜王子、そこで少し待機しているように! 凜音も隠れていてくれ。もしもの時は頼む!」
コクリと頷く凜音。
「逆賊討伐軍第7地区大将・曉月政宗だ!!」
「同じく第8地区大将の大和嵩玖である。貴様らが
"宝石十二の王"の残りの4人だな?」
座っていた青髪の男は立ち上がった。
「いかにも。我が名はサファイア。"宝石十二の王"の大将なり。私たちを討伐しにでも来たのか?」
「それ以外に理由があると思うか! 早速だが、私と相手してもらおう!」
と剣を鞘から抜き、猪突猛進に走っていく曉月。
「相手をしてあげろ、エメラルド……久々の強敵だ、あまり油断はするなよ」
「あいあいさー!!!」
とエメラルドがサファイアの前へと現れた。
「俺が相手だ、曉月政宗!!」
「面白い……受けて立とう!」
そのまま、エメラルドと曉月の戦いが始まった。
「さてエメラルドは政宗に任せるとして……俺の相手は誰だい?」
「ダイヤモンド……行け……」
「仕方がない……行くとしよう!!」
「やれやれ、誰とは言わないが……大将が自ら戦わないなんて……部下はしんどいよな……」
まるでサファイアのことを指しているかのように、大和は煽った。
すると、ダイヤモンドはいきなり近づいてきた。
「大将のことをあまり悪く言うなよ……!」
「ふふっ……誰のこととは言ってないけどね……やっぱり心当たりしかないんだ……」
どんどん煽っていく大和。ダイヤモンドの怒りが沸点を達した。
「私と貴方の格の違いを見せてやろう!!」
「へっ……望むところだよ……」
サファイアは大きな声で言った。
「まだその岩のところに隠れているのはわかっている……早く出てくるんだ……」
凜音はどちらにせよ、最後にはバレると言うことは分かっていたので岩陰から出ようとした時、凜音より早くに岩陰から拓也が出てきた。
「大空さん……君、"宝石十二の王"の1人だったの……?」
「そうよ……何か悪い理由でもあるかしら?」
「じゃあ、あの時怯えた感じだったのは.……」
「貴方が逆賊討伐軍だったからだよ。もしかしたら、私の顔、知っていたかもしれなかったからね……あの時はポンコツで助かったよ……」
「くっ……決めたぞ……僕は必ずあのルビーを自分の手で倒す……!!」
---エーデルシュタイン島付近---
「アノ島ガ……指定シテキタ島カ……」
とある巨体の男がボートを漕ぎながらやってきた。拓也達が上陸したところの逆の場所から上陸した、辺り一面が砂浜である。
「水城凜音……必ズ仕留メル……」
巨体の男は自身が愛用している槌を持ち、森の中へと入って行く。
---エーデルシュタイン島・火山麓---
中に入らなかった5人は沢山のサファイアの部下に囲まれていた。数はおよそ200人程度。
その部下の1人が5人に対して言う。
「お前たちは、何をしているんだ? 私たちは用事があるんだ。通させろ」
それに対して、先ほどリーダーに任命された雅が優しく答える。
「え〜っとですねぇ〜。とある方から命令をされていまして〜、誰も通すな。と言われたますので〜。残念ですが……諦めてくださ〜い」
「なら、力づくでも通させてもらうぞ。言っておくが怪我する前に降参するなら今しかないからな」
「その言葉、そっくりそのまま貴方たちにお返ししますよ〜。では、駿河さん。お願いしま〜す」
「任せてくれ……大地の歯車・地殻変動!」
この火山の麓あたりの地面がとても大きく揺れ、形が凸凹になった。5人は辛うじて耐えているが、部下の方は鍛錬がきちんとなっていないのか、全員立つことができない。
とある部分では地割れが起き、そこに挟まって身動きが取れない人たちもいた。先ほど雅に交渉をしていた男のところに雅は向かっていく。
そして笑いながらこう言った。
「先ほどまでの威勢はどこに行ったんですかぁ〜。とんでもなくダサいですねぇ〜。だから強くならないんでしょう〜」
すると植松が遥の元へ行き、耳元で囁く。
「なぁなぁ、茜沢さんって元からあんなにも捻くれていたのかい……?」
「いや……そんなことはなかったと思います……だって、雅さんって確か……」
その時だった。大きな音が島中に響き渡る。中央に聳え立っていた火山が噴火したのであった。
植松の顔色が悪くなる。
(俺の地殻変動のせいかな……)
とても先程の行為を気にしているようだ。すると臨時リーダーの雅が指示をする。
「みんな〜。先に行っておいて〜。曉月さん達を私が呼んでくるからその間に〜。後、そこにいる人たちは置き去りでいいよ〜。じゃあ、よろしく〜」
雅以外の外で待機していたメンバーはすぐさま高緑たちが待つ船のところまで走って戻っていく。
雅は火山の内部へ向かおうとすると、サファイアの部下達が命乞いをし始めた。
「お願いしますー!! 命だけは助けてください!」
「こんなところで、死にたくないー!!」
部下達は必死である。それに対して、雅は笑って答えた。
「見苦しいですよ皆さん。あなた達が殺してきた人達もみんな死にたくなかったはずです。でも君たちは……それを裏切って殺人という行為をしました。その天罰がきっと今あたったんでしょう……なので、大人しく死んでください。そして天国で被害者に謝りなさい……!」
いつもは優しい感じのの口調で物事を言う雅が、珍しく真剣に話した。
そして、雅は火山の中へと入っていく。入っていく時の後ろ姿はいつもとは違う雰囲気だった。
何を考えながら行ったのかは本人以外にはわからない。
(私も……人のことは言えないけどね……)




