2-011 悲しみを糧に……
連続投稿の2話目です!!
いつも読んでくださり、ありがとうございます!
(最初から全力で挑むのはちょっと危険すぎるか……小手調べにまずは生成型で試してみるか……)
「氷の歯車・生成……剣」
凜音はまずは自分の持っている剣ではなく、自ら作った剣で戦うことにした。
「己の真剣で戦わないものなど、笑止! 防御の歯車・障壁!」
氷の剣でパールを切ろうとする凜音。パールの障壁には勝てず氷の剣が折れてしまった。
「そうか……君の硬さはよくわかった……けれども、大したことないな! 私の真剣では君を斬れそうだ……」
「ふっ……いつまで強気でいるつもりだ……大人しく負けを認めろ……」
落ち着いているパール。凜音は熱い闘争心を燃やしている。
こいつだけは斬りたい……と。そう言う感じだ。
「氷の歯車・憑依……凍てつく氷よ……我が剣に来い!」
「ほほーう。これが貴様の真の実力と言うわけだな。面白い、面白い! 我を斬ってみよ」
大きな声で笑っているパール。パールのことを見て、笑っている凜音。
「っ……何がおかしいと言うのだ!」
「遺言は、それで良いのか? 氷の歯車・壱式……氷結居合一閃斬り……!!」
気がついたら、滝に打たれている凜音。パールは障壁ごと斬られていた。
あまりの一瞬の出来事で周りは呆気に取られる。斬られたにも関わらず、パールは何故か笑って倒れていった。
「見事なり……貴様の剣を少しばかり舐めていた自分が愚かであった……」
「普通に君の障壁は凄かったよ……多分使い方をあまり熟知していなかっただけ。今回は私が勝ったが……次やったらどうなるだろうなぁ……」
「はぁ……はぁ……次はないですよ……グハッ……」
パールは倒れた。静かに黙祷を捧げて3人は火山の方へと向かって行った。
---エーデルシュタイン島・中央エリア---
このエリアだけ、一本道となっている。火山への道となっているようだ。
その道を歩いていく大和チーム。
「このまま火山に進めると思いますか? 僕、絶対誰かが邪魔をすると思うんですけど……」
呆れた口調で駿河が答える。
「そう言うのを言うんじゃねーよ。フラグが立ってしまうだろ! なかなか折れないんだぞフラグは」
「おー、お前たちすごいな! フラグ通りに誰かが待ち構えているぞ」
やってしまった感が否めない松平。やってしまったなぁと感じてしまう駿河。
立っているものは、若き青年。メラメラ闘争心を燃やしているのが見た目でわかる。
まるで挑戦者のことを腕を組んで待っているチャンピオンみたいな風格だ。
「俺、ガーネット! お前たちが強いのが見た目でわかるぞ!!」
「あー、はいはい。そーですかぁー、それは嬉しいことだー」
かなり棒読みである大和。それはガーネットも分かっているようだった。
「うるせぇ、棒読みじゃないねーか! お前みたいなやつが俺は1番嫌いだ。燃えて死ね!」
「やれやれ……短気は損気と、おばあちゃんから習わなかったか?」
「炎の歯車・火の玉5連!」
火の玉が5方向から一斉に飛んでくる。
「君は炎を扱う逆賊なんだね? 残念〜!! 僕は水だ。水の歯車・水の箱!!」
大和自身が水の箱の中へと入っていく。炎はかき消され、ただ水の箱がその場に転がっている風景となった。
「まだまだまだまだっ。もっともっと多く出してあげるぜ!! 炎の歯車・火の玉100連!!」
今度は無数の火の玉が大和、目掛けて飛んでくる。火山から噴火した物が街を襲うような感じの勢いだ。
しかし、大和の水の箱は一切壊れなかった。
「何でだよ。全身全霊かけたって言うのに! オレの全力はこんな物ではないはず!!!」
「安心しろ、貴様に選択権を与えようガーネット。貴様は剣が好きか? それとも玉が好きか?」
「は!? オレは玉が好きだぞ、玉が!」
「そうか……なら君が好きな玉で君に救いを与えようではないか。水の歯車・生成……大砲!!」
「待て待て。貴様、オレを救ってくれるのではなかったのか。まるで殺すような勢いではないか……!」
「私にとって、死が救済である。安心しろ、なるべく痛みを与えないようにしてやるからな……」
「そう言う問題じゃないんだよ!!!」
そう話している間に、大和は導火線に火をつける。導火線の紐はすぐになくなっていき、大きな音を上げて飛んでいった。
「水を蒸発させるぐらいの勢いの炎を出し、止めてみせる!! 炎の歯車・火炎放射!!」
ガーネットの両手からたくさんの量の炎が放出する。だが、大和が追い討ちをかけた。
「もう一発……行っとく……?」
何とすでに同じ大砲を準備していたのだ。
絶望したガーネット。水の大砲を1つ止めるのだけで精一杯だった彼は水の大砲を止めることを諦めた。素直に受けることにしたのである。
「ここが中央エリアで助かったな……東か西エリアにもしガーネットが行ってたら、間違いなくこの島の森林は全て燃えていただろう。それほど驚異的な量の炎であった。だが、相手は私だ! 大将が簡単に負けるわけには行かないのだよ!!」
と決め台詞的なことを言う大和。木の陰からこっそりと松平と駿河が小さく拍手を送る。
「やっぱり、大将はカッコいいですね!」
「本当に、もう尊敬です! 一生ついて行きます!」
少しデレる大和。
だが次の瞬間急に真剣な眼差しでこう言った。
「簡単にその人について行ってはいけないよ……。もしかしたら私が裏切り者かもしれないし、この後すぐに死んでしまうかもしれない……言葉というものは簡単に出せるが……重みがある。発言はきちんと考えてからするんだな……」
2人はかなり感銘を受けた。その言葉を教訓にして頑張ろうと思った様に見える。
3人も火山の方へと進んでいく。
---エーデルシュタイン島・火山麓---
東・西・中央エリアの9人が全員、麓の方へと着いたようだ。曉月はとある異変に気づく。
「神村はどうしたんだ……?」
思わず俯く東エリアの3人。
すると植松が泣き出し首を横に振った。植松の行動を見て、すべてを察した曉月は植松の所へ向かい、植松の肩に手を置いてこう言った。
「この先も同期を沢山失うこともあるだろう。けど、その憎しみを糧にして、明日へと進んで行こう」
涙を流しながら頷く植松。曉月の言葉に心を動かされたのか、涙の量は最初よりも増えていた。
「さて、これから火山の中へと入っていく。だが、火山に入るのは、俺と凜音、嵩玖と黄桜王子! この4名だ。残りはこの付近の監視を徹底してくれ。怪しい人物が入ってきそうならば、侵入を阻止してくれ。雅くん、君をここの臨時リーダーに任命する。頼むぞ!」
「任せてください〜。任命ありがとうございます〜」
「では、任務を開始する! 行くぞ!!」
「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」
4人は火山へと入っていく。




