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それは、ある一行

「ちょっと、さっきから同じ所を歩いているわよ」


ガサガサと音を立てながら大きな植物の葉をかき分ける。


「こんなに植物がいっぱいあるのに、何で食べ物がないのよ」


尚も不平不満を述べる女に先頭を行く男達は深いため息を吐いた。


「五月蝿い。腹が減っているのは皆同じだ。自分だけが飢えていると思うな」


リーダーらしい男はそう言うと後方を歩く女に言葉を投げ捨てた。


既にこの場所に出てから数時間。


背丈程もある植物の葉をかき分けて進むが、生憎食べられそうな実も、生きている動物にさえも出会(でくわ)さない。


水もない、けど、亜熱帯のようなその土地。

ジリジリと体力だけが奪われて行く。


「なぁ、この植物を噛れば腹の足しにならないか?」


誰かがそんな事を言った。


この世界に来てから多分1日以上何も食べていない自分達。

下手すると2日かもしれない。


もう色々な意味で限界だった。


この植物は食べれるのか?


食べれるのか?


食べれる?


そう思ったら頭のネジが一本飛んだように思えた。

理性のセーブが切れてしまった誰かが「ガブリ」と植物の茎を噛った。


茎から(にじ)み出る樹液の様な液体は水を少し甘くした味がした。


「旨い」


ムシャムシヤとしゃぶるその光景に他の者も「それじゃあ」とかぶりつく。


躊躇う者などいなかった。


皆、自身の周りの植物を掴んでは茎にかぶりつく。


一心不乱にかぶりつく人々。


ヌルリと後ろに迫る生き物に気付きもしない。


一番後方にいた女が近くの植物に手をやったその時。


今までと違う感触が手に伝わって後ろを振り返った。



「キャーーーー!!」


人の三倍はあるかと言う位大きなスライムが佇んでいた。


さて、逃げれるのか?

お読み頂きありがとうございます。

また読んで頂けたら幸いです。

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