友達がいない
「ラゴス……」
私達の目の前を歩き去るラゴス。
まるで私達に気付いていないようだ。
「ラゴス……」
レオの声がやたらと響く。
グイッとレオに引かれながらラゴスを追う私達。
『やっぱりこの二人は仲が良いんだ』
レオは否定していたけど、どう見ても親友だと思う。
だって、こんなに必死にラゴスを追い掛けているんだから。
レオの手がラゴスの手を取り後ろに引っ張る。
「ラゴス!!」
レオの鋭い声にラゴスが振り返った。
「レ……オ……」
信じられないようなラゴスの顔。
「俺……あいつが……」
うつむきながら歯を食い縛るラゴスの背中をレオがポンポンと軽く叩く。
「しょうがない奴だな。何時も手が掛かる」
「結局いつもレオに頼ってしまうけどな……先輩として情けない」
ラゴスは苦笑いを浮かべながらそう言った。
「別に良いですよ。何時もの事なんで」
レオは一呼吸すると「じゃあ、僕らも階段を登ろうか」と苦笑しながら言った。
彼等には彼等の歴史があるんだと、実感すると共に、私には友と呼べる人がこの世界にいない事がとても悲しかった。
会えばいつも他愛ない会話をしながらご飯を食べて……そんな日常はもう来ない事が悲しかった。
きっと、今頃私が死んだ事を悲しんでいるだろうな……私がこんな世界で迷子みたいに歩き回っているなんて……きっと知らないだろう。
目の前の階段はそんな私の気持ちにズシリと重く乗り掛かるように果てしなく続く。
私達はその一歩を踏み出したのだ。
「ラゴス。一応聞いておくけど、さっきは何を見ていたんだ」
さっきとは、多分虚ろな眼差しで階段へ向かっていた時の事だろう。
「あぁ。そうだな……別れた奥さんが見えたんだ」
困ったようなラゴスの顔に。
「そうか……」
とだけレオが言った。
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