異空間の主
そこは始まリの地から地上へと続く異空間。
長い年月そこに入り込む者はいなかった。
異空間の主は面倒臭そうにバサリと重い瞼を開いた。
「いつ振りの客人か?」
誰もいない空間。
然れど、幾つもの空間と繋がる空間。
「はて……覚えておりませんにゃぁ。あれは何時の事だったかにゃぁ……はて、さて……にゃぁ」
影に二つの三日月が光る。
「面倒事は好かん。故に、迷い人には早々に退出願おう」
山のように大きな影がのそりと動く。
「大勢の相手も好かん。代表を連れて参れ」
影はその光を閉じると「御意にゃあ」とだけ残して闇にと消えて行った。
「さて、迷い人を何処へ飛ばそう……か」
そして、その影は再び目を閉じた。
☆☆☆☆☆☆☆
「俺に続け」
「いや、俺に続け」
そう言って意気揚々と先陣を切ったのはやはりと言うべきかスピカとキーランだった。
あの二人は何かを競うように我先にと階段を駆け上る。
二人が競うように駆け上がった為か、それとも彼等の人徳なのか、どちらかは判らないが二人に触発されるように勢い良く駆け出す人々。
気付けば取り残されていた。
皆から出遅れた私の手を引いたのはレオだった。
「行こう。ユイ」
レオはそう言うと目の前の階段へと足を踏み出す。
黒曜石で出来たような階段。
「綺麗な石だね」
そう言えば、さっきの拳程の石は既にない。
もしかしたら……あの石。
「さっきの石は黒曜石だったからね。綺麗なのはお墨付きかな。さて、皆扉を開いて入って行ったようだから僕らも行こうか」
レオに連れられ「そうだね」と足を踏み出す。
扉を潜るとそこは白い一色の大きなホールになっていた。
途方もない広さを誇るそのホールの中央にユラリと蜃気楼のように影が現れた。
「そこな迷い人。何用かにゃぁ」
影は意思を現すように二つの三日月の光を放つ。
「こんな夜分に申し訳ない。我々は地球と言う場所から此方の世界へ転移して来た者です」
レオが丁重にその影に説明を始める。
「地球かにゃあ?聞いた事もないにゃぁ。どこじゃそれはにゃあ?」
いちいち「にゃぁ」を付ける影にレオはコクリと頷く。
「此方とは別の異世界と言われる物です」
「異世界とにゃあ?」
「はい。異世界です。我々が瀕死の所を此方の神様が助けて下さり、我々はこの始まりの地へとやって参りました」
「何と、神しゃまがお主達を助けたとにゃぁ?」
「はい。その通りです」
「……」
影は暫し思考し細い三日月を更に細くさせた。
「分かったにゃあ。異世界からの客人。我の主に直接話てみるにゃあ。そち達の話に応じて我が主も力を貸すにゃぁ」
影はそう言うとスッと私達の方へと近づいて来た。
そして、レオの手を取ると一瞬で世界は暗転した。
暗い暗い、何処までも暗いその場所であの三日月は恭しく頭を下げる。
「我が主しゃま、連れて参ったにゃあ」
ゆっくりと大きな山の影が動いたらたと思うと、バサリと音を立てて大きな瞳が開いた。
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