レオの期待に応えて上げよう
「水がない」
「食料がない」
「朝が来るか判らない」
その三つの単語に、我々の動きは早かった。
何が一番それに要因したのかは、皆其々違うと思うが、今、確かに皆の意識が一つになった。
決意式のように皆で「えいえいおーっ!」との掛け声の後、皆南を目指して立ち上がった。
歩き出すと私の右隣に張り付くようにレオが歩く。
先頭を歩くのかと思いきや、それはスピカに任せたようだ。
「もともとスピカが向かった先だからね」
そう言って笑うレオ。
私達は隊列を3個に分けて歩いていた。
先頭には賢者を始として盗賊スキルを持つ者を配置し、罠・若しくは隠し扉、それに付随する物がないかどうか探らせている。
もしかしたら南の方へここを脱出出来る何があるかもしれない。
レオの話に一番に飛び付いたのは、やはりスピカだった。
「流石俺様だ。先見の明がある」
そう言って偉ぶっていたっけ。
まぁ、そんなスピカは意気揚々と皆を引き連れて、何度と不発になってしまうスキルや魔法を駆使していた。
因みに、先頭集団はレベル700越えの者だけ。
何せそれ以下の者だと魔法やスキルが殆ど不発だった為だ。
その先頭集団の後を我々が、その後ろを体力の少ない者が歩いていた。
「体力以上のスピードは燃費が悪い。栄養を補給出来る所までは皆温存する事を考えるように」
レオの提案である。
それに、強敵の吸血鬼も退治したし、他に敵がいないか常に私がスキルを発動して警戒している。
不意討ちになる事だけはない。
そして、ようやくスピカ達が襲われた場所までたどり着いたのだ。
あれからそれほどの時間は立っていない。
捕縛魔法をかけていた三つの塊がモゾモゾと動いていた。
「どうやら気がついたようだね」
吸血鬼が消滅すると、それに呼応したのか、吸血鬼だった者も吸血鬼も動きを止めていた。
ただ、人間に戻った者は直ぐに意識を戻し、行動していたのだが。
「既に捕縛魔法を2つ突破している者もいるね。ユイ、念のため追加で捕縛魔法をかけておいてくれる?」
レオにお願いされ「良いよ」の二つ返事。
サラリと捕縛魔法を三重に上掛けしておく。
「これで少しは時間が稼げるね」
「ありがとうユイ」
レオはそう言うと先頭のスピカの所へと移動する。
何やら指示を出すと、今度は私達が先頭になった。
「ユイ。ここから南に広範囲感知魔法で何か感知出来ないかな?」
私のはあくまでも敵とか人物を見るのに特化した魔法だ。
「どうかな?生き物になら反応すると思うんだけど」
そうだ。
だって、吸血鬼がいた村?とかは感知出来なかったからだ。
「ん~。これは憶測だけど、もともと地球のダウジングとかは水脈や貴金属を見つける為の技術だったんだ」
「そうだね。確かに聞いた事があるけど」
確かに今、水がない事は深刻な現実だ。
でも、水って地下にある水脈を探すと言う事だと思うし、感知魔法とダウジングがイコールか?と聞かれると『違うでしょう』と言うと思う。
「元々ダウジングとは、人の潜在意識の中にある超能力のような物を使っていると言う説があるんだ」
「はぁ」
何故に今ダウジングのうんちく?
「つまりね。感知魔法も魔力と言う僕達の潜在意識を利用した超能力の一つだと考えられない?」
「……」
つまりレオは、私が本気で知りたいと思えば分かるよなって言っているって事。
言わば、私の努力次第だろうと?
私も色々と社畜な扱いを受けて来たけど、レオって優しく言っているようで結構なハードモードな要求するよね。
「多分、これはユイじゃなきゃ出来ないと思うんだ」
凄いわ。
人を説得しなれている感半端ない。
『君じゃなきゃダメなんだ』って何処の口説き文句だよ。
私は大きく息を吐いてレオを見た。
確かに今ここにいるメンバーで感知魔法を使えるのは私だけなんだと思う。
だから、これは仕方がないのだと思った。
「レオの言っている事は理解した。私にしか出来ないって言われたらやるしかないよね」
仕方ないか、私の手を極力汚したくないと言ったレオの為だ。
オバチャンとしては期待に応えて上げよう。
お読み頂きありがとうございます。
また読んで頂けたら幸いです。




