水がない
「つー事で、これから南を目指そうかと思う」
ラゴスの言葉に疲れが見え初めていたスピカとキーランの仲間達は案の定難色を示した。
「少し休ませてくれ」
「朝になってからでも良いんじゃないのか?」
「暗い所を闇雲に歩いてはさっきの二の舞になりかねないよ」
確かに言っている事には一理ある。
それは平和な国の中に居ればの話だ。
待っていれば救助が来る。
それが約束された人だけに許される願いだ。
でも、
「皆、大事な話だ。聞いてくれ。まず、この世界は自転していない可能性がある」
突然話された天動説。
地動説が常識になっている現代人にレオ、言っちゃうんだ。
案の定聞いていた皆さんの目はキョトンとしているよ。
これを鳩が豆鉄砲を食らうって言うんじゃない?
「だから、いつ朝が来るのかは判らない。と、言うより、ここに朝が本当に来るのかも判らない。何故なら僕達はこの世界の太陽をまだ観ていないからだ。それと、ここが一番重要だ」
レオは一旦言葉を切ると皆の方を見渡した。
「ここには食料がないと言う事だ」
「「「!!」」」
皆一様に動揺する。
「元々この地に居たのは食料を必要としない吸血鬼。これだけ歩いても水を一切見ないし、動物らしき物にも、つまり小動物にさえ会わない事から、人が生活するのには向かない土地だと考える」
さっきまで反対していた仲間達の空気が一変した。
「確かに……川も無ければ水溜まりもなかったな」
「湿地帯もないようだし」
「そう言えば、ここに来てからの花を見ていない」
皆これまでの状況を確かめ合うように意見を言う。
そんな人々を見ながらレオは更に言葉を紡ぐ。
「食料は取り敢えず良い」
いや、よくないよね。
「しかし、飲み水がないと言うのが致命的なんだ。ここには泥水さえも無い」
「「「……」」」
確かに、これは致命的だ。
「多分、体力のある今しか僕達は動けない。後、数時間したら空腹が僕達の最大の敵になるだろう」
レオは再び言葉を切ると皆の方を一通り見回した。
「何の反応もないと言う事は、僕の言っている意味を理解して貰えていると解釈する」
レオはそう言うとスピカ、キーランと順番に見た。
「分かったよ。レオさん。俺だって登山とかしていた口だ。飲み水がないのがどれだけヤバイかは理解している。動ける内に打てるだけの手は打っておかなければ待つのは死だけだ。ここは地球じゃない。救助だって来ると言う保証は何処にもないんだ。折角貰ったもう一度の人生を1日もしない内にダメにするつもりは俺にはない」
スピカの断言にパチパチと拍手が鳴り出す。
「これが俺達の意見だ。俺達はレオについていくぜ。リーダー」
スピカに続いてキーランまでもがレオに賛同する。
そして、ちゃっかりリーダー任命までもしてしまった。
レオは営業スマイルを張り付け「では、移動しようか」と言った。
そんなレオを見ながらラゴスが「機嫌悪そう」と、言ったとか、言わなかったとか……。
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追伸
誤字報告ありがとうございます。




