この世界は自転していない?
仲間と合流する前にレオに魔力譲渡をするべく地上に降り立った。
「やっぱり夜は辺りが暗いから移動したって感じが全然しないね」
始まりの地全体がそうであるのか、辺りは荒野のようで森も泉も家もない。
あるのは所々に申し訳程度に生えている木だけ。
はっきり言えば何の目印もない。
夜の空に星はあるが、ここは地球とは星の配列も違う。
「あの大きな星」
レオが空を指差しながら一際大きな星を見つめる。
「僕が目覚めて最初に見えた星なんだ」
大きく輝く星。
一等星かな?
位に見ていれば
「最初は回りに近付く星がなかったのに、今はほら何個かの星が回りにある」
言われて見ればそうだな。
本当にそんな程度。
「そして、一番の問題は月だ」
夜空に浮かぶ月はその身を細くしており、今は三日月だろうか?
「ここに来た時は上弦の月だったのに、おかしいだろう?」
「えっと……ごめんなさい。よく判らないかも……」
そんな月とか星とかゆっくり愛でる時間はなかったな……とここへ来てからの出来事と己の半世紀を思い返す。
レオはちょっと困った顔になるけど、それならとニコリと微笑んだ。
「そうだね、ここは元いた世界じゃないから良いか。つまりね、この世界はもしかしたら自転していないかも知れないってことなんだ」
とうとうレオの言っている意味が分からなくなった。
「自転していない?地球は回っているんだよ」
「うん。そうだね。地球は回っているね。でも、今僕らがいるこの世界は地球じゃない。異世界だ。そこに地球の常識は通用しないと思うんだ」
サラッとレオは言ってくれちゃっているけれど、
「つまり、ここは自転していないし、月の満ち欠けも変、星も勝手に動いているって事?」
自分の中でもまだ整理出来ていない事だけど
「そうなると思うよ。空の色も濃くなったり薄くなったりとさっきから変動するからね」
「そんな所まで見ていたの?」
「まぁ、観察は好きだから」
まるで朝顔の観察日記を付けるようにサラッと言っちゃうけど、それって凄い観察眼なんじゃないだろうか?
私なんてさっぱり気付かなかったよ。
「広範囲感知魔法で何とか方向が分かっているようなものだから、この世界は質が悪いね」
レオはそう言うと肩をすぼめた。
「そうだね」
それには賛同する。
私なんて月や星なんて最初から見ていなかった位なんだから。
「じゃあ、取り敢えず魔力を譲渡しちゃいましょうか」
私は気持ちを切り替えて、さっきの要領でレオ目掛けて魔力を投げる。
スッと吸い寄せられるように私の魔力はレオの中へと入っていった。
「ありがとうユイ。お陰で体が楽になったよ」
レオは魔力を馴染ませるように胸の辺りを擦る。
「お役にたてて何よりです。まぁ、でも今の私は何だかんだとレオにおんぶに抱っこ状態なんだけどね」
そう言ってにこりと笑う。
多分私だったら闇雲に歩いて迷子になるのが落ち。
だから、貸し借りなしだよ。
と言う意味を込めて。
「ずっと、それでも良いんだけど……」
「ん?」
ボソリとレオが何かを言ったけど、何か良く聞き取れなかった。
首を傾げながらコマンドを閉じようとした時に、違和感にとらわれた。
お読み頂きありがとうございます。
また読んで頂けたら幸いです。




