初めてのスカウト
辺りの皆様を見ればレオ程ではないけど、それなりにレベルは高かった。
やはり暇な通勤時間にやり込んでいるんだね。
それに、スカウトとは何時来るのだろうか?
それまではどうやって暮らして行けば良いのだろうか?
住む所は?
大分やり込んでいたから体力も耐久力も高い。
飲まず食わずでもそれほどHPは減らないだろう。
でも……。
そう思っていると空から背にコウモリのような羽を生やした一団がやって来た。
おそよ数にして20。
耳の形もちょっと爬虫類っぽいそれは、何となくファンタジー物に出て来る龍の化身のようでもあった。
そうなのだ、紛れもなく龍族が降りて来たのだ。
全員多分男性だろう。
二人の龍族が近付くにつれて、彼らのステータスが見える。
『龍族:戦士880(王子)』
『龍族:戦士725』
勿論彼らは一番強いレオに声を掛けている。
『やっぱり世の中ってそう言うものだよ』
そう思って観ていると、レオは私の方を指さして何やら話をしていた。
何か揉めているらしく。
龍族はレオから去って行った。
「あの……どうしたのですか?」
そう尋ねると
「ユイを一人でここに置いて行くのは心もとないから一緒に連れて行きたいと話していたんだ」
何と。
彼は心もイケメンのようだ。
「この世界で最初に話した相手だし、それにレベルも低いようだから、ここで別れたらきっと僕は後悔すると思うんだ」
そう言って私の手を取ってくれる。
そうこうしている内に龍族の方達がそこにいた強そうな人達(レベルが500以上の人達)を30人程連れて飛び立って行った。
交渉には一時間もかかっていない。
連れて行かれた人も、残った人も本当に良いのかしら?
それに……レオだってスカウトされるチャンスをみすみす逃して、次のスカウトが何時来るか分からないのに良かったのだろうか?
そこに残ったのは先程の人数の五分の四だ。
そして、その殆どの人達がある方向へと向かう事を話し合っていた。
どうやら龍族との交渉中に、何人かの人が向こう側に集落がある事を聞いていたらしい。
取り敢えず草原に居てもどうにならないから皆で大移動をすることになった。
今の服装は白い布を頭から被っただけのような物だ。
お金もなければ武器もない。
スキルや魔法を使えば獲物を仕留めて食事をする事は出来るだろうが、本当にそれだけしかない。
15歳の体の少年少女達では暑さ寒さを防ぐのは無理だろう。
多分、今は月があるから夜の部類なのだろうが、今後がさっぱり予想出来ない。
雨風を凌げる家があれば大分違うだろう。
体は子供でも頭脳は大人なメンツはそのまま教えてもらった集落を目指した。
青白い月を見ながら、なんとかく嫌な予感がしていた。
人、それを虫の知らせと言う。
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