その頃の龍族3
「彼女と一緒でないのなら何処へも行きませんよ。彼女は僕の全てなんですから」
慈愛に満ちた眼差しで彼女……つまり、村娘を見つめるレオ。
あぁ。
きっと恋しているんだな。
それも、すっごく執着している。
龍の男もそうだ。
この女と思ったならば人妻であろうと戦っても手に入れるもの。
だから、レオのあの眼差しには共感出来た。
同じ男として凄くその気持ち判るよ。
しかし、ここでやはりと言うべきか、第一王子がやらかしやがった。
「まぁ、何の戦力にもならないが、慰み者の女には丁度良いだろう。見た目だけは良さそうだからな。我が誇り高き龍族の兵士達もいっぱい可愛がるだろうし、よし、あい分かった。そのおなごを癒しの乙女の館に入れよう。本来なら王族が水揚げをする所、特別に水揚げはそちにさせよう。感謝すると良い。もしやそち筆下ろしもまだか?なら楽しみにしておれ、館の女共が良い具合に仕上げてくれよう」
やっぱり馬鹿だ。
俺は開いた口が塞がらないかと思った。
『癒しの乙女の館』とは、我々龍族の独身兵士が日々たまったものを癒しに行く場所だ。
つまり、人間で言う所の女の春を売らせる娯楽施設なのだ。
どう見てもこの魔剣士はあの村娘に惚れているよな?
それなのに、多数の兵士達の慰み者にしようと?
それを、この彼に提案するとか?
馬鹿だ馬鹿だとは思っていたが、まさかこれ程までに馬鹿だとは……。
大体このレオとか言う御仁は殿下より強いと一目で分かるのに、平気で喧嘩を売っているとか、これはもうどうしようもなく馬鹿だ。
頼むからもう喋らないでくれ。
恐る恐るレオの顔を伺うと、極上の笑みを称えていた。
「あれ?」
今、この馬鹿が地雷を踏んだと思ったのは気のせいか?
ニコニコするレオはセシャ殿下の方を見る。
多分そんなに長い時間ではなかったと思う。
「下衆が、消し炭になりたくなかったら3秒以内に僕の前から消えろ」
地を這うような声がその笑顔とは対照的にその場に流れた。
はい。
やっぱり怒ってました。
俺は慌ててセシャ殿下を連れてレオの前から消えた。
そうでないと確実に俺たちはこの世から消されていたからだ。
☆☆☆☆☆☆☆
「もし、父上がその者をご所望ならダリウスに迎えに行かせますよ。元々、話がまとまりそうな所をダリウスが中断させたのですから。それに、ダリウスもあいつと話をしていますからね」
してね~よ。
ってか、何話を脚色してんだこの第一王子は。
龍王陛下は俺の方をチラリと見るが、思わず首を横に振る。
無理だろう。
自分の好きな女を慰み者にしようとする王子の居る所へ、アイツが自ら来るはずがない。
第一、あれはヤバい性格しているから。
正直もう関わりたくない。
ダリウスの願いは決して叶う事はなかった。
もう二度と関わるまい。
そう願った自分の愚かさを痛感するまで、後少し。
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