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その頃の龍族1

「何だ。その者達は」


不機嫌極まりない声でそう告げたのは、この世界で一番高い霊峰の主、龍王その人である。


この世界の東に位置する霊峰。

そこに我々龍族の郷があった。

どのくらい昔からそこに住んでいるのかはもう解らない。


神の次に位置すると言われる四大霊獣の一つを祖先に持つ我々は、日々他の霊獣の子孫と小競り合いを続けていた。

それは一重に神の右腕になる為に。


霊獣の直系と言われる我々王族は他の龍よりも長命で、我も王の座に就いてから早くも300年の年月が過ぎていた。


「父上、只今戻りました」


我の言葉を聞いていなかったのか、我の息子が誇らしげに連れてきた人間を玉座の前に整列させる。




事の起こりは数時間前。


500歳を越えた辺りから、我はたまに神の声が聞こえていた。


これも神の右腕になる資格が得られたものと思っている。

我以上に神の右手に相応しい者は居るまい。

そう自負している。


今回の神の声はにっくき鳥どもにどうやって勝とうかと思案していた時に突如頭に響いて来たのだ。


『始まりの地にて異世界の戦士を召喚せし』


頭に直接響く尊いお声。


これは天啓だ。


直ぐ様『始まりの地』を心眼で確認すると、とても強いオーラを感じた。


「こやつ。我よりも強いか」


小さき体に途方もない魔力と存在感を感じた。

魔力量だけで言えば、我を含む霊獣の王達でも敵わないだろう。

それだけ凄まじいオーラを感じる。


「これほどの者が我等に協力をしてくれれば、あのにっくき鳥も亀も、はたまた虎も簡単に蹴散らせよう」


何せ、我の前の代からずっと決着のつかない小競り合いが続いていたのだ。

我の兄弟の多くもその戦いの中で死んでいったのだ。


手元にある鈴を鳴らすと護衛の騎士が入って来る。


「龍王様。如何がなさいましたか?」


100年前から側に控えるヘクターが(こうべ)を垂れた。


「ギルティスを呼べ」

短くそう命令し、我は直ぐに参謀のギルティスを呼ばせた。


あやつとは王になる前からの付き合いだ。

我の願いは大抵叶えて来た男。


その最もたるや、あやつの婚約者を我に貰い受けた事だろうか?


あやつの忠誠心を知りたいが為に言った事。

龍族にとって戦わずして自分の女を譲る事はまずあり得ない。


それ程の事を申したのだ。


あやつは一も二もなく了承しおった。


故に、我はあやつを信頼しておるのだ。


「始まりの地に異世界の強者共が神の力にて舞い降りた。どの種族よりも先にそこへ赴き、強者を仲間に入れよ。これは天啓である。我をも凌ぐ者がおる。必ずや連れて参れ」


「ははーっ。(おお)せのままに」

ギルティスは我の言葉にひれ伏すと直ぐ様退出して行った。


あやつはとても使える男だ。

直ぐに我の要望を叶えよう。


そう思い安堵したのが馬鹿だった。



並べられた数十人の若い男女。


確かに人間にしては皆強い。


強いが、あの禍々しくも恐ろしいまでの魔力の持ち主はおらぬ。


「セシャよ。我は、我よりも強い者をと言ったはずじゃ。何故あやつは()らぬ?」


我の第一子にして王子のセシャ。


龍はなかなか子に恵まれないせいか、少々甘やかして育ててしまった。


「強い物は、ほらご覧の通りに連れて参りました」


誇らしく語る馬鹿な息子の言葉は我の逆鱗に触れた。


「たわけ者。この程度の者が何人居ようとあの者にはおよびもつかないわ」


激しい雷が息子の足元に落ちた。

お読み頂きありがとうございます。

また読んで頂けたら幸いです。

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