僕の努力が足りない
「さてと」
レオは一つ息をつくとキーランの方に向き直った。
「先程スピカ殿の所へ行って、我々ともう一度合流する事にしたんだ」
ニコニコと笑顔でそう説明するレオ。
私なんて頭に来てキーランに説教をしたと言うのに、本当にレオって人間出来ているな。
改めて感心してしまう。
「取り敢えずこの『始まりの地』を出て安心出来るだけ場所に行くまでは、団体行動をとった方が良いと思うんだ」
地面に座ったままのキーランは呆けてレオを見ているも、レオの笑顔にほっと一息をついた。
「そもそも、バラバラに行動した為にこうしたアクシデントが起きたのだから」
そして、レオの説明に大きく頷くと
「俺もそう思っていたんだ。未開の地で単体になるのは良くないと。吸血鬼どもに追われながらそれが良く分かったよ」
いや……あんたのそれ別に単体で行動したんじゃなくって、仲間を助けなかったから必然的に単体になったんだよね。
「それに、レオさんからの申し出てなら喜んで受けるよ」
へ?
何か話の流れがレオに貸しを作っているようじゃない?
可笑しくない?
「理解して貰って嬉しいね。じゃあ、ここにいる人達が起きたら僕らの所へ来てくれるかな?吸血鬼はこのまま捕縛魔法を掛けているからさぁ」
ニンマリとそう言うレオ。
「ああ。分かったよ」
キーランはチラリと吸血鬼達の方を見た。
「では、僕とユイは先に戻って仲間達にこの事を説明しているね」
どこまでも丁寧にそう言うレオにキーランは口許を緩めた。
「じゃあ、行こうかユイ」
そして私の手を取る。
スタスタと数歩歩いて振り返ったレオは
「あぁ。そうそう、下手に吸血鬼に攻撃しないでね。捕縛魔法はどうやら万能ではないようだからさ」
一瞬目を細めたレオに「あぁ」と額に大粒の汗をかいたキーランが大きく頷いた。
「理解してくれて嬉しいよ。だって、この世界は何が災いになるかわからないんだからね」
レオが目を細めたのは一瞬だった。
次の瞬間には何時もの笑顔。
「じゃあ、僕らは先に仲間の所へ行っているね」
レオはキーランにそう言うと私をヒョイと抱き上げた。
まさかの本日三度目の飛翔魔法だ。
そして、本日三度目のお姫様抱っこ。
三度目ともあり、レオは慣れたように飛翔を開始する。
しかし、喪女の私は全然慣れない。
何にって?
勿論お姫様抱っこにだよ。
グングン高度を上げるレオ。
当たり前のように魔法を使うけど……
「えっ?魔力大丈夫?」
本当にそこ大事。
「途中までは大丈夫」
既にある程度の高度と速度でそんな事を言って来るレオ。
「魔法を使えば使う程具現化率が上がるようなんだ。飛翔魔法も最初の時より数値が1上がっているし」
「……それって微々たるものなんじゃ?」
「『塵も積もれば山となる』だよね。僕達のレベル上げってそんなものだろう?」
確かにその通りだ。
「まぁ、吸血鬼との戦闘に対してステータス上昇は少ないと思うけど、どうやらこの世界はユイのやっていたゲームとプログラムが似ているようだね。魔力が10も上がっていたよ」
そう言って微笑むレオ。
確かに、普通のゲームではレベルがカンストした時点でステータスの上昇はまずない。
もし上昇させるのであれば、装備品とかアイテムとか使用して上昇させるのだ。
「じゃあ、レオもこれからもっと強くなるんだね。頼もしいな」
何でも出来ちゃうレオがもっと強くなれば、私なんて気にもしないのだろう。
「……ありがとう。ユイに頼って貰えるのは嬉しいな」
「もう十分に頼っているよリーダー」
私の言葉にレオが複雑そうな顔になる。
リーダーは良くなかったかしら?
と、首を傾げてしまう。
「まぁ、うん。十分に理解した。(ユイは鈍いから)僕の努力が足りないって事が」
レオの言葉に目をパチクリとさせてしまう。
「レオは物凄く頑張っていると思うよ。私が保証する」
私の励ましの言葉に、でも、レオは苦笑いするだけだった。
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