キーラン曰く
キーランの所はスピカの所と違って12人も吸血鬼化していた。
まぁ、考えようによってはスピカの所は本御所の吸血鬼が吸血して眷属を作っていたのかもしれないけど、こちらはそうはいかない。
つまり、大なり小なり吸血行動をとった事になる。
何せ、私達が到着した時には倒れていた人達以外キーランを除いた全員が
吸血鬼の眷属になっていたのだから。
多分倒れていた人達は吸血鬼から人間に戻った人達だろう。
私が全ての吸血鬼に捕縛魔法を掛けるとレオはキーランの所へと降り立つ。
勿論私をお姫様抱っこしたままで。
「今晩は。キーラン殿」
レオは丁重に挨拶をする。
そんなレオにキーランは渋い顔をする。
「何の用だ?」
スピカと違いキーランは私達が吸血鬼を倒して眷属にされた人々を人間に戻す所を見ていない。
突然吸血鬼達に襲われて、そんな吸血鬼達が突然人間に戻った者がいて……の状態だ。
「実は先程、僕とユイで吸血鬼の本御所を倒しました」
事実をそのままに話し出すレオ。
案の定キーランは全然信じてない様子。
「馬鹿を言え。魔法もスキルも何も通用しない相手だぞ。それを魔剣士の君なら兎も角村娘風情が?」
キーラン曰く、それ故の敗退だと。
キーラン曰く、それ故の逃走だと。
でもでも、この人も言っちゃうんだ。
私を馬鹿にしたように。
それも鼻で嗤ったよ。
「聖騎士が吸血鬼から仲間を守れなかったんですか?」
何となくさっきの報復のつもりで言葉を吐き出す。
オバチャンは結構根に持つんだからね。
「仕方がないだろう。剣も無ければ魔法も効かない。そんな相手にどうやって?」
さっきまであんなに逃げ回っていた男が居直った。
「貴方それでも男?」
あれは付いてんのか?
と言いたい。
「武器もなく魔法もスキルも効かないのだから仕方がないだろう?」
「拳があるだろうよ」
ジト目で私が指摘してやると、キーランは眉間にしわを寄せる。
「お前のような軟弱者に言われたくない」
「見た目で人を評価しちゃあいけないんですよ」
何だろう?この人を小バカにしたような言葉は。
何となく嫌な上司に似ていて腹が立つ。
私と同じ50代の部長クラス。
「女も機械も新しい物が良いよな」と言ったあいつ。
「年を取ると素直じゃなくて困る」とか言ったあいつ。
「私は貴方に保護された覚えも無ければ、ビジネスパートナーでもないですから」
ビシッと指摘してやるが、如何せん未だにレオの腕の中。
全然決まらない。
「えっ……ビジネス……パートナー……?」
レオの表情が何故か固まってしまった。
んんんん?
何かレオの様子が?
それよりも、レオの腕が揺るだ事で私はストンと地上に降り立ち更にキーランに詰め寄る。
「多分戦闘能力だけで言えば村娘だけの私より劣ると思いますよ。キーランさん」
伊達に年は取っていない。
啖呵を切る時は切るんだからね。
そうして私はキーランの前で仁王立ちになった。
お読み頂きありがとうございます。
また読んで頂けたら幸いです。




