パートナーはパートナーでもビジネスパートナーだよ
「ホーリランスのレベル……ですか?」
まるで初めて聞くように呟くレオ。
「すみません。ホーリーランスはあるのですが、僕のステータスでは魔法のレベルは書いてありませんね」
困ったな……とレオは私の方を見て言う。
多分本当にないのだろう。
彼が嘘をつくはずがない。
もしかして、私のだけ特殊なのだろうか?
私の魔法リストを確認すると、ちゃんとレベルも表示される。
伊達に十数年やりこんではいない。
そうか……私のゲームだけ魔法やスキルにレベルがあったんだ。
「私のホーリーランスはレベル800を超えています。私に殺らせて下さい」
一応、私これでも年上ですからね。
年下に守られているばかりじゃないんだから。
「だって私達仲間じゃない。レオにだけ重荷を押し付けたらパートナー失格だわ」
そうよ。
仲間なんだから。
これはある意味ビジネスと一緒。
だって、私達はウインウインの関係を築いている。
詰まる所のビジネスパートナーだ。
パートナーはとっても大事。
そう思いレオを見つめると照れたように「パートナー……」と呟き口に手を当てた。
何か信じられないように私を見つめた後、レオは深い深いため息を吐きました。
「分かりました。ここは確実に行きましょう。貴女がそう言うのならパートナーとしてお願いしますね」
レオは張りつめていた肩を落とし、私にお願いしてくる。
その顔が何故か複雑そうに見えてしまって、ゴリ押しして本当に申し訳ない。
「では」
私はコマンドを選ぶ。
するとレオがそっと私の手の上に自身の手を乗せて来た。
「ユイ一人にだけ重荷を乗せたくないから」
レオはそう言うと私の手に魔力を乗せる。
「一緒に唱えよう」
レオの気持ちが嬉しかった。
私は一人じゃないって言われているみたいで……こんな喪女の行き遅れに……どこまでも紳士的なレオ。
仲間だって認めて貰えたようで凄く嬉しい。
私はにこりとレオに微笑むと二人で
「「ホーリーランス」」
と叫んだ。
何もない虚空からパァーっと一条の光が降り注ぐ。
そして、スドドドンとけたたましい音を立てて夜の闇を貫くように現れた発光する槍は、その勢いのまま捕縛魔法を飛散させて吸血鬼を貫いた。
「ギャァァァァァ」
と夜の闇をつんざくような声と共に。
何処かで聞いた事だが、吸血鬼とは死体を残さないのだと言う。
体だったはず物には一瞬で形が灰色に変わり、サラサラと風に舞うようにその場から消えて行く。
先程まで唸るようにしていた吸血鬼の眷属達は一人、また一人と暗色から色鮮やかな色へと変わって行く。
しかし、その中の三人は人間に戻らない者もいた。
「きっと、吸血行動をしてしまったのだろう……」
レオが悲しそうに言う。
「助けるのが遅れて……ごめん」
私も彼等のステータスを確認するが
『吸血鬼の眷属
吸血鬼化完了。人間に戻る方法は現在なし。
ホーリーランス具現化率80以上にて消滅』
と書かれていた。
んんんん?
「具現化率?」
何故さっきの吸血鬼はレベルで今度は具現化率なのだろうか?
「どうしたの?ユイ」
レオが不思議そうに訪ねて来る。
「えっと……今度はホーリーランスの具現化率で大丈夫のようなんだけど……何故かな?」
一人一人確認して行くと○○の中の数字が違うだけで、レベルとはならない。
最後の一人の時にレベルと現れた。
「あっ。彼だけ違う」
思わず口をつくとレオが敏感に反応する。
「どの彼だい?」
レオの言葉に促されるように指差した彼は水色の学ランのような服を着ている。
学生と言うよりは神官と言った格好をしていた。
一瞬レオの眉間にしわが寄る。
「多分、彼は地球人ではないと思う」
「えっ?」
「私達は皆装備品は此方の世界へ持ってこれなかったから只の白い布を着ているだけだ。でも、彼は服を着ている。だから」
確かに、そうだ。
私が最初に吸血鬼を確認した時にあの場所に最初に居た吸血鬼の眷属なんだ。
「つまり、我々地球人は具現化率が適応され、そうじゃない種族はレベルが適応されるって事?」
「多分そうだ。我々の使う魔法のレベルがここでどの位かは判らない。けど、全然効かない訳でもないと思うんだ」
そりゃあそうだよね。
そんな事になったら大変な事だ。
だって、私以外の人の魔法がこの世界では通用しないと言っているようなものなのだから。
本当にそこだけは願いたい。
どうか私だけが特殊でないように……と。
お読み頂きありがとうございます。
また読んで頂けたら幸いです。




