ゲームと言う名の人生スタート
月明かりの下で私は身動きせずにぼんやりと辺りを見ていた。
「うううっ……」
金髪の彼が呻き声を出しながら立ち上がる。
サラリと落ちた髪から覗くその顔立ちに一瞬息が止まった。
「えっ!!」
若い。
どう見ても中学生位だ。
「ごめん。大丈夫?」
そして、言葉が解る。
さっきは何処の言葉かも分からなかったのに……。
「僕なんかの下敷きになって……ごめんね。潰れなかった?」
少年は心底困ったようにそう尋ねて来る。
潰れなかったって……もしや胸か?
ふと胸に手をやるとそこは草原に近かった。
『なぬ?』
豊満ではなかったが、それなりに努力してそれなりにはあったはずだ。
本当に潰れたのか?
「えっ……あれ?」
そして、そんな草原のような体を撫でていた自身の手が小さくなっている事に気付く。
顔から初め、全身を確認して確信する。
「もしかして……若返っているの?」
すると、周りの人々も気が付いたのか、一人また一人と立ち上がる。
全員が起き上がると脳裏に不思議な声が聞こえて来た。
『我が世界へようこそ地球の民よ』
中性的な声は自然と頭の中に浸透して行く。
『貴方達は先程の列車事故で残念ながらお亡くなりになりました。ただ、最近は災害や事故が多い為に黄泉の世界の審査が滞っており、救済措置として事故時ゲームをしていた方のみ、そのゲームの仕組みを借りて、此方の世界に転移して頂きました。
仕組みを借りたのは能力のみ、装備品はやアイテムは除かれます。
また、年齢は此方に転移させた際に皆様15歳からのやり直しとなります。
そして、ここはこの世界の「始まりの地」。
魔族、龍族、人族とあらゆる種族がここへスカウトへ来る事でしょう。
ここは能力主義の世界。
皆様には存分にレベルを上げて頑張って頂きたいと思います。
なお、救済措置は今回のみ。
この世界で残りの人生を謳歌して下さい。
それではご健闘お祈り致します』
それだけ言うと声は聞こえなくなった。
「嘘だろう!装備にどれだけ課金したと思っているんだ」
「俺のレアアイテムがーー!!」
「私の契約魔獣はどこーー!!」
「課金アイテムが!!」
「若いって素晴らしい!!」
皆様それぞれの思った事を叫んでいます。
私も最後の「若いって素晴らしい!!」には賛同致します。
さて、目の前の彼を見ると頭の上に簡単なステータスが表示されています。
『名前:レオ
魔剣士レベル999』
凄い。
アプリゲームでは既にカンストだよね。
「レオさん。凄いレベルですね」
私は感嘆しながらそう言った。
レオさんは私の方を見て困ったような顔になる。
多分私のステータスを見たのだろう。
「私は何て書いてありますか?」
そう尋ねると益々困った顔になりボソリと
「名前:ユイ
村娘レベルなし、です」
とだけ言った。
ですよね~。
私のやっていたゲームは第一章をクリアして初めて聖騎士となり基礎レベルの表示が出るのだから……。
何故知っているかって?
一度クリアして強くてニューゲームをしていたからです。
でも、村娘か……。
お読み頂きありがとうございます。
また読んで頂けたら幸いです。