ここはゲームじゃない現実だ
『名前:ビギニング
吸血鬼:レベル800
夜の公爵5名の内の一人
レベル800以上のホーリーランスで撃ち破る事が出来る』
「……魔法レベルって、正に私がやっていたゲームまんまじゃない」
思わずマジツッコミを入れてしまう。
ってか、それよりも名前。
まんまじゃないの?
「どうしたの?」
そんな驚きの声を上げた私にレオが問い掛けて来る。
その間もスピカが「早くこれを解除しろ」とか「喧嘩売ってんのか?ボケ!」とか「たかだか村娘の分際で」とか段々言葉が悪くなって来ている。
最後の言葉はしっかりと覚えておきましょう。
思わず不適な笑いが漏れてしまう。
「フフフ……」
私達から抜けた時のあの知的な雰囲気もなければ、人を引き連れて行くだけのリーダーの質あったもんじゃない。
こいつは本当に威張りたいだけなんだな。
それに比べて家のリーダーは……と、チラリとレオを見てしまったのは、そう言う意味なんだけど。
「もしや、まだ敵が?」
レオはそう言うと周りに意識を飛ばす。
そして、困惑した表情で
「何もいないようだけど……」
と言って来る。
私の視線の意味を敵と思ったようだ。
「違う違う。スピカも捕縛した理由を考えていたんだけど……」
まさにそれだ。
態度こそ豹変しているけど、一応まだ人間なようだし、捕縛する意味がないよね。
「ああ」
レオは「その事か」と軽く頭をかいた。
「だって、スピカ殿に事情を説明するのに時間がいるだろう?」
まぁ、そうだな。
一応職業は『賢者』だけど、今の彼を見ると頭は悪そうだし。
「きっと彼の事だから捕縛した彼等を片っ端から攻撃すると思うんだよ」
あぁ、成る程。
「納得」
確かに殺りかねないね。
この人馬鹿のようだから。
「助かる可能性のある仲間を、みすみす僕の目の前で殺させる訳にはいかないからね」
レオはそう言うと、そっと言葉を足した。
「この世界ではもう生き返らす事は出来ないのだから」
レオの言葉がグサリと来た。
頭に冷や水をかけられたと言うべきか。
私は何処かでこれをゲームと思っていたのかもしれない。
だって、現実とはあまりにもかけ離れた現実。
あまつさえ、ゲームのキャラクターのデーターそのままの姿。
確かにレオの言う通り、私達に復活とかはないのだと思う。
だって、神様だって言っていたじゃないか。
『救済措置は今回だけ』って。
「そうだね。そうだったね」
だから、弱い者はこの世界の餌食になってしまう。
今の彼等のように。
この世界は本当に分かりやすいのだ。
ここは強者が弱者を支配する。
実力主義の世界。
私達は搾取されないようにどうにか生き延びなくてはならない。
この右も左も判らない世界で。
だから、生き延びる為にも全力を尽くすのだ。
「レオ。吸血鬼本体を倒すにはホーリーランスレベル800以上が必要です。レオの魔法レベルは幾つですか?」
だから、私ももうレオにおんぶに抱っこで甘ったれないんだ。
お読み頂きありがとうございます。
また読んで頂けたら幸いです。




