吸血鬼と対峙
レオの魔力回復が終わると念のため、私達は歩きながら決戦の地に向かう。
「ねぇ、レオは干渉力って結構高いの?」
先程のアレックスの話を聞いて、一応これから一緒に戦う仲間として聞いておくのは普通の事だと思うんだ。
「そうだね。大体の物は100かな」
ニコリと笑うレオ。
そう言う所、いつも何処か余裕そうで羨ましい。
それに、ほとんど100って事は『世界』とか言う項目もなのかしら?
あれってなんだったのか?全然想像出来ない。
他の項目は言葉で大体理解出来るけど、あれだけは何の事か判らない。
もしかしたら世界が何か判るのではないだろうか?と、ちょっと期待の眼差しでレオを見てしまう。
だって完璧人間のレオの事だから、もしかしたら判るかも。
そんな期待の眼差しで見つめていると、レオが「困ったな……」と呟いて私の方を見た。
「まぁ、精霊、事象、魔法。この項目が100だね。後、具現化率かな、これはちょっと低くってね85なんだ」
具現化率?
私にはないな。
けど、
「……世界は……」
「ん?世界がどうかしたの?」
キョトンと問い掛けて来るレオは本当に知らないようだ。
「え……と。何でもないです。その具現化率って何なのでしょう?」
誤魔化すように質問が口に出る。
「……そうだね。ちょっと種明かしをすると、魔法やスキルを発動している時に、僕固有のスキルのパーティー管理の画面で魔法発動率……多分これは魔法干渉力だと思うんだけど、魔法がキチンと発動しているか確認出来るんだ。そして、この世界に来てから それにプラスして具現化率が表示されているんだ。これは『本来の魔法の威力に対して、この位の精度で魔法が発動しているよ』と言う意味だと解釈している。つまり、具現化率が高ければゲームの時の効果に限り無く近付けると言う事だね」
おーっ!!
レオって何か凄い。
「それで言うと僕の魔法は具現化率は魔法によって変動するんだ。多分この具現化率は魔法やスキルの平均値なんだと思う。だから、先程まで使用した魔法の中では『飛翔』は滅茶苦茶具現化率が低くって68だったんだ。それ故に、飛翔魔法で魔力をいっぱい食ってしまったんだけどね。因みにユイの使う魔法は具現化率100だよ。凄いね」
「そうなの……」
多分あれだ。
きっと私の表示が世界である事に何か理由があるんだ。
取り敢えず、余計な火種はいらないな……黙っておこう。
「ん?」
不思議そうに私を見るレオ。
でも、それ以上は聞いて来ず前を見据えた。
そこでは既に戦闘を初めているスピカがいた。
殆どの仲間は眷属にされ、一人魔法を駆使している。
けど、不発に終わって何とか逃ていると言う状況だ。
「スピカ殿」
レオは叫びながら走り出す。
勿論武器もないので全ての攻撃は魔法を用いる。
発動させるのは複数の捕縛魔法。
「凄い。一度に複数?」
私なんか一度に出来るのは一個の魔法で複数の魔法なんて発動出来ない。
「ユイ。吸血鬼本体に捕縛魔法を上掛けしていてくれ」
レオはそう吐き捨てるとそのまま他の敵にも捕縛魔法を発動させて行く。
魔法の連続使用。
私も手伝った方が良い?
「おい。何で私にも魔法を掛けるんだ」
怒ったようなスピカの声に私は思わず振り返る。
そこには捕縛の網の中でのた打つスピカがいた。
あの自信満々な賢者が地面の上で網に絡まりジタバタする姿は正直面白い。
「ウケる。ププ……」
笑いを堪えながらレオを見れば尚も敵に捕縛の魔法を放っている。
って……何でスピカにも捕縛魔法を掛けているの?
本当にそこだ。
「取り敢えず。私は言われた事をしておこう」
再び吸血鬼の方を見た私は三重に捕縛魔法を掛ける。
「これで安心」
ポンポンと着いてもいないホコリを払う。
状況把握の為に周りをスキャンするも、見える範囲以外に敵はいない。
私達以外の全ての物に捕縛魔法を掛け終えたレオが軽快な歩みで吸血鬼の元へと向かった。
「ねぇ、この世界の事を聞いてもいいかな?」
レオはにこやかに吸血鬼に問いかけた。
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