お姫様抱っこされました
捕縛の魔法で完全に動きを止められた元地球人一行。
「悪いが念のためユイも捕縛魔法を上から掛けてくれる?」
網目も強度もなんの遜色なく張られた魔法の網。
レオの魔法は完璧だと思うんだけどな。
「多分、僕の魔法では一時間も持たないだろう」
捕縛の網の下からグイグイと逃げようと足掻く彼ら。
確かに、こんなに暴れられていたら一時間はキツイよな。
「判ったわ」
そう言って私も捕縛魔法を発動させる。
それも三重に。
アレックスが不思議な物を見るような目で見て来るけど知った事じゃない。
「これで良いかな?」
レオの方を向いて尋ねると
「ありがとうユイ。これで本体を叩きに行けるね」
と微笑まれた。
「そうだね。けど、あまり時間はかけられないよ」
何せ、あちらに行った元地球人が万が一吸血行動を取るかもしれないのだ。
「判っている。飛翔の魔法を使うからユイ、此方においで」
すっと両腕を出したレオ。
その自然な動作に何の疑いもなく私は一歩を踏み出した。
そして美少年の要望に私は何の躊躇いもなく手を取る。
「ちょっと二人でスピカ殿の所へ行って来るから捕縛された人達の監視宜しく」
ヒラヒラと手を振るレオにラゴスが「ざけんな。俺も行くぞ」
と声を張り上げる。
「ごめん。僕が運べる定員は一名のみなんだ」
悪ぶれるわけでもなくレオはそう言うと私の背中に手を当てたと思ったら、スルッと膝下に手を入れて私を抱き上げた。
「これって、お姫様抱っこ?」
世の中女性なら一度はされてみたいと思うだろうお姫様抱っこ。
五十云年の私の人生初のお姫様抱っこ。
「まぁ、そうとも言うね」
ニコリと微笑むレオ。
『これって役得?』
そんな私の気持ちと呼応するかのように、グングンと浮上する私達。
「魔剣士って飛翔の魔法使えるの?」
どちらかと言うと、何か違うように思う。
「そうだね。これは賢者の魔法かな」
横抱きにされながら空中で余裕の返事を聞く。
「ちょっとやりこんでしまって、全てのジョブをマスターしているんだ。魔剣士はまぁ……仮初めのジョブ名かな。どれでもよかったんだけど、一番無難なジョブ名だろう」
そうかな?
聖騎手とかドラゴンスレイヤーとか、他にも色々あると思うんだけどな。
「チッ。やっぱり飛翔は魔力の消耗が激しいね」
ん???
何か今舌打ちしなかった?
温和なレオが?
「これじゃあ、戦闘に支障が出るから一旦下に降りるよ」
レオはそう言うとゆっくりと下降して行く。
「およそ一キロ先にスピカ殿が要る」
進行方向を見ながらレオはそう言った。
どのくらいの魔力を消費したのだろうか?
「ねぇ、レオ。私の魔力、譲渡する?」
何気無い質問にレオは目を見開いていた。
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