何か矢印が出た
聖魔法のリストを見るに、どうも仕留めてしまいそうな魔法しかなかった。
「元は僕達と一緒にこの世界に来た人達なんだ。どうにか助けられないだろうか?」
レオの悲痛な顔に『この人はどこまでお人好しなんだ』と思ってしまう。
若さ故の潔癖さなのだろうか?
この世の酸いも甘いも経験すると『相手の方から仕掛けて来ているんだから返り討ちにしても良いんじゃねぇ?』と言いたい。
そんな私を無視してエミリーが口を開く。
「聖水やそれに付随する魔法だと多分存在事態が消滅するよね」
エミリーあんたも潔癖なのかよ。
と言いたい。
そんな私達を無視してアレックスが苦虫を噛み潰したような顔になっている。
イケメンのこんな顔もなかなか良いな。
なんて、場違いな事を考えてしまった。
「キョウ。なんだって……」
どうやら眷属にされた者の中に知り合いがいたようだ。
「お前を苦しみから私が解放して上げよう」
勝手に相手が苦しんでいると解釈し、抹殺を宣言するアレックス。
「いや……ちょっと待とうか」
この歳まで喪女しているとオタクな情報も結構ある。
まぁ、情報源が私にゲームやら小説やらを勧めて来る友人なのだが。
「ポピュラーな方法だけど、吸血鬼本体を消滅させると元に戻るとか言うよね」
一応豆知識みたいな事を言っておく。
対峙する彼らを凝視しながらそう言うと、彼らのステータスの下の方に矢印が現れた。
「まさか……」
そう思い詳細をスキャンする。
『吸血鬼の眷属になってから人間に吸血するまでの間に吸血鬼本体が消滅すると元の人間に戻れる』
な……何その豆知識。
さっきまでは無かったよね。
ぼんやりそんな事を考えているとレオが捕縛の魔法を発動させる。
「殺すな。こいつらは元に戻せる」
レオの声に他の仲間の動きが止まる。
「吸血行動をする前に、吸血鬼本体を消滅させれば元に戻るらしい」
切羽詰まったレオの声に魔法を練り上げていたアレックスの手が止まる。
「本当か?嘘じゃないよな」
柔和そうなアレックスらしくない強い疑いの言葉に、でも、レオは「大丈夫」と頷いた。
お読み頂きありがとうございます。
また読んで頂けたら幸いです。




