敵の襲来
追われる獣は常に警戒していなければならない。
だって、そうしておかないと直ぐに狩られてしまうから。
だから、敵を認識してから常に相手の動向を探る為に広範囲感知のスキルを発動させている。
どうやら吸血鬼と言う物は、獲物の存在を感知する能力もあるようだ。
相手も三手に別れて我々を追っているのがその証拠。
「レオ、追っ手が来ます」
隣を歩くレオにそっと囁く。
レオが私の方を向くと光の粒子が目の前にちらつく。
多分感覚共有を発動しているのだろう。
これは魔法ではなく、パーティーリーダーに備わっている管理システムだから干渉力は関係ないのだろうか。
お互いに同意の上での感覚共有だから不発にならない?
それともレオの魔法の干渉力は相当な物なのか?
まぁ、でも、別にレオを拒否る理由もないので感覚共有したまま相手をスキャンする。
「どうやら本家は賢者の方へ行ったようだな」
アンデットは本来聖職者に弱い。
キーランのような聖騎士なんてその最もたるものだ。
言わばアンデット戦に特化していると言っても良いだろう。
かと言って、賢者だってアンデットには有効な職業だと思うのだが、何が決め手で私達の方ではなく賢者の方へ行ったのか疑問である。
但し、この場合魔法が上手く使えたらの話だが、一度我々と戦っているだろう吸血鬼は我々が魔法を上手く使えない事に多分気付いている。
もしかしたら職業やレベルに関係ない理由があるのでは?
思わず思考に入っていると不意にレオの声が私の意識を浮上させる。
「スピカ殿に連絡出来れば良いのだが、生憎フレンド登録はしていなかったからね」
いや……あの状況で「フレンド登録しようよ」と言っても鼻で笑われるだけだよね。
「あっそうだ。私のスキルに文字飛ばしがある」
私がやっていたゲームの第二章の最後の砦の城壁に、魔法で文字を書く為にあった糞役にたたないスキル魔法だ。
「えっ?あれって第二章の終わりに手に入れるスキルだよね」
レオが空かさず突っ込みを入れて来る。
前から思っていたけど、何か私のやっていたゲームに詳しくない?
「一度はクリアしているんです。今のは強くてニューゲームで、第一章のボス戦前にレベル上げに勤しんでいた為なんですが……」
何も嘘はない。
「何年やっていたの?」
レオのその質問さえなければ。
まぁ、私がおばちゃんだとバレているから良いだろう。
「十年程……」
嘘です。
それよりちよっとだけ長いです。
一瞬レオが疑わしい者を見るような目になったけど、バレてはいないはず。
それに、実は通勤時間外でもやりこんでいる日があった。
主に恋人達の日とか……。
クリスマスイヴの晩にオールナイトでやりこんだのが懐かしい位だ。
もう、不毛と言っておこう。
「それは……頼もしいね。じゃあ頼もうかな」
何となく納得していないレオの言葉に頷きスキルを発動させる。
対象物に人を選んで先程の二人を選択。
「『そちらにもアンデットが向かっているようだ。レオ』と頼む」
レオの言葉に頷き文字入力をして発動させる。
ゲームではこの言葉で開く扉が違ったんだよね。
そんな事を考えていると、私達の前にアンデット達が飛来した。
「こんばんは。私達も仲間に入れて下さい」
暗色になった人間。
コウモリの羽を背中にしまうと不適に微笑んだ。
もう助けられないのかしら?
そう思って私は自分が覚えている聖魔法のリストを確認する。
お読み頂きありがとうございます。
また読んで頂けたら幸いです。




