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幼なじみが幼なじみに負けないラブコメ。  作者: 窪津景虎
繋・貴女は誰ですか?
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閑話、そして宝探しが始まる。

次章の繋ぎはもう一人のメインヒロインがふさわしいと思って書きました。

 それは、中間テストが始まったばかりの五月二十五日の夜の事だった。

 俺にしては珍しく、その日の夜は熱心にテスト勉強に打ち込んでいた。理由は色々あるけど、やる気に満ちていたのは間違いない。

 ピンポーン。

 唐突に鳴るインターホンの音に不信感を覚える。

 時間は午後八時。来客が無いとは限らない時間帯だけど。

 生憎、我が家は基本的に宅配便と回覧板くらいしか人が来る用事はない。なんせ、俺は友達とかいないから。親友はいるけども。

 夜中に人が来る場合は何かしらの連絡が事前に母さんから伝言板で告知するのが我が家の決まりだ。

 連絡が無いという事はつまり母さん絡みの用事では無いということだ。

 なら、わざわざ俺が出る必要はない。訪問販売とか怪しい宗教の勧誘とか家に入れたら面倒だから。

 だから、俺は無視を決め込むつもりだった。

 そのつもりだったんだけど──。

 ピンポーン。

 二度目のインターホンの音に触発され、俺は玄関のドアから外を覗いて来客の姿を確認する。

「………ん?」

 見覚えのない人だった。

 歳は中学生くらいだろうか、身長は健どころか下手をしたら美夜子よりも小さいのかもしれない。目測で140センチ前後位の小柄で華奢な女の子が我が家の玄関に呆然と立ち尽くしていた。

 不信というか、不思議に思った。

 何の用事で中学生がうちまで来たのだろう。しかも結構な夜中に。

 ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。

 連続して鳴るインターホンに痺れを切らして俺は玄関のドアを開ける。

「夜分遅くにすみません」

 ぺこりと礼儀正しく小さな頭を下げる中学生くらいの女の子。

 その容姿は髪も肌も全体的に色素が薄く、とても儚げだった。

 無気力で虚ろな双眸そうぼうが俺をぼんやりと見詰める。

 儚げで今にも消えそうなほど存在感が希薄だった。

 目の前にいるはずなのに、そこに誰もいないかの様な。

 まるで幽霊にでも会ったかの様な感覚に襲われる。

 いや、間違いなく人間なんだろうけど。

「初めまして青海くん。青海大和くん。私は月岡天つきおかそらという者です」

「……っ!?」

 月岡という名前に反応して身体が僅かに震えたのが自分でも分かった。

 月岡。その苗字がただの同姓で無いなら、それはつまり──。

「連絡もなしに突然訪問してすみません。本日は貴方にお願いしたい事があって来ました」

 記憶の片隅に薄っすらとだけ覚えている事がある。

 先生には、俺たちと同い年くらいの一人娘がいると。何かの時にそれを聞かされたことがあった。

 生まれつき目が不自由で学校にもほとんど通えていないのが親として心苦しいと。

 確か、姫光が先生に結婚しているかどうか、と小学生の癖にませた質問をした時だったと思う。

「……えっと、月岡さん。俺にお願いしたい事って何かな?」

 色々と訊きたい事があったけど、俺は単刀直入に本題に切り込んだ。

 どこか先生と同じ空気感をまとった彼女、月岡天は俺に衝撃的な厄介ごとを持ちかける。

「はい。直江津サンシャインスクールの生徒である青海くんには私の父である塾講師、月岡司の残した『宝箱』の捜索を手伝ってもらいたいと思っています」

 その一言は彼女のお願いをきくには確定的であり決定的な一言だった。

 先生には返し切れないほどの恩がある。だから、是非を問うのは野暮というものだ。

「お願いします青海くん。どうか、わたしと一緒に亡き父の残した遺産である『宝箱』の手掛かりを探して下さい」

 小さな頭を深々と下げている彼女の、その懸命な姿を見て俺は思った。

 どうやら、今年の夏は俺が思っていた以上に忙しくて慌ただしい日々を送ることになりそうだ、と。

「……分かったよ月岡さん。俺で良ければ喜んで協力させてもらうよ」

 こうして、夏の端から端まで目一杯使う事になる俺たちシャイニー海賊団の『宝探し(トレジャーハント)』は俺と『もう一人のお姫様』の約束を皮切りに静かにひっそりと、その幕を開けた。


 ──This story is to be continued.

次回の更新は二月六日以降を予定しています。

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