第七話「夢だったら......よかったのに......」
暑井「お、おい!?亜美!?どこへいくんだ!?」
孤道「ほっとけよ、あんなかすり傷だけでパニックになるヒステリック女が」
病院の受付「申し訳ありませんが、その方との面会は拒否させていただいております」
高次(まあ仕方ないだろう。世間は勝手に弟が刺したと喚いているからな)
山田「なんだ?知らないのか?......
行方不明になっている被害者の弟が、あの大企業の御曹司なんだよ」
こんにちは、オロボ46です。
今回はある少年から始まります。
それでは、どうぞ。
(窓もダメだ......)
僕は、懐中電灯を頼りに部屋を探索していた。
窓は木の板で光が入って来ないほど打ち付けられている。
今は昼なのか......夜なのか......
それすら判断できない。
そういえば、ここで目覚めてからなぜか疲労が溜まっていた。
体をよく動かした次の日も疲れが取れなかったような日のようだった。
確かに僕はあの時、
姉さんを迎えにいこうと走っていた。
だけど、そこまで疲れるほどじゃなかったはずだけど......
本棚のような棚を見つけた。
その棚には一冊の本が置かれている。
その本は僕も見たことがある。
ある殺人鬼があらゆる人々を切り刻んでいく......
というスプラッター映画の原作だ。
そういえば、どんな内容だったか忘れたな......
僕はその本をパラパラとめくってみる。
カチャン
本から何かが落ちた。
僕はライトでそれを照らした。
(......鍵?)
NEXT TO 影島
山田が帰った後、
私は書斎からノートパソコンを持ってきてあることを調べていた。
書斎は私が探偵をしていたころよく仕事で使っていた。
探偵を辞めてからは
黒加ちゃんと小雪ちゃんの図書室になってしまったけどね。
ノートパソコンは[青脳]の宣伝ホームページと
ちょっとした調べ物に使っていた。
私は容疑者である兎三郎くんの親、
兎佐々木株式会社の社長のことを調べる。
社長宅はかつては別の街にあったようだが、
なんと今はこの街の外れで住んでいることが解った。
そういえば、最近街外れに建てられた家が話題になっていたが、
まさかあの兎佐々木社長のお宅だったとは......
最近どうも世の中のことに対して鈍感だな......
もうひとつ解ったのは、社長のプログに載った子供たちのことだ。
社長は子供が生まれるごとに子供の写真を載せていた。
そのことから彼には女の子を一人、男の子を二人授かったことが解った。
しかし、数年前のプログからは二人の子供としか言及されなくなった。
省かれたのは一番上の娘だった。
そういえば、ニュースでもそんなことで喚いていたな......
つい最近まで忘れていたけど......
あの依頼人の一番下の少年は姉と言っていたから、
どうやら兄弟の関係は続いていた様子だった。
それならば......親子の関係は......?
どうやら私は、だんだん探偵としての本性を
取り戻していることに気づいたようだ。
NEXT TO ???
赤い......液体は...... まだ......流れ落ちていた......
刺さっているのは...... カッター...... ナイフ......
それを握って...... いたのは......
どうして...... 兎......三......郎......
「......!!」
私は悪夢にうなされ、目覚めた。
周りを見渡すと、ここは病院だとわかり安心する。
しかし、すぐにあの光景が蘇る。
(夢だったら......よかったのに......)
あれは夢だと思っても、現実としか思えなかった。
次に私は、刑事がやって来た数日前の出来事を思い出した。
ゴツい体型の刑事は、私にありとあらゆる情報を聞き出そうとした。
その刑事が帰った後、
次にジャーナリスト達が押し寄せてきたのだった。
私の親は、兎佐々木株式会社の社長だ。
数年前に家を飛び出して以来、
私は親との縁を切っている。
だが、弟が社長の息子という事実は変わらなかった。
社長は金の力でマスコミを口止めしており、
私と兎三郎は他人ということになっている。
"容疑者は許せない"
"被害者がかわいそう"
ワイドショーではそのような言葉ばかり飛んでいた。
トントン
扉がノックされた。
私が時計を見ても、昼食にはまだ早かった。
もしかして......面会......?
いや、そんなはずはない。
確かに面会拒否しているはずだから......
まさか、兎佐々木社長......
ノックを鳴らした人物は私の返事も待たずに部屋に入ってきた。
「だ......誰......?」
入ってきたのは黒いフードを被った男だった。
男は私の姿を見つけると、近づいてきた。
私は慌ててナースコールを押そうとしたが、男は私の腕を掴んだ。
叫ぼうとしても恐怖で声が出ない。
男はニヤリと笑って、私の顔を覗いた。
「いや......お願い......助けて......」
私はかすれた声で呟く。
「......僕だよ、姉さん」
男は突然、そう言った。その声に聞き覚えがあった。
「......まさか」
私がそう言うと、男は静かにフードをおろした。
「う......兎三郎......!?」
目の前には兎三郎の姿があった。
「ごめん、姉さん。
訳があって人前に姿を表すことが出来なかったんだ。
だけど僕はやっていない。
誰かが僕を嵌めようとしているんだ!」
やっぱり......そうだったんだ......
私を刺したのは、兎三郎じゃなかった。
私はそれだけでも嬉しかった。
「姉さん、お願いだ。
あの時の情報を詳しく教えてくれ。
犯人を見つけるには、姉さんの力がいるんだ!」
「......わかった」
私は兎三郎のために、
あの時の状況を詳しく教えた。
To be continued
小雪「亜美......どうして......」
孤道「......」
いかがでしたか?
次回もお楽しみに!