第二十八話「あんたが本当に羨ましいよ」
亜美「あ......あ......」
暑井「お、おい!?亜美!?どこへいくんだ!?」
"小雪ちゃんへ
明日、兎三郎くんの家を訪れたいと思います。
それで、できれば小雪ちゃんも一緒に来てほしいの。
あの時は勝手に帰ってしまってごめんなさい。
その理由も明日話します。
亜美"
小雪「......それで、私たちは兎三郎くんの家族に何か知っていることを聞こうと思ったんです」
兎三郎の弟「そうだったんですか。すみません......僕の兄が迷惑をかけてしまって......
それでは、僕の知っていることを話します」
高次(やはりあいつが兎三郎の恋人だったのか......)
祐介(どうやらそうみたいだね。だけど、本当に僕のことを知っているんだろうか?)
亜美の父親「最初は父親モドキを殺してその罪をお前に着せるはずだったが......
お前のその命乞いはなさけなさに私は失望した。だから私は......」
孤道「う......嘘だろ......!? まだ......死にたくな......」
ピンポーン
「あのーすみませーん。警察の者ですが......
この前の殺人未遂事件でお話が......」
こんにちは、オロボ46です。
今回は山田さんから始まります。
それでは、どうぞ。
「孤道ー!! 玄関の扉を開けろおー!!」
服屋の店主につけられた指の傷口から血を押さえながら
俺は店主に横からタックルした。
孤道の上に馬乗りになっていた店主は勢いよく倒れた。
「......ッ!!」
自由を取り戻した孤道は玄関まで走って行った。
それを追いかけるように店主が立ち上がろうとした。
「このっ......悪ガキがあああ!!」
「させるかああああ!!」
俺は店主の上に馬乗りにした。
「離せ!! この父親モドキがああ!!」
店主が暴れるように叫んだ。
「父親モドキ......確かにそうかもしれんな。
俺はバツイチの彼女と結婚したものの、
その連れの子供との関係は最悪だもんな......
本当の娘を持って、そいつを心から愛せるあんたが本当に羨ましいよ。
だから......俺もあんたを見習って、息子を守るならなんでもするぜ......」
その後、裏口から警官が入り込んできた。
元々は殺人未遂事件の調査で訪れていたが、
孤道が玄関を開けて事情を教えてくれたおかげで俺は助かった。
店主はなぜか俺が殺そうとしたと主張していたが、
孤道が素直に否定してくれたおかげで俺に容疑が掛かることはなさそうだ。
俺と孤道、そして店主は事情聴取のために警察署に行くことになった。
パトカーの中、俺は孤道に話しかけた
「孤道......」
「......なんだよ」
「素直になったな」
「は?」
「いや、なんでもない」
俺はあの時の命乞いする孤道を思い浮かべながら、瞳を閉じた。
NEXT TO 小雪
「スプラッター映画......ですか?」
兎三郎くんの弟の言葉を繰り返すように私は聞き返した。
「はい、それまで興味を見せなかった兄の部屋になぜこんな物が......
あ、これがそのうちの一つです」
兎三郎くんの弟はスプラッター映画のレンタルビデオを机の上に乗せた。
「......どんな内容ですか?」
「さあ......僕もどんな内容かわからなくて......」
「ちょっと待って!! "生首のパーティー"じゃない!!」
突然、亜美は立ち上がってレンタルビデオを指した。
「......!?」
「あ......亜美......?」
私は金縛りにあったように動けなくなった。
「これすっごいんだよ!?
まず、序盤で突然男子が行方不明になるの!!
その後にね、その恋人がクラスメイトたちと
行方を追って廃墟に訪れるんだけど......
そこには生首がいっぱいあって、その中に......」
「あ......あの......? 亜美......」
「えっ? あ......ご、ごめんなさい! つい興奮しちゃって......」
「もしかして......ご存知なんですか?」
兎三郎くんの弟は亜美から距離を少し離して質問した。
「うん......実は私......スプラッター映画が好きで......」
「本当......なんですか? 私......初耳ですが......」
「ごめん、小雪ちゃん。ちょっと恥ずかしかったから......」
「すると、僕の兄の部屋にあったあのレンタルビデオも......」
「全部私が奨めたものなの......
兎三郎くんが最近、刺激的な映画が見たいって言ってたから......」
コンコン
ノックがなった。
「お坊ちゃん、お客様、飲み物を持って来ました」
疾次さんの声がドアの向こうから聞こえた。
「うん、入って」
兎三郎くんが許可すると、
疾次さんが高級そうなティーポットとカップを持って入ってきた。
「私も[青脳]の紅茶に感動しまして......
頑張ってうまく入れるように頑張っているところですよ」
そう言ってテーブルに置こうとした時......
「おわっ!!?」
疾次さんはうっかりソファーの角につまずき......
ガシャン!!
紅茶が私たちに降りかかった。
顔を上げると、床にはティーポットの破片が散らばっていた。
「あ......ああ......」
亜美のうめき声が聞こえて、私は亜美の手を見た。
亜美の手に、ティーポットの破片が刺さっていた。
血がドクドクとわき出ていた。
「も......申し訳ありません!! すぐに手当てします!!」
そう言って疾次さんは亜美を連れて部屋から出ていった。
「......」
「このティーポットかなり値段が張るんだけど......
じい、クビになったりしないかな......」
兎三郎くんの弟の心配する声も、私には聞こえなかった。
あの時の亜美の表情は......調理実習の時の表情と同じだったからだ。
NEXT TO 祐介
「......見た? 高次」
(ああ、しっかり見ていた)
僕は窓から部屋の様子を見ていた。
(あの表情はただヒステリックに叫んだ顔ではない......)
「つまり、彼女にあれがいるということだね」
(廃墟のスプラッター映画......まさか......)
「とりあえず、彼女の様子を見るしかないね」
僕は窓からの張り込みを続けた。
あれが何を意味するのかは言うまでもないだろう。
To be continued
大五郎「まだ前に進まないのか......
暗井、よくこんな行列で待てるな......」
暗井「警部補......スマホにアプリ入れています?」
大五郎「......」
気佐野(大ちゃん、あまりそういうの入れてないのよね......)
いかがでしたか?
一難さってまた一難......というところですかね。
次回もお楽しみに!