第十三話「どういう意味だよ、山田」
これまでの人格事件......
男「俺じゃない!!俺じゃないんだああ!!」
気佐野(それにしても......おかしいわね......刃物で抵抗する必要なんて......あったのかしら?)
山田「俺は父親として頼りないからなあ......ハハハ......」
影島「祐介くんか、どうしたの? ......そうかい......それじゃあ、気をつけるんだよ」
祐介「君は......兎三郎くん......!?」
高次(......様子がおかしいぞ、気をつけろ!)
兎三郎「う......うふふふ......」
こんにちは、オロボ46です。
今回は大五郎から始まります。
それでは、どうぞ。
「本当にやっていないのか?」
「本当だ! 俺はやっていないんだ!!」
取調室では先ほどの男が取り調べを受けていた。
俺と暗井は隣の部屋でガラス越しに見ている。
(やっぱり取調室は苦手ね......
こう見られていちゃあ、こっちも話ずらいわ......)
気佐野が頭の中で呟く。
(今は我々が見ている立場ではあるんだがな......)
(あら、見る方は好きよ。
本人の内面をじっくり知ることができるから。
取り調べを毎回受けてくれる後輩が出来たらいいんだけど......)
(......ワガママ言っていないで、取り調べに備えておけ)
俺が取り調べを行う時は聞き上手な気佐野に任せることが多い。
さっき言っていたように、取調室は苦手のようだが
現時点の人格事件対策課では取り調べが得意なのは彼女しかいないので、
選択権はなかった。
「はじめまして、私の名前は気佐野よ。
あなたの名前は......尾日理さんね?」
取調室に入った気佐野は自己紹介を始める。
尾日理は体を震わせながら頷いた。
「そんなに緊張しなくていいのよ。もっと肩の力を抜いて......」
気佐野がなだめるように話しかける。
初めはなかなか口を開かなかった尾日理も、
気佐野との会話を繰り返す内に徐々に話してくれるようになり、
やがて事件について話してくれるようになった。
尾日理がその死体を見つけたのは今朝のことだった。
ショッピングモールの従業員用のトイレの故障が治ったばかりで、
尾日理はさっそくそのトイレへと向かった。
そのトイレの奥から二番目の個室は、
お気に入りのトイレポイントだったからだ。
昨日までのストレスを一緒に流し、
今日を頑張るために尾日理は朝一番にその場所へと向かった。
ところが、トイレの前で尾日理は見かけない顔の男を見かけた。
まだ店は開店前だった。
(トイレを借りに来ている人か......?)
その時の尾日理はそう思っていると、トイレの中からひどい匂いを感じた。
そして、お気に入りの個室の扉を開いて尾日理は小さな悲鳴を出した。
中に首なし死体が置かれていたからだ。
小心者の尾日理は、
(通報すると自分が疑われる......)と思ったらしい......
NEXT TO 影島
「そういえば、さっきの祐介って誰なんだ?」
ストレートティーを飲みながら山田が質問する。
「ああ、昔の常連客でね......
よく私の探偵時代の事を聞こうとしていたよ」
「ああ、思い出した!
急にばったり来なくなった奴だろ?」
山田が話しを合わせるように反応する。
「あの時は探偵になるって街を飛び出したんだけど......
まさか本当に私立探偵になっていたとは......」
私はあのころの祐介くんの姿を思い出しながら呟いた。
「ということは、BLUE-CPY探偵二世ということになるな!」
山田の言葉に、私は思わず吹き出しそうになった。
「どういう意味だよ、山田」
「だって、お前の影響で探偵になった訳だろ?
お前はもう引退しているんだから、肩書きを引き継いでもおかしくないぜ」
「あれは肩書きと言っても、勝手につけられただけなんだけど......」
BLUE-CPY探偵というのは私がBLUE-CPYを持っていた訳でもなく、
ただ依頼に必ずBLUE-CPYとの関わりがあったことからそう呼ばれていた。
「なあ、あいつの事務所が見つからなかったらさ、
ここで働かせたらどうだ?探偵仕事と両立させてさ!」
「まあ、考えておくよ。
それにしても......今ごろどうしているのかな......」
例の廃墟に向かった祐介くんの声を思い出して呟く。
「今頃、犯人を見つけて逆に追いかけられていたりして......」
山田がストレートティーのおかわりと共に冗談を言った。
「はは、そんなことはないだろう。逆に追いかけられるなんて......」
NEXT TO 祐介
「はあ、はあ、まったく......
はあ、はあ、最近の高校生は元気だねえ......」
僕は息を切らしながら走っている。
(冗談を言っている場合じゃないだろう......)
高次が頭の中でため息混じりで言う。
後ろでは兎三郎くんがバール片手に走ってくる。
最近運動をしていなかった僕とは違い、
彼は疲れを感じることなく追いかけてくる。
スポーツ万能という肩書きは伊達ではなかった。
(祐介、俺に変われ!!)
「......頼んだよ、高次」
このままでは追い付かれてしまう。僕の体を高次に任せることにしよう。
「......こっちだ!」
高次は僕の体を動かし、右手を兎三郎くんの方に向けた。
「はあ......はあ......ここまでくれば......」
高次に体を返してもらった僕は息を切らしながら呟く。
あの時、高次が幻覚を見せる能力を使ってくれなかったら命はなかった。
兎三郎くんは今、多数に散らばった僕の偽物を追いかけていることだろう。
(とにかく、今の内に帰ったほうが良さそうだ......)
「......いや、もう少し探索した方が良さそうだ」
(何言っているんだ祐介!?
このままここにいたらあいつに......)
「周りを見たら君にだってわかるだろう?
この廃墟には、何か秘密があることに......」
僕が逃げ込んだ部屋には、
昔懐かしなビデオが棚に大量に置かれていて
様々なスプラッターポスターが張られており、
そして机には、兎三郎くんと女子が写った写真立てが置かれていた......
To be continued
暑井「おい、小雪! 保険室に運ばれたって聞いたが、大丈夫だったか?」
小雪「すみません......心配をかけて......」
孤道「......フン」
いかがでしたか?
大五郎は説明が多いのか、よく長くなりますね......
(筆者は祐介が一応のメイン主人公のつもりで書いております)
次回もお楽しみに!