第十一話「それがもう目の前でねえ......」
これまでの人格事件......
亜美の父親(亜美には指一本触れさせんぞ......悪魔め)
山田(まさかまた、孤道が何かしたのか......?)
気佐野(それにしても......おかしいわね......刃物で抵抗する必要なんて......あったのかしら?)
???(この一番上の引き出しの鍵穴......開いた......!)
こんにちは、オロボ46です。
今回は廃墟の少年から始まります。
(もう既に正体バレバレですが......)
それでは、どうぞ。
引き出しの中の生首は腐敗が進んでいるのか、
とても直視出来ないほど酷かった。
僕は引き出しを閉めようとしたが
奥に何かが光っていたのに気づき、
それを取り出すことにした。
べちゃ
......何か触れてはいけない物に触れてしまったような気がしたが、
気にせず奥に手を突っ込んだ。
(......棒のような物が?)
僕は引っ張ってみた。
くちゅり
出てきたのは、バール......と目玉のような物だった。
(......っ!?)
慌ててバールの先についている
それを除けようと振り回したが、
そのまま壁にぶつけてしまい......
ぶちゅう
......それは潰れた。
その時、僕は木の板で打ち付けられた窓を思い出した。
(これなら......あの木の板を外すことができる......!!)
僕はバールを手にし、木の板を外そうとした。
バールの尻尾(?)の先端を壁と木の板の間に差し込み、
思いっきり力を入れる。
メキメキメキ
木の板は絆創膏をめくるように
壁から離れていく。
木の板のひとつが外れて、光が射し込んできた。
(助かった......!!)
ガチャリ
後ろの扉の鍵が開いた。
NEXT TO 影島
カランカラーン
扉のベルが鳴り響き、客が入ってきた。
「......また君かい?」
入ってきたのは、体操服を着た孤道くんだった。
「よお、マスター。とりあえず、いつもの」
「私は影島と言われてほしいけどね......」
そう言いながら、濃いめのココアを入れ始めた。
孤道くんは亀山高校一の問題児と言われているが、
その原因の一つはこの濃いめのココアであろう。
彼は、人がほとんど来ないタイミングを見計らって
授業を抜け出し、やって来るのだ。
「ふう......もう一杯」
「酒飲んでいるように言わないでくれないかな・・・・・・」
親子なんだなあ......、と思ってしまう光景だ。
「今日はいつもよりも人がいねえようじゃねえか」
おかわりのコーヒーを入れる私を見て、孤道くんは言った。
「君はいつも人のいないころに来るでしょ......
まあ、今日は水族館が休みで君が四人目なんだけどさ」
喫茶店[青脳]の前には水族館がある。
水族館のイベントがある日は
こちらの方も結構人が来ていたりもする。
水族館のスタッフの何人かも知り合いで、
最近はコラボメニューも作っているんだ。
「水族館と言えばさ、あの続きを教えてくれよ。
動物が全部消えたって話」
孤道くんは、よく私の探偵時代の話を求めてくる。
「前も言ったはずなんだけどさあ......
学校が休みの日にしか話さないよ」
「そうだろうなあ......
まあ、時間もなかなか取れないんだし、少しぐらい......」「ダメ」
抜け出しを見逃している私が言うのもなんだけど、
できれば学校に居る時間を大切にしてほしいので
この話は学校が休みの日しか話さないことにしている。
「釣れねえなあ......まあ今日はもうそろそろ帰るか......
マスター、これお勘定」
そう言って小銭をいくつか置いて帰っていった。
カランカラーン
......
カランカラーン
「よう! 影島!」
「ありゃ、戻ってきたの?」
山田が再び店に来た。
「結局何もすることがなくてさあ......
とりあえず、いつもの!」
「はいはい」
私はアイスティーを入れ始めた。
「悪いな......息子が厄介になって......」
アイスティーを見て、山田はそう呟いた。
「孤道くんのこと?」
「ああ......さっき孤道にあってな......
学校はどうしたんだ、って聞いたら何も言わずに去って行ったよ」
山田は二年前、めでたく結婚した。
ただ、その相手は夫を亡くした方で、孤道くんはその連れだった。
孤道くんは山田を父親と認めておらず、それまで優等生だったのが
すっかりグレてしまったわけだ。
「俺は父親として頼りないからなあ......ハハハ......」
山田は乾いた笑いを見せた。
山田がこの店の常連客だというのは
孤道くんには話していない。
もし言ってしまうと、
彼はもうこの店に来てくれないと考えたからだ。
「まあ、暗いことは忘れよう!」
山田はそう言ってアイスティーを飲み始めた。
「うーん、やっぱり紅茶はストレートじゃないとなあ!」
「言っておくけど、お酒じゃないよ?」
血のつながりもないのに似たようなリアクション......
やっぱり親子なんだなあ......と、思った。
プルルル
「ん? 影島、スマホが鳴っているぞ?」
「あ、本当だ」
私はスマホを手にした。
NEXT TO 祐介
「もしもし?」
「もしもし、影島さん?」
僕は影島さんに電話をかけていた。
「祐介くんか、どうしたの?」
「一応報告だよ。
そろそろ噂の場所に行こうと思って」
「......一度帰って来たら?」
「それがもう目の前でねえ......」
目の前には、廃墟マニアにはたまらなそうな
古い廃墟がそびえ立っていた。
「そうかい......
それじゃあ、気をつけるんだよ」
「うん、探索が終わったらそっちに行くから。
うん、それじゃあ」
僕は電話を切った。
「さて、この廃墟の中に手がかりがあればいいんだけど......」
廃墟の中を覗く僕に、高次は頭の中でささやく。
(嫌な予感がする......
とにかく、用心しながら行くしかないな......)
僕は廃墟の中へと足を踏み入れた。
To be continued
暑井「うおおおおおおお!!」
男子生徒A「あいつ、いつもより燃えているな......」
男子生徒B「最近出番ないからじゃないか?」
体育教師「そういえば、孤道は?」
いかがでしたか?
祐介がいよいよ廃墟に突入ですね!
次回もお楽しみに!