第一話 「いや、一話によくある独り言自己紹介だよ。」
こんにちは、オロボ46です。
今回は自分の初投稿作品「青い人格」のリメイクとなります。
特殊な能力が使えるもう一人の人格とその狂気をテーマにした
サイコサスペンス群像劇です。
それでは、どうぞ。
数十年前、
世界各地で人が発狂して暴れまわる事件が発生していた。
暴れまわった者を落ち着かせ、なぜ暴れたのかを聞いても、
本人達は記憶に無いとしか答えなかった。
そこである研究者がその本人達の脳を調べると、驚くべき事実が判明した。
脳の一部が青く染まっていた。
さらに、その青く染まった部分には
本人の人格とは別のもう一人の人格が潜んでいることが判明した。
研究者はそのもう一人の人格を
「bluecharacterpersonality」(青い人格)、
略して「BLUE-CPY」と名付けた。
そして、現代に至る......
NEXT TO ???
「いけない......遅くなっちゃった......」
私は暗い夜道を走っていた。
私はとある会社勤めの若者で、
休日で弟と久しぶりに会う予定だった。
しかし、あることで遅れてしまい、
待ち合わせ場所に向かって走っていたのだった。
「きゃっ!!」
私は転んだ。
「いたたたた......」
私が起き上がろうとした時、誰からかが左手を差し出してくれた。
「あ、ありがとうございま......」
私がその手を掴むと、誰かはその左手後ろ引っ張り、右手をつき出した。
さくっ
「うっ......」
右手は......私の......腹に......当たった......
誰かは......右手を......引っ込める......
ぽた......ぽた......
「......」
私は......言葉が...... 出なかった......
私の...... 腹...... から......
赤い......液体...... が......
NEXT TO ???
窓から朝の光が差し込んでいた。
「うーん......ふう」
布団の中から僕はなんとか抜け出した。
「さて、今日は急がないといけないから、
早く布団を畳まないとな。そうだろ?高次?」
僕は壁に向かって話しかけると、頭に声が響き渡った。
(祐介、お前はただ自分の事務所を探したいだけだろ?
急がなくてもいいだろ......)
「それもそうか」
僕は笑って布団をしまった。
僕の名前は青崎 祐介。
そして、さっきの声は僕のBLUE-CPYの高次だ。
もう一人の人格というのは言うまでもないだろう。
僕たちは昨日、この街のアパートに引っ越してきた。
まあ、正確にいえば里帰りだけどね。
ある街の探偵学校を卒業して、探偵になった僕は
ある人との約束でこの街に戻ってきた......というわけさ。
(さっきから誰に話しているんだ?)
「いや、一話によくある独り言自己紹介だよ」
(......お前はいったい何を言っているんだ)
「それよりも高次、朝食を食べたら[青脳]に行かないかい?」
(まあ別にいいが......事務所を探しに行かなくていいのか?)
「何を急いでいるんだい? 後からでもいいだろ?」
(お前が急ごうとしたんだろ......)
NEXT TO ???
街の水族館から目と鼻の先にある喫茶店『青脳』。
その店主である私、影島 俊は
カウンターを拭いていた。
「おい、おっさん」
カウンターの奥の扉から髪の長い少女が出てきたと思ったら
男勝りな言葉を私目掛けて投げつけた。
「トイレットペーパーがもうねえぞ」
「そうかい?前補給した気がするけど......」
髪の長い少女......
竹幹 黒加ちゃんはため息をついた。
「今日帰ったら補給しにいくからな」
そう言って黒加ちゃんは扉に戻って行った。
黒加ちゃんは私の姪だ。
数年前、とある理由で彼女を引き取ることになった。
彼女は他人との関わりをなるべく避けていて、
叔父の私でさえ「おっさん」扱いされている。
彼女が心を開いているのは、あの子だけだ。
しばらくして、黒加ちゃんは扉を開いてまた私に話しかけた。
「あ、影島さん、行ってきます......」
先ほどのような男勝りな言葉使いではなく、静かな声だった。
髪は後ろでヘアゴムで止めており、
学校の制服とバックが清潔感を出していた。しかし、顔は黒加ちゃんのままだ。
そう、彼女は黒加ちゃんのBLUE-CPY、小雪ちゃんだ。
「あれ、小雪ちゃん?
珍しいね、いつも黒加ちゃんで登校しているのに」
「すみません......今日はちょっと黒加に頼んだもので......」
「そうなんだ。
あ、そうそう、黒加ちゃんに聞いたと思うけど、
数日前、この近くで女の人が刺されたってニュースがあったから
帰り気をつけてね」
「はい......それじゃあ、行ってきます」
そう言って小雪ちゃんは扉を開けて出ていった。
NEXT TO 祐介
「おいおい、なんでお前こんなところにいるんだよ」
「お前ん家、学校のすぐ隣だろ?さてはサボりか?」
僕はアパートを出ると、小学生が三人集まっていた。
明らかに二人が一人に絡んでいるように見える。
様子を見ていると、頭の中で高次が呟いた。
(お前らこそ、こんなところで何やってんだ......)
「ん?あの子たちが気になるんかい?」
(いや、いい、先へいこう)
「......助けたらどうだい?」
(......いいのか?)
「いいんじゃない?あの子、訳ありそうだし」
(......わかった)
その瞬間、僕の体の意識が途切れた。
今、僕は体を動かせない。
代わりに体を動かせるのは高次だ。
高次は右手を一人に絡んでいる二人に向けて念じている。
すると二人は何かヤバイものを見たように驚き、
そのまま逃げていった。
一人は何が起きたのかさっぱりわからない様子だったが、
すぐに去って行った。
「ふう、こんなものだろ」
僕じゃないよ。高次がそう呟いたんだ。
その後、体の意識が元に戻った。
僕は再び体が動かせるようになった。
さっき二人が見たもの、それは高次が見せた幻だ。
BLUE-CPYはそれぞれ普通の人間にはない能力を持っている。
例えば、高次は他人に幻覚を見せる能力が使える。
世にも恐ろしい怪物を見せて相手をびびらせたり、
自分の姿を美人のピチピチギャルに見せて
相手から情報を手にいれることができるんだ。
ただ、このような能力を持っているBLUE-CAPを持つ者は
普通の一般人からみてあまりいい顔をしないことが多い。
何をされるのか解らないからだろう。
それに・・・・・・この能力は犯罪にも使われやすい。
使い方を間違えば、最悪BLUE-CPYを消されることもある。
僕が探偵になったのも、高次の能力が十分に発揮できるのも理由の一つだ。
「さて、そろそろ行くか」
(・・・・・・ああ)
僕は頭の中に居る高次に話しかけ、喫茶店『青脳』へと足を進めた。
To be continued
いかがでしたか?
更新頻度は安定(笑)の不定期です。
今連載中の「化け物バックパッカー」と平行して投稿するので
忘れたころに見てくださいね。