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現れたのは

 数日後、コミヤは都市に戻ってきた。

 騒ぎ、急いで都市に戻って来たのだ。

 その日は青空が広がり、何処までも澄んでいて、都市の建物を明るく照らしている。


「……何でこんな晴れ晴れしく明るい都市になっているの。気に入らないわ」

 

 一人呟くコミヤ。

 それに返す者はいない。

 この馬車の中には、リズに復縁をと言い出しかけたグド王子がいるのみだったから。

 

 そのグド王子は、自分から離れて行かないようにと仕掛けたコミヤの力で今はぼんやりしている。

 けれど“彼”という“人質”がいる限り、私には手を出せないと考えてた。

 今までもそうだったのだ。


 だから、これからもそうだ。


「私が失敗なんてするはずがない。大丈夫、全部上手くいく」


 そうコミヤは一人笑う。

 それでも不安はぬぐえず、コミヤは白い粒を一粒。

 最近の人間どもは面白い薬を作ったものだとコミヤは思う。


 少し程度だが気分が落ち着くのだから。

 ただでさえなかなか上手くいかず、何年も王子の傍に来るまでにかかってしまったのだ。

 本当ならば一代前にそれは上手くいっていたはずだが、あの粘着質な者どものおかげで計画を変更せざる負えなかった。


 だがその分準備は万端だ。

 だったはずだった。


「あのリズとかいう邪魔な小娘さえいなければ……あの、異様に“強運”な娘さえいなければ……」


 悔し気にリズとコミヤが呟くと、ピクリとグド王子が反応した。

 気に入らない、そうコミヤは思う。

 あの女が気に入らない。


 いつもであればとうの昔に殺せていたはずであろう、女。

 だが、様々な邪魔が入り失敗に終わってしまった。

 しかも、今度は暗殺未遂。


 グド王子もあのリズが気になるようになっている。


「折角うまく誘導したのに。なんで、上手くいかないの! 私の方が美しくて優れているのに!」


 苛立ったようにコミヤは叫ぶ。

 それが小さな馬車の部屋の中にこだまする。

 だが、それだけだ。


 小さな世界で、コミヤは女王として君臨し、苛立ったように叫ぶ。

 だがやがて城が見えてくると、そんな素振りをおくびにも出さないような表情を“作る”。

 どうすれば親しみやすく感じられるのか、コミヤは知っている。


 そうやって近づき、会話し、相手の心に入っていく。

 だが時折、いるのだ。

 それが上手くいかない相手が。


 コミヤの考えなど“全て見抜いて”しまっているような、相手。

 敵対している者の中にいる者もあれば、いない者もいた。

 彼らが、何時だってコミヤを追い詰めた。


 そこでコミヤは気づく。

 あのリズが、コミヤの支配の及ばない人間だという事を!

 彼女は、コミヤのそれらを全て“気づいている”ようだったのだ。


「忌々しい女」


 小さく呟いてから馬車が止まる。

 城に着いたようだ。

 そして扉が開かれるのを待ってから、王子を立ち上がらせて城の中へ。


 けれど何か様子がおかしい。

 ひそひそひそ。

 城の侍女たちがコミヤを見て噂をしている。


 ひそひそひそ。

 不愉快だわ、そう思っていると老人の執事が一人現れて、今日はお話がありますと言われる。

 コミヤは嫌な予感を覚えたが、この私が不安を覚えるなんて気のせいよと思った。


 そして今の地位を捨てるわけにはいかないという思いもコミヤにはあった。

 それがすべての間違いだときずかずに。

 やがて大きな広間、王のいる玉座の間にまで連れてこられた。


 ずらりと並ぶ貴族の面々だが、その中にいつもの、コミヤの取り巻きがいない。

 何故だ、そうコミヤが思っているとそこで、別の入り口から誰かがやって来た。

 その姿にコミヤは悲鳴を上げそうになる。


 どうしてあの女が!

 すると彼女はコミヤに近づいてきて微笑み、


「お久しぶりですわ、コミヤ様」


 そう告げる。

 そう、コミヤの前に現れたのは、“悪役令嬢”として追い出したはずのリズ。

 自信を取り戻したかのような表情と、華やかな服装で、まっすぐにリズは、コミヤを挑むように見返してきたのだった。






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