まずこれを聞こうと
次の日、何となくシルフに貰った香水をつけ、言われた通りに魔石を持って私はクロト達に会いに行く。
今日も一応はケーキ作りといった話になっているけれど私としては、二人の“駆け落ち”に関する話を聞きたいのだ。
甘えた私の感情が、シルフが一緒に“駆け落ち”してくれないか、そんな淡い期待として燻ぶっている。
早速私は、出迎えてくれたクロトに、
「今シルフはどこに?」
「……今日はちょっと今はいないんですよ。……また何か裏工作でもしているんですかね」
「裏工作?」
「いえ、何でもないです。それで今日は……花の匂いがしますね」
「ええ、シルフに貰った香水をつけてみたの。どうかしら?」
「……シルフさ……も喜ぶと思いますよ。“花嫁”に送る物ですからね」
「でもその割には、私の婚約の話に簡素いては機嫌よく祝福してくれたわ」
「……そういう方ですから」
クロトがどこか遠くを見る目で呟く。
シルフの天真爛漫な性格を言っているのだろうと私は思いながら、そこで思い出す。
「“リザール国”ってどんな所なのかしら」
「僕達の国ですか? そうですね、魔法技術が発達した国です。特に王族は、リズのような“祝福”を持っていたり強力な魔法が使えたり、規格外ですね」
「そう……その国の王子様との婚約なんだ……」
私はまだよく分からなくて呟く。
“リザール国”については私も遠く離れているのでよくは知らない。
魔法技術が優れている国だとは聞いている。
あの国から輸出されている魔道具は、非常に質がいい。
その程度のことしか知らない。
王族に特に強い力がありそうだといった話も。と、クロトが、
「王族は特別な魔法が幾つも使えるそうですよ」
「どんな魔法ですか?」
「そうですね、私の知っている方は、自分の分身を作ったり、長距離を転移したり、他にも……凄かったですね」
「そんな魔法が使えるの!」
「ええ、王族は特別でしたから。ええ……」
遠くを見るように呟くクロト。
そんなすごい相手で、そんな彼らが引き連れてきた魔法騎士団であれば都市の幽霊騒動など瞬く間に解決してしまうだろう。
私達の国の魔法技術は送れているかもしれない、ふと私は思った。
他国の介入を許してしまったとはいえ、彼らの能力の片鱗を垣間見たのだろう。
それもあって私とその王子との“婚約”の話が出ているのかもしれない。
貴族としての政略結婚。
それは、多くの民を率いり、上に立つものとしては受け入れなければならない物でもある。
頭では分かっている。
けれど感情がそれを受け入れられるかはまた別の話。
だって……私は。
そこまで考えて首を振り私は、ある事を聞きに来たのだと思い出した。
だから私はまずこれを聞こうと決めて目の前にいるクロトに、
「クロトに聞いてもいいかしら」
「はい、何でしょう。僕に話せることならば」
「“駆け落ち”ってどんな風にすればいいのかしら」
そこで、それまでの話を聞いていたサナが、洗っている最中らしき皿を床に落としたのだった。
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