どこかで聞いた事があるような
話を聞けば聞くほど、“祝福”がどうなっているのか気になる。
だがそろそろ何が起こっているのか余り考えたくないが、そこで私は気づいた。
「都市の“幽霊”騒動が解決してきたという事は、甘みが薄味になる効果は消え去っているのかしら」
「それが、その効果だけはまだ残っています。少し弱まってはいるのですが、ういい例もまだ残っていますし、完全にそれらが消えるのはまだまだ時間がかかりそうだといった話です」
「そう、だったらお菓子の効果もまだまだありそうね」
そう私が言うと、そうですねとトレドが答える。
また、お菓子は受けがいいと聞いて、これからまた簡単なものを作ろうかと決める。
だから本日売ってみて好感触だったフィナンシェを追加で作ってみて、それを持っていき販売してもらう事に。
そう決めた私だがそこで、トレドがやけに気になったようにシルフをちらちら見ている。
どうしたのだろうと思っているとそこでトレドがヘレンに、
「そういえばヘレンは、一体どれくらいまでリズ様についていく気なんだ?」
「これからもですが」
「……今後、リズ様が御嫁入した時はどうするんだ? ……例えば、他国に嫁いだなら、ついていくのか?」
「もちろんです」
「……そっか~。だったら別の仕事も俺は探さないとな」
「? トレドもついてくるのですか?」
「……相棒の件、まだ俺は諦めていないんだ」
そうトレドが笑って言うと、ヘレンは呆れたようにため息をついていたが、私にはどこか嬉しそうに見えたのだった。
次に私の方をトレドが見て、
「そういえば“リザール国”の王子様が今、都市に滞在しているのをリズ様はご存知ですか?」
「いえ、知らないわ」
そう答えるとトレドはちらりとシルフを見る。
先ほどからやけにシルフの様子をトレドは見ている気がするが、私が見ている範囲では、いつも通りのシルフしかいない。
そこで目があって微笑まれた。
唐突に先ほど思ってしまった“私のシルフ”という言葉が頭に浮かび、動悸が激しくなる。と、
「どうかされたのですか? リズ様」
「い、いえ、何でもないわ」
「それでその王子様は、以前、リズ様に一度お会いしたことがあるそうで、訪ねたらしいです。丁度俺がお菓子を運んでた時でして……あたかもその時に重なるように来たように俺は感じましたね~」
「そうなの?」
「……リズ様のお菓子目当てに感じただけです。いや~、美形だけれど、やり手の王子様のようでしたよ」
「そう……でも、私、よく覚えていないわ」
「それはそれは……髪型もかなりきっちり整えたりして、『“僕”も久しぶりに会えたならと思ったのですが、留守で残念です』と穏やかな口調で言っていましたね」
トレドはそこでちらりと再びシルフの方を見て、今度はクロトとサナの方に目を移した。
「そうそう。それでその王子様は幼馴染の部下などがいたらしいのですが、何でも二人そろって駆け落ちをしたらしくて」
どこかで聞いた事があるような気がした。
そして視界の端でサナとクロトがびくっと震えたのが見えた。
けれどトレドはそれに気づいていないのか続ける。
「ただ二人ともドSで出会っていつも口喧嘩をしていたので“仲が悪い”と思われていたようですね。家同士も好敵手のような関係だったそうで。それがまさか駆け落ちとはと、騒然となったらしいです」
「喧嘩していたのに仲良しだったのね」
「そうですね、そういった形の愛情表現だったのかもしれません。ただ今はその王子様が彼等ではなく新しい部下を連れておりまして、その人達曰く……今ではその王子に振り回されるというかやり手な分こき使われるのであの人達はこの大変さから逃げたのでは、とか、それを駆け落ちと言っているだけではといった話になっているらしいです」
「そうなの……」
面白い人間模様だなと思っているとそこでシルフが口を開いた。
「でも、そんな有能な人間を王子は逃がすのかな? 俺が王子だったら、逃がさないな」
相変わらずの笑顔なシルフ。
何故か、クロトとサナは凍り付いたように微動だにせず、固まったままだったのだった。
評価、ブックマークありがとうございます。評価、ブックマークは作者のやる気につながっております。気に入りましたら、よろしくお願いいたします。




