まるでバケモノにでも出くわしたかのような
シルフが、家にいる男女の名前を紹介してくれたのは良いのだが……この二人、顔がやけに青くないだろうか?
シルフの方を見て、二人ともお互い手を握ってふるふると体を震わせている。
まるでバケモノにでも出くわしたかのような様相だ。
シルフはそんなに怖い人ではなかったはずなのに。
むしろ私には優しい方だと思う。
時々意地悪ではあったけれど。
少なくともこんな異様な怯え方をされる人物ではなかったはずなのだが……そこで男性の方のクロトが、
「な、なんで、どうしてこんな所にシルフ“様”が!」
「やだな~、クロト。“いつものように”名前で呼び捨てしてくれないかな? 君と僕との仲じゃないか」
相変わらずにこやかな表情でシルフが言うと、クロトがさらに震え上がり、
「う、うう……もうだめだ、もうだめだ、シルフに見つかった。サナ、もうだめだ」
「お、落ち着いてクロト。大丈夫よ、気を確かに持って。あのシルフさ……も鬼ではないわ。きちんとお願いをすればきっと私達の気持ちを分かってくれるはず!」
「む、無理だ、あの人は唯我独尊でマイペースだから、絶対に告げ口される。ああ、もう終わりだ、終わりだぁああああ、かくなる上は……」
「まって、クロト、落ち着いて!」
といった会話を二人がしているのを聞きながら私は、シルフに、
「この二人、シリフの知り合いのようだけれど、どなたなのかしら」
「二人は俺の幼馴染で、親に結婚を反対されてここに逃げてきたんだ」
そう、シルフは何でもないような事のように、私に説明したのだった。
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